ここから本文です

「自分は何もできなかった」──新型肺炎を最初に警告した武漢の医師が自らも感染、死亡

2/7(金) 15:23配信

ニューズウィーク日本版

<SARSに似た新たな感染症の発生をいち早くSNSで発信し、中国公安当局から処分を受けた武漢の医師は、後悔の中で死んだ>

昨年12月に、新たな感染症の発生をいち早くSNSで発信し、中国公安当局から「デマを拡散した」として処分を受けていた武漢の医師が7日、新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した。

【動画】新型肺炎の発生を警告した武漢の医師が感染の末に死亡

米ワシントン・ポスト紙などによると、武漢中央病院の眼科医師、李文亮(リー・ウェンリエン)は、現地時間の7日未明に死亡が確認された。新型コロナウイルスによるものと見られる症状を発症して1月中旬に入院し、今月1日にはウイルス検査で陽性反応が出ていた。

中国衛生当局の発表によると(6日付)、これまでの新型コロナウイルスの中国本土の感染者数は2万8000人以上、死亡者は560人以上に上っている。昨年12月、感染源と見られる武漢海鮮市場の複数の関係者が肺炎に似た症状を起こして治療を受け、新型ウイルスが初めて人間に感染していることが確認された。WHO(世界保健機関)によると、感染は中国本土の他、これまでに24の国と地域に拡大している。

死亡する数日前、李はCNNの取材に対して、中国当局がWHOに報告するよりも早い段階で新たな感染症の発生を医師仲間に警告しようとしたと説明した。中国のメッセージアプリ微信(WeChat)で医学部の卒業生グループにメッセージを送り、7人の患者がSARS(重症急性呼吸器症候群)と同様の深刻な急性呼吸器症状を発症して隔離治療を受けていることを知らせた。

<感染情報を隠そうとした疑いが>

2002~03年に感染拡大したSARSは、今回同様に中国で発生したコロナウイルスの一種で、8098人が感染し774人が死亡している。当時、中国政府はSARS感染に関する情報を隠匿して厳しい批判を受けた。今回も隠そうとするのではないかという疑念があったと言われている。

李は微信で、医学部の同窓生に「注意」を喚起し、その家族などに個人的な注意を呼び掛ける意図でメッセージを出した。しかしメッセージはたちまちソーシャルメディアで拡散され、李は1月3日に地元警察署に呼び出された。

警察は李を「オンライン上でデマを流布し、深刻な社会秩序の混乱を引き起こした」という理由で訓告処分とし、李はこれ以上「違法行為」をしないと誓う書面に署名をさせられた。この処分の後、新型ウイルスの感染が急激に拡大し、中国の人々の政府に対する怒りは燃え上がった。

だが李は、「自分には何もできなかった」とCNNに語っている。「(すべては)公式の方針に従わなければならない」

CNNによると、武漢中央病院に勤務していた李は1月10日に患者を診療した後、入院していたが、発熱や咳といった症状が悪化したため、2日後の12日にICU(集中治療室)に移されて酸素吸入の治療を受けていた。

新型肺炎の発生を最初に告発した34歳の李は、今や中国の「英雄」となっている。政府系メディアの人民日報(電子版)は武漢市政府による李の追悼文を掲載。人々の怒りが政府に向かうのを回避するため、李の死に哀悼を示さざるを得なかった。またBBCによると、多くの人々がソーシャルメディアで李の死を嘆くメッセージを投稿している。

ジェニ・フィンク

最終更新:2/7(金) 16:49
ニューズウィーク日本版

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事