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追加関税では解決しない米国貿易赤字問題

2/7(金) 9:36配信

NRI研究員の時事解説

対中貿易赤字は減ったが。。。

2019年の米国の財(モノ)の貿易赤字は、3年ぶりの減少となった。サービスも含めると実に2013年以来6年ぶりの減少である。中国に対する追加関税導入によって、中国からの輸入が大幅に減少したことが主な要因だ。

米国の対中貿易赤字額(財、以下同様)は2019年に3,456億ドルと、2018年の4,195億ドルから739億ドルもの大幅な縮小となった。しかし、それにも関わらず、米国の貿易赤字額全体は219億ドルしか減少していない。

他方、いわゆるシェール革命の影響で米国は原油の純輸出国に転じつつあり、そうした構造変化を映してOPEC諸国からの輸入額は346億ドル減少している。この構造要因を除けば、対中貿易赤字の縮小にも関わらず、米国の貿易赤字額全体は増加していたことになる。

2019年に米国の貿易赤字額が特に拡大したのは、メキシコ向けだ。前年から211億ドルの赤字額拡大となった。追加関税の導入によって中国製品の輸入が減少しても、メキシコなどそれ以外の国からの輸入増加で代替されてしまっているのである。

追加関税の影響は他国からの輸入代替で相殺される

国際通貨基金(IMF)は、米国が電機及び一般機械の中国からの輸入品に25%の追加関税を課す場合、それらの製品の輸入先(国・地域)がどのように変化するかを、モデルで試算している(図表)。その結果によると、追加関税導入前には、それらの製品の輸入先は中国が第1位であり、電機及び一般機械の輸入品全体に占める中国からの輸入比率は、22.1%だった。

追加関税導入後には、中国からの輸入比率は11.5%まで半減し、順位は第4位となる。中国に代わって第2位から第1位になるのは、東アジア地域である。また、カナダは第4位から第3位へ、メキシコは第3位から第2位へと、それぞれ順位を上げる。

このように、追加関税の導入には、対象となる国からの輸入を減少させる効果は確かにあるが、他国からの輸入増加によって代替される効果が生じるのが普通なのである。この点から、追加関税の導入が貿易収支全体を改善させるかどうかはかなり不確実だと言える。

ちなみに、上記の試算では、米国向けに電機及び一般機械の輸出を増加させるメキシコは、それに必要な中間財の輸入を、中国から増加させることになる。追加関税導入がもたらす影響は、このようにかなり複雑である。このような代替効果によって、追加関税の導入が貿易収支全体に与える影響はかなり相殺されてしまう。

また、IMFの分析によれば、関税率の変化が2国間貿易収支に与える影響についても、この20年間程度でかなり小さくなっているという。それは、一方の国の関税率引き上げが、もう一方の国の報復的な関税率引き上げを招くことで、それぞれが貿易に与える影響を相殺し合ってしまう傾向があるからだろう。米中間での報復関税導入の応酬は、まさにこのケースにあたるだろう。

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最終更新:2/10(月) 17:27
NRI研究員の時事解説

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