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日本を沈没させる「見えない戦争」から生き残るための心得

1/29(水) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 トランプ、習近平、文在寅、金正恩――。一国・大国主義や過激な主張外交を展開する為政者がポピュリズムに乗じて勢いを増す中、戦火を交えるわけではない「見えない戦争」が、世界のそこかしこで起きている。日本外交の最重要課題の交渉に携わってきた外務省きっての戦略家・田中 均氏の新著『見えない戦争(インビジブルウォー)』(中公新書ラクレ)から、世界に静かに迫りくる「有事」に対処するための“正確な眼"とメソッドを伝授する。(日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長 田中 均)

● トランプ大統領の登場と “見えない戦争”の進行

 一国・大国主義(トランプ、習近平)、過激な主張外交(金正恩、文在寅)がポピュリズムに乗じて勢いを増す中、国内の趨勢が国際関係に飛び火し、いつ火花を散らす紛争に変わってもおかしくない“見えない戦争”が、世界のそこかしこで起きている。

 ドナルド・トランプは、間違いなく“見えない戦争”の時代の主役だ。むしろ彼の登場こそ“見えない戦争”の象徴であり、先が見えない時代の幕開けだったと言っても過言ではないだろう。

 「アメリカ・ファースト」を唱え、移民などへの高圧的かつ傲慢な発言を繰り返し、「世界のためにアメリカが負担を続けるのはもうごめんだ」「アメリカの金はアメリカのために使う。アメリカの兵はアメリカのためだけに戦う」と一部の支持者に向けた発言をし、彼らが喜ぶようなツイートをおこなう。トランプは国民の不満を巧みに利用したパフォーマンスを繰り広げ、支持率が不気味なほど安定している。

● アメリカはなぜ復活できるのか 差をつけられる日本の「弱さ」

 アメリカが民主主義先進国として世界秩序のリーダーであることをやめた世界で中国の脅威が増し、他方でナショナリズムが台頭してきた日本は、今後排他的になっていく可能性がある。それが訪れるのが5年後なのか、10年後なのか、あるいはもっと先なのかはわからない。だが、このまま“見えない戦争”が進めば、誰にとっても幸福だとは思えない未来が訪れるだろう。

 これまでも何度も「アメリカは終わった」「もう駄目だ」と思う時代があった。しかし、鉄鋼が下火になれば自動車産業が、自動車が衰退すればITや金融産業が成長し、いまはAI(人工知能)の時代だと言われている。こういったイノベーションで危機を乗り越えてきたのがアメリカだ。アメリカには競争を勝ち抜く教育があり、そこからイノベーションが生まれる。この“見えない戦争”の時代を変え得る突破口は、イノベーションにある。

 インターネットは、世界を変えた。それまで壁となっていた国境を越えて、情報や知識が流通するようになり、多大な変革を世界にもたらした。それは、ある意味で“見えない戦争(インビジブル・ウォー)”を生み出す発端となったとも言える。ポジティブであれ、ネガティブであれ、技術革新は世界を変える力を持っている。これからの社会では、AIや電気自動車などがその役割を担うことが予想されるし、だからこそアメリカや中国はその分野に力を入れ、世界の覇権を争っている。

 しかし残念なことに日本は、時代を変えるような新しい技術を生み出せていないし、生み出すだけの環境も整っていない。これまで日本は、強い平等意識のなかで国が成長していった。戦後日本にやってきたアメリカの経済学者のカール・シャウプは、「世界でもっとも優れた税制を日本に構築する」として、所得格差を是正し富を社会に分配するというシステムをつくり上げたが、これは自国であるアメリカの貧富の格差を反面教師として生まれたものだと推察される。

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最終更新:1/30(木) 14:50
ダイヤモンド・オンライン

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