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畜産業界における抗生物質の乱用が、世界で「耐性菌の脅威」を生んでいる

1/28(火) 12:14配信

WIRED.jp

抗生物質依存はコスト削減のため

微生物学者のランス・プライスは、この問題の幅広さを懸念している。プライスはジョージ・ワシントン大学の抗生物質耐性対策センターで設立当時から責任者を務める人物で、肉畜生産における抗生物質利用の研究を続けている。なお、彼は今回の調査には参加していない。

プライスが指摘したのは、多剤耐性をもつ破壊力の強い病原菌のほとんどが、ひとつの細菌内でいくつかの遺伝物質が偶発的に積み重なることで出現する点だ。これが起きるのは、多くの抗生物質が多くの家畜に一度に使われた場合に限られ、最近までは珍しいものだった。

「世界数十億の家畜に抗生物質を使うということは、その珍しい事象がより頻繁に発生する機会を増やすことになります」と、プライスは言う。「新しい耐性要素が出現する可能性が高くなるのです」

発展途上国の畜産がこれほどまで大きく抗生物質に依存する理由のひとつに、費用の問題が挙げられる。抗生物質を予防に使うことによって、農家は乏しい資金を獣医療や病気の封じ込めに使わずに済むのだ。

しかし、衛生状態が悪かったり、バイオセキュリティーが緩かったりすると、抗生物質が要求されるような状況を生むことになる。さらに細菌が農場の外に流出し、耐性菌が人間を病気にする可能性も増すことになる。

地域差を考慮した対策を

今回の分析に明るい点があるとすれば、それはこの分析が抗生物質の乱用が問題となっている地域だけでなく、まだ乱用が進んでいない地域にも着目しているところだろう。

例えば、サハラ以南のアフリカで実施された調査では、ほとんどの国で細菌の耐性率が低かった。これは、これらの地域ではまだ畜産がアジアほど拡大していない可能性を示唆するものだ。そうした国々に対し、違う道を歩むよう働きかける時間が残っているかもしれない。

今回の論文の筆頭著者で、チューリッヒ工科大学で疫学を研究しているトーマス・ヴァン=ブークルは、「低所得国と中所得国をひとつのグループとして考えてはなりません」と話す。「悲惨な状況にある国もありますが、問題がそれほど深刻ではない国もあります」

このような相違は、政治的圧力がどこに大きな違いをもたらすかを示しているとも考えられる。

国連総会は16年、1日かけて医療と農業における抗生物質の乱用問題についての会議を開催した。だが結局は一部の国の代表から、世界の公衆衛生よりも自らの国民を養うことのほうがはるかに優先されるという意見を聞くだけに終わったのだ。

抗生物質耐性が深刻な国や地域を特定し、そうした国や地域に集中して対策に取り組むことは、こうした緊張状況の緩和に役立つ可能性がある。例えば、家族の生活のために家畜を必要とする地域では、小規模農業にテコ入れするといったこともできるかもしれない。また、裕福な国々や各国のドナーたちにとっては、自分の資金が最も役に立ちそうな場所を見極めるヒントにもなるだろう。

マリーン・マッケーナ|MARYN MCKENNA
『WIRED』US版アイデアズ・コントリビューター。医療ジャーナリスト。耐性菌をテーマにした『WIRED』US版のコラム「Superbug」へ寄稿してきたほか、公衆衛生や世界の食糧政策について執筆を行う。ブランダイス大学の研究所であるSchuster Institute for Investigative Journalismのシニアフェロー。著書に、米国疾病対策予防センター(CDC)の一部門として世界中の病気の流行やバイオテロの攻撃を追跡し、防止するための政府機関伝染病情報サービス(EIS)の活動をリアルに描いた『Beating Back the Devil』などがある。

MARYN MCKENNA

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最終更新:1/28(火) 12:14
WIRED.jp

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