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「中村哲さんはなぜ狙われたのか?」アフガニスタンの武装解除をしてきた紛争解決請負人・伊勢﨑賢治が語る事件の背景

1/28(火) 6:10配信

週プレNEWS

昨年12月4日、アフガニスタン東部のナンガルハル州ジャララバードで、武装した集団に銃撃され死亡した医師の中村哲(てつ)氏(享年73)。

【写真】事件の背景を語る伊勢﨑賢治氏

国際NGO「ペシャワール会」の代表として、アフガニスタンで長年にわたり医療支援や用水路整備などの灌漑(かんがい)事業を続けてきた中村氏の訃報(ふほう)は、日本はもとより、アフガニスタンでも大きく報じられ、現地の人々に大きな衝撃と悲しみをもって迎えられた。

人生をかけて、アフガニスタンのために尽くしてきた中村氏は、なぜ凶弾に倒れることになったのか?

日本政府特別顧問として、アフガニスタンの武装解除を指揮するなど、長年、世界各地の紛争地で平和構築や人道支援に携わってきた、東京外国語大学教授の伊勢﨑賢治氏が事件後初めて語る、中村氏殺害の背景と今回の悲劇から本当に学ぶべきこととは。

* * *

──中村医師が亡くなられてから今日まで、この件に関するメディアの取材依頼をすべて断っていたそうですね。

伊勢﨑 まず、とてもショックでした。中村さんとは現地で一度お目にかかったことしかないのですが、同じ「アフガニスタンのため」に働いた人間として、中村さんと、中村さんがこれまでやってこられたことに対して、畏敬の念を抱いていました。

当然ですが、人道支援に関わる者の"殉職"はあってはなりません。その起きてはいけないことが、なぜ起きたのか? 少し落ち着いて考える必要があると思いました。

さらにショックだったのは、僕の「悪い予感」が最悪の形で現実となってしまったからです。もちろん、大前提としてアフガニスタンの治安が悪化しているのは事実ですが、それだけではない。

実は今回の殺害事件が起きる前から、中村さんへの危険が高まっていると感じていました。その矢先の出来事だったため、どうにもやり切れない気持ちでいっぱいだったのです。

──「悪い予感」とは、何か兆候があったのですか?

伊勢﨑 僕が驚いたのは、事件からさかのぼること約2ヵ月の10月上旬、長年の活動が認められ、中村さんが「アフガニスタン政府から名誉市民権を与えられた」というニュースを見たときでした。

中村さんの事件後、日本のテレビなど大手メディアは「中村さんがいかにアフガニスタンのために貢献していたのか」を伝えようと、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領から中村さんが名誉市民権を授与されたときの様子を報じていましたよね。

でも僕は、10月のニュースの時点で「中村さんが危ない、これではテロの標的になりかねない......」と思っていたんです。これは僕のアフガン人の友人も同じ意見でした。



■混迷のアフガン大統領選。その複雑な裏事情とは


──アフガニスタンへの貢献を認められ、現職の大統領から表彰されることがなぜリスクにつながるのでしょう?

伊勢﨑 現地の大統領に表彰されたと聞くと、日本の人は単純に「ああ、国中から感謝されているんだ」と思うかもしれませんが、アフガニスタンのような紛争国では、その大統領という権力を誰が握るかで、夥(おびただ)しい血が流れてきたのです。

安倍政権が授ける国民栄誉賞を辞退するセレブへの賛否で、「政治利用」が日本でも話題になりますが、アフガニスタンのそれは生死を分ける問題です。

しかも昨年9月に投票が行なわれたものの、不正投票の問題などで、いまだに結果が明らかにならないまま混乱が続いている大統領選挙の最中なのです。中村さんがガニ政権と一体化しているイメージが国内で報道されれば、敵対する勢力にとって格好のターゲットです。

政治からの「中立性」、少なくともそれを装うことは、NGOにとって保安上の鉄則のはずです。

そのことを誰よりも理解しておられる中村さんが「なぜ?」というのが、僕の最大の驚きであり、同時に「悪い予感」の理由だったのです。

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最終更新:1/28(火) 6:10
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