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超低視聴率のNHK夜ドラマ ネットの不要論をスルーできるか?

2/13(木) 11:02配信

FRIDAY

大河・朝ドラ好調の陰で…

「3週連続2桁で好調キープ」「1.8ポイントダウンで1桁に転落」

連日このようなドラマの視聴率を報じる記事が飛び交っているが、「なぜNHKのドラマは朝ドラと大河の視聴率しか報じられないの?」と疑問を抱いたことはないだろうか。

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その理由に「NHKは公共放送だから」「スポンサーがいないから視聴率は関係ない」を挙げる声もあるが、ならば朝ドラと大河の視聴率記事も不要だろう。報じられない最大の理由は、「朝ドラと大河以外のNHKドラマはあまり見られていない」から。ネットメディアは、「『見られていないドラマの視聴率記事ではPVが稼げない』から報じない」というだけなのだ。

では、どれくらい見られていないのか?

今冬、NHKは週末の金曜・土曜に3作の新作ドラマを放送している。金曜22時枠の『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』(シシド・カフカ主演)は、ハードボイルドな世界観で描く女探偵モノ。土曜21時枠の『心の傷を癒すということ』(柄本佑主演)は、阪神大震災と精神科医の生き様を描いたヒューマン作。土曜23時30分枠の『伝説のお母さん』(前田敦子主演)は、RPGをモチーフにした子育てコメディ。

どれも民放と同等以上に、時間、人、お金をかけて作られた力作だが、視聴率は『ハムラアキラ』が4.8%、3.0%、4.1%、『心の傷を癒すということ』が6.5%、5.0%、5.4%、4.9%、『伝説のお母さん』が2.5%、1.3%に留まっている。

◆有料ドラマのような嗜好性の高さ

テレビ視聴がしやすい金曜と土曜の夜であること、民放なら打ち切りレベルの超低視聴率であることを踏まえると、「NHKだから視聴率は関係ない」「今は録画で見る人が多い」という声は必ずしも正しいと言えないのではないか。少なくとも、「何度も低視聴率を報じられ、酷評されている民放のドラマよりも見られていない」ことは確かだ。

3作はいずれも民放が手を出しにくいタイプの脚本・演出であり、それだけに作り手のこだわりと遊び心が詰め込まれている。その制作姿勢は、意欲的と一人よがりが紙一重。だから3作とも「刺さる人には深く刺さるが、刺さらない人には全く刺さらない」という作品になっているのだが、嗜好性の高さはWOWOW、Netflix、Amazonプライム・ビデオなどの有料ドラマに近いものがある。

事実ネット上には、「受信料を強制徴収して、一部の人しか見ないドラマに高い制作費を使うのはおかしい」「こういうドラマこそスクランブルをかけて受信料を下げるべきで、見たい人だけ有料ドラマのようにお金を払えばいい」。さらには、「そもそもNHKがドラマを作る必要性を感じない」という不要論さえ散見される。

これらの声は、NHKのドラマや制作姿勢を全面否定しているわけではなく、折り合えるポイントを探す正論。ネットの普及で「自分で見たいものを決めて見る。それが有料ならお金を払って見る」という感覚が浸透しているだけに、受信料のシステムが変わらない限り、どんなに質の高いドラマを作っても支持を得るのは難しいのかもしれない。

当然と言うべきか、NHKもそれをわかっているからこそ、朝ドラと大河の両作は高視聴率にこだわることで、人々の支持を得ようとしている。朝ドラと大河が高視聴率を獲れているうちは、他のドラマで質の高いもの、社会的意義の大きいもの、民放が制作できないものを手がけやすいからだ。

◆視聴率を狙いはじめたNHKドラマ

しかし、現在の朝ドラ『スカーレット』と大河『麒麟がくる』の視聴率・評判はともに上々であるにも関わらず、この数週間『ハムラアキラ』『心の傷を癒すということ』『伝説のお母さん』を不要とみなす声が挙がっていた。

さらに、不要論の中には作品を見て酷評したのではなく、「まったく見ていない」「見たが5分程度」という人が少なくなかった。もはや朝ドラや大河の高視聴率では、他のドラマが見られていないことへの免罪符にはならないのだろう。

NHKとしても、そんなムードを感じているからか、『ハムラアキラ』は視聴率が獲りやすく民放の主流となっている一話完結の事件解決モノで、原作は人気シリーズ小説だった。『伝説のお母さん』も原作は人気漫画であり、RPGをモチーフにした深夜ドラマは『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)という人気シリーズがある。阪神大震災から25年の節目に制作された『心の傷を癒すということ』は別格だが、残りの2作は「視聴率がほしい」という本音が見えてくるようだ。

もう1つNHKの本音が見えるのは、『伝説のお母さん』が放送されているドラマ枠“よるドラ”の変化。1年前に新設されてから、ゾンビ、腐女子、アイドル、ジャニーズ、RPGを軸に据えた作品を放送してきたことから、若年層狙いのドラマ枠であることは明白。これは来たるネット視聴からの受信料徴収に向けた若年層に支持される番組作りの一貫だろうが、思うような結果は残せていない。

ちなみにこの“よるドラ”は焦りがあるのか、前3作の『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』『腐女子、うっかりゲイに告る。』『だから私は推しました』は「攻めている」と評判だったが、ここ2作の『決してマネしないでください。』『伝説のお母さん』は漫画原作があり、ジャニーズWESTの小瀧望と元AKB48の前田敦子を主演に据えている。言わば、「固定ファンの多い漫画と俳優で何とか見てもらいたい」という心境の変化が感じられるのだ。

NHKドラマに対する不要論は、受信料に対する反発をベースにジワジワと増えている。もちろん各作品を楽しく見ている人もいて、彼らは擁護の声を挙げているが、それがいつまで続くかは不透明であり、手のひら返しで不要論に回ることもあり得るだろう。

そんな世の中のムードを少しでも変えるためには、圧倒的に低い視聴率をまずは民放レベルまで上げるとともに、制作費の圧縮・透明化で視聴者に健全さをアピールすべきではないか。

文:木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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最終更新:2/13(木) 11:59
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