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新型コロナウイルスは香港デモを終わらせるのか?

2/13(木) 7:00配信

日経ビジネス

医療関係者からスタートした労働組合の政治運動

 新型肺炎への懸念から多くの人が集まる抗議活動がすでにいくつか中止されている。例えば1月27日の社民連線・工党主催の警察批判デモ、1月30日のキリスト教徒による「祈祷(きとう)会」の形を取った抗議活動は中止が決定された。これまで様々なデモを企画してきた「民間集会団隊」(HKCAT)も2月24日まではデモを実施しないことを発表している。

 警察と勇武派とみられる抗議者の間の衝突はいくつか起きているが(警察は催涙弾も使用)、いわゆる勇武派だけではない幅広い市民が参加することが想定されている抗議活動は中止される傾向にある。

 肺炎流行によって抗議活動は一見収束に向かっているように見えるが、逆に肺炎流行によって新たに呼びかけられた抗議活動もある。1月末に話題になったのは中国本土とつながる高速鉄道の香港西九龍駅の閉鎖を呼びかける抗議活動だ。

 香港西九龍駅は中国本土との境界線から離れた九龍半島南部にある駅だが、「一地両検」政策のもと中国本土と香港両方の税関・出入境審査・検疫手続き(CIQ)が1カ所で行われている。中国の公安機関を香港の領域内に設置することから、「一国二制度」を破壊するもの、さらには香港と中国の一体化の象徴として計画時・建設時に多くの批判を受けた。香港と武漢を直通する列車も設定されており、香港での初期の感染者の多くは香港西九龍駅を利用した乗客だった。



 旧正月にもかかわらずインターネット上では駅を封鎖するためのデモを駅の周辺で4日連続で実施することが呼びかけられた。しかし実際には1月25日に駅周辺でデモをしようとした数人が逮捕され、1月26日には肺炎の流行を懸念してこのデモの残りの日程も中止された。

 旧正月2日目に当たる1月26日、デモは意外な場所で起きた。香港の北東部のベッドタウン、粉嶺である。政府が使用開始前の公営住宅(暉明邨)を感染者と接触のあった人・医療スタッフの隔離場所などとして利用しようとしているという情報が流れた。一部の地元住民がこれに反発し、暉明邨近くの道路を塞いだ抗議活動が行われた。暉明邨の周囲には学校・団地が集まっており、抗議活動の現場には「500メートル以内に5万人も住んでいるのにどうして隔離病棟が建てられるのか」というメッセージが貼り出された。

 香港警察は放水車などを利用し強制排除の姿勢を見せていたが、新しく就任したばかりの民主派区議会議員の羅庭德氏の説得により警察の強制排除は一時回避された。だが、一部の過激化した抗議者が暉明邨の一室に放火した。その後香港政府は暉明邨を隔離施設として利用することを取りやめると発表した。同様の地元住民による抗議活動は1月27日の夜、九龍湾健康センターを今回の肺炎のための「指定診療所」にすることに関しても起きている。

 肺炎流行への懸念があるのにもかかわらず、インターネット上などで肺炎治療にあたる香港の病院スタッフのストライキを支持するという声が広がっている。

 民主派の新しい公立病院関係者の労働組合である「医管局員工陣線」は現場の医療スタッフの負担を減らすために香港政府に「中国(本土)からの旅客の入境禁止」や「医療スタッフの労働環境を安全なものとすること」などの五大要求を出した。受け入れられない場合2月3日からストライキを行うことを1月26日に宣言している。このストライキ予告はインターネット上ではおおむね支持され、医療関係者との連帯を示すデモも企画されている。

 1月27日付「明報」によれば、公立病院であるクイーンメアリー病院では実際にストライキが起きている。隔離病棟としてふさわしい設備がない病棟を、肺炎患者の隔離病棟として使用することを病院が決めたためだ。

 香港中文大学医学部は香港の医療負担軽減のために湖北省以外から来た人にも入境制限を設けることも含めて、出入境管理をより厳しくすべきだとフェイスブックで声明を出している。香港政府はこれと逆行するかのように香港居民ではない罹患(りかん)者も無料で治療すると発表したものの、1月28日になって取り消しを発表している。

 1月28日になると一部の出入境施設閉鎖が発表された。「医管局員工陣線」はこの発表を部分的に評価しつつ、全ての出入境施設閉鎖が必要だとの声明を発表し、運動を継続することを宣言した。

 2月1日には「医管局員工陣線」は組合員の総会で圧倒的多数の賛成で政府が対話に応じなければ病院でのストライキに突入することを決定した。2月2日には行政長官が医療関係者の話し合いに出ないと発表し、ストライキ突入が最終決定された。この労働組合には医療スタッフの1割ほどしか参加していないが、2月3日には2400人がストライキ登録をしたと発表。政府が対話に応じないため2月4日には緊急医療もストライキの対象になった。

 政府の病院管理局はこの抗議活動に否定的なメールを職員に配信しているが、一方で様々な新興系労働組合が賛成の意を示している。これらの労働組合は一連の抗議活動の中で拡大・設立されたものもあり、今回医療系労働組合の動きを受けて同じ労働組合としての彼らの動きが目立つようになった。「政府寄り」だとされている香港鉄路(MTR)においても、会社の方針に反発して設立された新興系労働組合「港鐵新動力」は支持を表明しており、バス大手3社の民主派寄りの労働組合連合も同様に支持を表明。さらに言語療法士の労働組合の1つは政府の対応を批判し実際にストライキに突入した。

 これらの労働組合はこの医療系労働組合の動きとともに活動を活発化させており、「街站」という登録ブースを街中に設け会員数を増やしている。そして総会を開いてストライキも含めた今後の活動方針を決定しようとしている。

 爆発物が発見される事件も起きている。明愛医院のトイレでは小規模な爆発物が仕掛けられて、実際に爆発した。28日には出入境施設の1つである深圳湾口岸に爆弾が仕掛けられた。いずれもテレグラムで犯行声明のようなものが出されており、出入境施設閉鎖を求めたものとみられる。

 同様の爆発装置が設置される事件は2月2日の午後、香港で最も通行量の多い出入境施設である羅湖駅でも起き、MTR東鉄線は一時運休した。こちらについても「九十二籤」という過激な行動を繰り返していると思われる組織から犯行声明が出され、「香港警察がどう警戒しようとも爆弾設置は可能だ」と今後の爆弾設置も示唆した。

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最終更新:2/13(木) 7:00
日経ビジネス

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