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「左翼/右翼」の意味をはじめて知った学生と考える「政治意識」のこと

2/13(木) 15:01配信

現代ビジネス

学生たちの「政治意識」

 「今日の講義で生まれてはじめて、右/左の定義を知り、自分の立場を考えました。」

 勤務先の首都大学東京で、教養科目「フランス語圏の文化」を7年間担当している。例年、そのなかで「左翼/右翼」を解説する授業をするのだが、授業を終えたあとの学生のコメントでは、上記のような回答が大多数を占める。

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 多くの学生にとって、左派は「自分の国が嫌いで、政府に文句を言う過激派」といった認識であるようだ。だから、授業で冷静に説明を受けて、左派の否定的なイメージが揺らいで驚く若者も少なくはない。

 はじめて右/左のことを考えたために、コメント内容も政治的争点ではなく、日常的な事象を素朴に参照するものがある。「部活ではリーダーが必要だと思うので、私は右派的だ」「塾の運営を批判したので私は左派だ」といった具合である。

 以下では、この授業の事例を通じて、フランスと日本を比較しつつ、若者の政治意識について綴る。自分の考え方や態度が政治的にどう位置づけられるかについての知識を持つことの意味、他者(この場合ではフランスからの留学生)との比較のなかで自分と社会のあり方を見つめ直すことの意味が見えてくるはずだ。

フランスの社会を学ぶ

 首都大学東京は中規模・総合大学で、優秀だが、控え目な学生が多い大学である。講義「フランス語圏の文化」には人文社会学部のみならず、他学部からも含めて、200名ほどが参加している。

 この授業は、フランスの社会・文化・歴史などを概観できる、フランスの多様な世界への道案内講義だ。フランスに関する多様なテーマを毎回取りあげながら、この国が培ってきた論理性、批評性、前衛性といった特質を浮き彫りにしていく。

 ただし、本講義の目的は、受講生にフランスの多彩な「情報を伝達」し、フランスの良否を「紹介」することではない。受講生がフランスの事象から日本の状況を考察し、社会的・文化的・歴史的な比較分析を新しい視点からおこなう能力を磨くことを目的としている。

 テーマは、「家族」「原子力」「社会運動」「右翼/左翼」「死刑」といった社会・政治的なものから、「哲学教育」「多言語主義」「美術」「食文化」「景観」といった文化的なものに及ぶ。フランス人留学生らに登壇してもらい、日本人学生との質疑応答をおこなう回も設けている。フランス人との対話を通じて、授業で学んだ知識に対して具体的な感触を得てもらうためである。また、毎回長めのコメントを書いて提出してもらうので、学生の反応は直接伝わってくる。

 数あるテーマのなかでも、「原子力」「社会運動」「右翼/左翼」「死刑」は繊細な社会的主題だ。ただ、日常生活のなかでこうした社会的主題を友人や家族で語り合う機会は少ないので、大学の授業であえて学んでおく必要があると考え、とくに力を入れて取り組んでいる。

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最終更新:2/13(木) 15:01
現代ビジネス

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