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新型コロナウイルスから“世界”を救う研究は、いまも猛スピードで進められている

2/3(月) 12:14配信

WIRED.jp

英国のランカスター大学の疫学者であるジョナサン・リードは、研究の発表方法について自身が古い体質であることを認めている。リードは常に古い発表方法に従ってきた。すなわち、論文をジャーナル(学術雑誌)に投稿し、承認され、査読者からコメントと編集を受け、論文を修正し、出版してきたのである。

感染が拡大する新型コロナウイルスには、「突破口」も見えつつある

ところが数年前から、何だか腑に落ちなくなってきた。この従来型の論文発表プロセスのスピードは通常、病気が大流行するスピードよりもかなり遅い。プロセスが速く進んだとしても、研究の精度以外の点を考慮されることがあるのだ。

2014年夏にエボラ出血熱に関する論文を投稿したリードは、論文が出版される際に、大きく注目される研究がジャーナリストから支持され、自分たちの研究がジャーナルから見落とされたと感じたという。「当時、『次に同じことが起きたらブログで公表しよう』と考えていたのを覚えています」とリードは言う。

リードは、いま新型コロナウイルス「2019-nCoV」の研究に取り組んでいる。新型コロナウイルスが広がり始めたとき、リードは自分の古い考え方をひとまず捨てて、新しいやり方を試してみようと考えた。「わたしたちはジャーナルに投稿するよりも、いま何が起きているのかを伝えることが重要だと考えました」と、リードは言う。

こうして彼の研究チームは、生命科学分野のプレプリントサーヴァー「medRxiv(メドアーカイヴ)」に、「新型コロナウイルス2019-nCoV:疫学的なパラメーターと流行予測の早期推定」と題した論文をアップロードした。medRxivでは、査読・修正前の論文をワンクリックで公開できる。

査読をスキップした論文公開が急増

この論文の公表は全体的に見て、おそらく科学にとってよいことだったのだろう。また、ソーシャルメディアで嵐を巻き起こすことにもなった。科学におけるコミュニケーションと感染症がもたらした新しい世界からの、ちょっとした教訓である。

新型コロナウイルスの集団感染が発生するなか従来型のジャーナルは、出版サイクルの短縮や有料購読から無料公開への変更を中心に、さまざまな緊急対応で動きをスピードアップした。それでも世界中の科学者のチームは従来型のジャーナルを避け、初期の結論から研究方法、手段なども伝え合っている。研究者によると、今回はこれまでにないスピードで膨大な数のプレプリントが発表されている。

これは素晴らしいことだ。なぜなら、科学の発展を加速させ、生命科学者が新しいスタイルを取り入れ、他の分野における協力を助けるからである。一方で、少し恐ろしい面もある。プレプリントをダウンロードできるのは科学者だけではないので、研究についての勘違いや誤解が生じる可能性があるからだ。

プレプリントサーヴァー「bioRxiv(バイオアーカイヴ)」のトラフィックとトピックを追跡するRxivistでは今週、新型コロナウイルスに関する論文がトップ10を独占した。ミネソタ大学のゲノミクス研究者で、研究の合間にRxivistを運営しているラン・ブレクマンに取材したときには、トップ記事のダウンロード回数は29,000回にも達していた。

「これは6日前に公開された論文です。すでに微生物学のカテゴリーで最も多くダウンロードされた論文になっています。全体でもダウンロード回数は17位です」と、ブレクマンは言う。「こんなことは初めてです」

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最終更新:2/3(月) 12:14
WIRED.jp

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