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大衆を指導せよ─コロナウィルス拡大で情報統制強化の中国

2/1(土) 15:00配信

クーリエ・ジャポン

問われる情報リテラシー

リアルタイムで情報をアップデートし続けている米TV「CNBC」は、1月30日の最新情報として、「中国の保健当局である国家衛生健康委員会によれば、新型コロナウィルスによる死者数は170人に上り、感染者数は7711件になった。さらに170人が治療の後で退院している」という。

英公共放送「BBC」によれば、「世界保健機関(WHO)は、6日にも新型コロナウィルスが『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』にあたるかどうか検討するために協議をおこなう」とし、テドロス・アダノム事務局長がドイツとベトナム、日本などを取り上げて「ここ数日の動きから、人から人への感染を私たちは懸念している」と語っていると報じている。

そんななか、このウィルスの発生当初から、中国国内で当局などがウィルスの感染状況などについて情報統制をおこない、被害を拡大させてきたのではないかと批判が出ている。事実、1月はじめには、感染が始まった武漢で「8人が裏どりをすることなく偽の情報を掲載したことで逮捕され、罰せられた」と報じられている。

中国政府も情報統制に動いているようだ。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「習近平国家主席は、世界でもっとも高機能だと評される検閲システムを作り上げており、大衆の議論をコントロールしている」とし、政府がそのシステムで今回のコロナウィルスをめぐる議論を操作しようとしていると指摘。同紙はさらにこう続ける。

「ソーシャルメディアで政府への批判が高まるなか、習国家主席は繰り返し当局に『大衆の意見への指導を強化するよう』指示している。中国共産党流にこの言葉を言い換えれば“検閲強化”を意味する」

「中国のジャーナリストによれば、国営メディアは公式な出どころによる情報のみを伝えるよう告げられており、役人などへの批判も避け、『ポジティブなエナジー』を促進するよう指示されている」

また、SNSでは「コロナウィルス」という単語が含まれる投稿が検閲対象になっているという。この「高機能」な検閲では、当局に不都合な言葉はインターネットなどからすぐに削除される。

香港大学ジャーナリズム・メディア学センターのキングワ・フー准教授は、中国本土でどんな言葉がソーシャルメディアで検閲対象になっているのかを調べている。筆者も何度もフー准教授から話を聞いたことがあるが、今回の感染拡大では本土はどんな状況になっているのか。

フー准教授は、米通信社「ブルームバーグ」の取材に、「本土のネットユーザーはどんな予防ができるのかについて情報を渇望している」と語っている。さらに、「中国政府が発表した以上の、感染者数や感染地域に関する情報が含まれる、外国や香港のニュースメディアへのリンクがついた投稿は検閲されている」と続けた。

またシンガポール紙「ストレイツ・タイムズ」に、「今回はあまり大々的な検閲の取り組みはないようだ」ともフー准教授は答えている。その理由については「いまは事実か嘘かは関係なく、情報がすごい勢いで拡散される。そんな形で広がるものをコントロールすることは不可能なのです」と述べていた。

中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」などSNSでは、このウィルス感染拡大が「習近平国家主席への新年の挨拶だ」とのメッセージが広く拡散されている。また、武漢の当局に対する批判も多いという。SNSが広く使われている現在、検閲は実施されているが、今回のような事態には追いつかないらしい。

中国のような厳しい検閲は賛同できないが、一方で、最近話題のフェイクニュースなどが恐怖を煽り、社会不安を生む可能性はたしかにある。特に感染症などの情報ともなれば尚更だ。

英紙「ガーディアン」は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行の際に、14歳の少年がインターネットにフェイクニュースをアップして、香港住民がパニックに陥り、住民がスーパーに日常品等を買い占めに走ったというケースを報じている。

結局頼れるのは自分ということなのかもしれない。SNSの時代には、すべての情報を鵜呑みにはせずに、情報の発信源を自分で確認するリテラシーが必要になるのだろう。

Toshihiro Yamada

最終更新:2/1(土) 15:00
クーリエ・ジャポン

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