ここから本文です

吉田淳一(三菱地所社長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか

2/11(火) 5:55配信

デイリー新潮

 世界の都市間競争が激しさを増している。AI、IoTなど、新技術が生活に浸透するこれからの時代に生き残れるのはどんな都市なのか。「丸の内の大家さん」として知られる三菱地所は、東京の魅力アップを目指すという。新しいオフィスの形から街づくりまで、老舗ディベロッパーの挑戦。

 ***

佐藤 2018年に自社で手掛けられた大手町パークビルに本社を移転されました。このオフィスが評判になっていますね。

吉田 社外の方にもどうかご覧くださいと、見学していただくようにしましたら、1年で1万人以上の方がいらっしゃいました。ご自分の会社のオフィス作りに何がしかのヒントを得ていかれた人が多いようです。

佐藤 部長以下は固定の席がないフリーアドレスなんですね。でも吉田社長にだけは部屋がある(笑)。

吉田 私だけではなく、会長にも部屋はありますよ。CEOがオープンスペースに出ている会社も一部にはありますが、それだとわが社は、かえって社員が迷惑ではないかと思いますね(笑)。

佐藤 仕切りのないオープンスペースで、内部階段があるし、カフェもある。人が交流できる場所がたっぷり取ってあり、一方、ひとりで仕事をしたい時には、予約制の個人ブースが用意されている。

吉田 それまでは古い築60年の還暦を迎えたビルに、各部署がバラバラに入っていました。いわば旧来型のオフィスビルにどっぷり浸かっていた。でもオフィスを提供する会社として、本当に働きやすい空間とか働きがいのある空間はどうあるべきかを考えました。他社のモデルになることを意識したところもあります。

佐藤 これは吉田社長のアイデアなのですか。

吉田 私どもがいろいろ考える前に、もうスタートアップ企業やベンチャーの方々がフリーアドレスや遊びの要素を取り入れ、その空間を楽しみながら、想像力を発揮しやすい環境を作り出すことはされていた。そこからヒントをいただきながら、私どもの仕事に合わせ、どんな空間作りをすればいいか、中堅・若手が真剣に考えてくれました。その中身については、昔ながらのオフィスの固定観念が染みついている私たちの世代は口を出さないことにしました。

佐藤 口を出さないのも勇気のいることですよね。

吉田 若い頃の経験で、上からの指示に従うとマイナスになる事柄ってあったじゃないですか。それをやらないなら、ひとつひとつ説明して納得してもらわなければならない。そんな時間や労力は無駄ですよ。今回はオープンなスペースにしましたから、万が一、ここを変えたいと思ったら、できた後でも変えることができる。そういったフレキシビリティもあるので、これは口を出さない方がいいと思いました。

佐藤 ただし大方針はありますよね。

吉田 それは「ボーダレス×ソーシャライジング」です。心理的な壁、あるいはこだわりみたいなものを取り払って、社員同士が密に交流していくことで新しい事業を生むための新しい発想につながる、そう考えています。

佐藤 なるほど、そういう意図があるんですね。

吉田 それも、作ったらそれで終わり、ということではなくて、もっと利用しやすくするために、その後もこんな仕組やルールがあったらいいという提案を、社員にアンケートを取るなどして出してもらっています。

佐藤 外務省時代のことを思い出しますね。サミット準備室など大がかりな会議がある時には、間仕切りをしないオープンスペースでスタートします。仕事を進めていくうちにだんだん形が出来ていく。

吉田 私どもの街づくりも同じで、作った後も、どんどん魅力を高めていきます。状況によって新しい要素を「アドオン」し、継続するものは「キープオン」、さらに市場の中で成長させて「マーケットオン」していく。そのやり方ですね。

佐藤 当初の状態から、どこか変化したところがあるんですか。

吉田 フリーアドレスと言っても、大まかに部署単位でゾーニングしているのですが、今は「シャッフルデー」と言って、全社的にどこに座ってもいい日を、月に1度、試験的に設けています。まったく違う分野の仕事をしている社員が隣り合い、今はこんなことをしているんだという話から、新しい企画を作ったり仕事をうまく進めたりするヒントになればいいと思っています。

佐藤 大企業だと同じ場所に勤めていても、まったく顔を合わせない人もいますものね。

吉田 そうです。それから昼休みなどに、外部の講師を招いて話を聞く催しを、全社的な規模でやるようにしました。それまでも部署単位ではやっていたんですが、オフィス内に100名くらい収容可能な場所ができましたから、そこに集まることができる。

佐藤 例えばどんな催しがあるんですか。

吉田 一例を挙げますと、丸の内には「三菱一号館美術館」があります。そこで新しい展覧会が始まる前に、作者や描かれた絵の時代背景など、絵を見に行っただけでは得られないような話をレクチャーしてもらう。

佐藤 それはいいですね。

吉田 仕事をするだけじゃなくて、さまざまな教養を身につけて人間としての幅を広げていってほしい。それがひいてはいい仕事につながっていくと思っています。

1/4ページ

最終更新:2/11(火) 5:55
デイリー新潮

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ