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新型肺炎で「LNG歴史的超安値」に日本の電力・ガス会社がおびえる理由

2/8(土) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

● 日本の電力・ガス会社に 高まるLNG売却損失リスク

 スポット価格の下落は、世界最大のLNG輸入国である日本にとって大きな打撃になる。

 日本の大手電力・ガス会社は、10~15年の長期契約でLNGを調達している。長期契約には電力・ガス供給が安定するメリットがあるが、調達価格はスポット価格よりも基本的に高い。この価格差は、電力・ガス会社が調達したLNGを転売する際に大きなネックとなる。

 電力・ガス業界では近年、小売りの全面自由化を受け、競争が急速に激化している。また原子力発電や太陽光発電のような再生エネルギーの稼働状況も不安定だ。この結果、既存の電力・ガス会社にとっては、自社に対する需要を見通すことが難しくなっている。需要が想定を下回った場合、原料のLNGを転売するのだが、その時点でスポット価格が下落していれば、電力・ガス会社は損失を計上せざるを得なくなる。

 実際、九州電力は2020年3月期の中間決算で、余剰LNGの転売に伴う損失を130億円計上している。これは競争激化などを受けた需要下振れが要因だったが、今後、中国のLNG需要が戻らず、スポット価格が歴史的低水準にとどまり続ければ、複数の電力・ガス会社が転売損失を計上する恐れがある。今年1月以降の動向は、現在開示が進んでいる2020年3月期の第3四半期決算には反映されていないが、今後の業績開示には「極めて要注意」だ。

● 世界で行き場を失うLNG 産出国には大きなリスク

 中国発LNGショックの影響は、日本にとどまらず、世界にも広がる。新型肺炎による経済減速は、中国のLNG需要を確実に減退させる。中国で消費されるはずだったLNGがどこへ向かうかというと、比較的LNGを受け入れる余地がある欧州市場だと想定できる。

 そして欧州も受け入れ余力が限界に達したら、どうなるのか。上流の“蛇口”を閉める、つまりLNGの生産を止めるか、生産ペースを緩めることになる。そうなった場合、上流のLNG生産プロジェクトそのものの採算が合わなくなるリスクが潜む。

 LNG取引量世界首位、ロイヤル・ダッチ・シェルの株価はすでに、年初から1割強下落している。また中国のエネルギー会社が契約する上流プロジェクトは、米国やオーストラリア、マレーシア、カタールなどに点在しており、こういった地域の経済に冷水を浴びせる恐れがある。世界経済に与えるインパクトは計り知れない。

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ダイヤモンド編集部 新型肺炎取材班

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最終更新:2/8(土) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

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