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「隠れ1位」トヨタも身構える2020年危機

2/12(水) 7:00配信

日経ビジネス

 トヨタ自動車が2月6日に発表した2019年4~12月期連結決算は純利益が前年同期比41%増の2兆130億円だった。純利益の20年3月期通期予想は前期比25%増の2兆3500億円と、従来から2000億円引き上げた。中国を中心に世界の新車販売が伸び悩む中、高級車「レクサス」の増産などで売上高を伸ばし、事業の採算性も高めた。

【関連画像】中国市場の冷え込みが急速に強まる可能性も否定できない。(写真はイメージ)

 ただ、中国・武漢から広がる新型肺炎による世界的な影響はまだ精査できていないとして織り込まなかった。米国市場ではサブプライムローンが増える兆しが指摘されるなど、リスクは点在している。好調トヨタも「2020年危機」の足音に聞き耳を立てている。

 「昨年から2020年の中国市場はさらに縮小すると考えていたが、(新型肺炎の影響で)不確実性は高まっている。インパクトは読めないが、今後、急速に変わるかもしれない」。同日、記者会見したディディエ・ルロワ副社長は厳しい表情でこう話した。

 この日発表した連結決算は市場の予測を上回るものだった。通期見通しは売上高こそ前期比2%減の29兆5000億円で据え置いたが、3%の減益としていた営業利益を一転して1%の増益に修正。ルロワ氏は「地道な努力が数字として結実してきた」と胸を張った。

 自動車産業を取り巻く経営競争は厳しい。19年は米中貿易摩擦の影響もあり、世界最大の中国市場が縮小した。中国汽車工業協会によると、同国の19年の新車販売台数は前年比8%減の2576万9千台。SUV(多目的スポーツ車)志向で単価上昇が進む米国でも販売台数は伸びず、世界の自動車販売は前年比で4%前後のマイナスとなったとみられる。

 そんな中、トヨタは1074万台と前年から1%以上伸ばした。レクサスが前年比10%増の76万5330台となるなどブランドの浸透が進んだ。「公式記録」の世界販売トップは独フォルクスワーゲン(1097万台)だが、トヨタは販売台数100万台規模のSUBARUを持ち分法適用会社とする方針。グループで見れば「隠れ1位」に浮上したと言っていい。

 市場が縮む一方で、自動車メーカーに求められる投資は膨らんでいる。コネクテッド化や電動化など次世代技術の開発は避けられず、仏グループPSAと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が経営統合を決めるなど世界的な業界再編が進む。国内で再編の受け皿となっているトヨタも安穏とはしていられない。さらなる不測要素があふれ出ているからだ。

 その最大の要素が新型コロナウイルスによる肺炎の影響だ。中国本土での死者が500人を超え、収束の兆しは見えていない。東日本大震災が起きた2011年、日本の新車販売台数は421万台と前年から15%減少した。今回はサプライチェーンの断絶に加え、中国市場の冷え込みが急速に強まる可能性も否定できない。

 米国ではサブプライムローンに関する懸念も指摘され始めている。「金融緩和によるカネ余りから審査が緩くなり、値引きも目立ってきている」(SBI証券の遠藤功治氏)からだ。11月の大統領選挙に向け、トランプ大統領がどんな奇策を打ってくるかも予測できない。英国ではハイブリッド車の販売を規制する議論が始まるなど、国の政策を交えたリスクがくすぶる。

 「中長期的な世界の自動車の販売台数は2%増で成長していく。安定しているわけではないが、我々はグローバルでバランスを取り、各地でお客さんの需要を取り込んでいく」とルロワ氏は強調する。業界は「100年に一度の変革期」の真っただ中にある。トヨタが経営、生産、サービスと全方位で磨き続ける地道な「カイゼン」がどこまで通じるのか。それが試される1年になりそうだ。

北西 厚一

最終更新:2/12(水) 7:00
日経ビジネス

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