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【与那原恵氏書評】変でダメな人々を通じて米の諸問題を描く

2/12(水) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【書評】『十二月の十日』/ジョージ・ソーンダーズ・著 岸本佐知子・訳/河出書房新社/2400円+税
【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 ジョージ・ソーンダーズは〈現代アメリカを代表する短編小説の名手であり、“作家志望の若者にもっとも文体を真似される作家”として知られる〉。ということを私はちっとも知らなかった。

 初めて読む作家だが手にとったのは、翻訳家の名が目に飛び込んだからである。世に言うところの「キシモト好み」の小説ならば、絶対面白いにちがいない。その予感通り、興奮する読書の時間を堪能したのだった。

 登場人物はみな変でダメな人たちだ。金もなく、悲惨な生活を送り、周囲の人々もどこかイカレているのだが、彼らなりの論理があって一本筋が通っており、妙に納得させられてしまう。しかし、そもそも物語自体がぶっ飛んでいる(翻訳家いわく、ほとんど「バカSF」と呼びたくなるような設定)。

 四十歳になった男が日記をつけ始める。女房と三人の子どもと暮らす彼は、金のやりくりに頭を悩ませながらも、おおむね平穏な毎日だ。じきにやってくる娘の誕生日に何かしてやりたいと思っているけれど、金がない。そんな時、スクラッチくじが大当たりするという幸運が訪れる。娘が欲しがっているプレゼントを用意できるし、誕生パーティも開いてやれる。そうとなったら、〈SG飾り〉を庭に飾り、わが家も人並みだと周囲に見せつけてやろうじゃないか!

 何ですか? SG飾りって。読者にはわけがわからないまま、業者がやってきて飾りつけをし、幸せに満ちたパーティが行われるのだが、やがてSG飾りの正体が明らかになる。移民社会アメリカのリアリティが込められた物語だったのだ。この飾りをめぐって事件が起こり、一家は以前よりも悲惨な状況に陥る気配が漂う。それでも男は淡々と日記に書き、最後にはほのかな希望さえ感じさせる(「センプリカ・ガール日記」)。

 ほかにも、中世ヨーロッパしばりのテーマパークで働く若者や、暴力衝動を抱える中東から戻った帰還兵などの主人公によって、アメリカに横たわる問題が浮かび上がり、胸にしみていく。

※週刊ポスト2020年2月21日号

最終更新:2/12(水) 16:00
NEWS ポストセブン

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