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【著者に訊け】話題作連発の宇佐美まこと氏『黒鳥の湖』

2/14(金) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【著者に訊け】宇佐美まこと氏/『黒鳥の湖』/祥伝社/1700円+税

 昔、理科の実験で驚いた憶えがある。赤、青、黄と、色は重ねるほど黒に近づき、かたや光は重ねれば重ねるほど色を失い、まっさらで白々した像を結ぶことに。

「あと、白は何か混ざるとすぐ濁るけれど、黒は何が混ざっても黒は黒なんですよね。私自身は断然、白より黒派。その黒がどんな成分でできているのか、過去や来歴に興味津々なんです」

 宇佐美まこと氏の最新作『黒鳥の湖』も、白ならぬ黒だけに侮れない。物語は、若い女性を拉致し、衣服や体の一部を家族に送り付けた上で殺す連続殺人鬼の恐怖と、美しい妻も娘も事業も全て手に入れた不動産会社社長〈財前彰太〉の幸福な日常とが一見無関係に並走する。だが、次第にその接点に見え隠れする人々の過去や闇や傷が、読む者の心を嫌というほどざわつかせるのだ。

 実は彰太が〈由布子〉と結婚し、麻布十番商店街で貴金属店を営む伯父〈文雄〉の遺産を相続したこと自体、醜い嘘と悪意の産物だった。しかも連日世間を騒がせる〈肌身フェチの殺人者〉の卑劣な手口に彼は思うのだ。〈あまりに似すぎている、あの時に聞いた話と──〉。

 作家としての始点は怪談。それも第1回『幽』怪談文学賞の応募要項を見るなり、「私の賞だ」と確信したというほど、怖い話は大好物。

「ホラーじゃなく怪談が好きなんです。ホラーが微に入り細に入り書いて怖がらせる足し算の文学だとしたら、日本古来の風土に根差した怪談は余白や行間に想像力を働かせる引き算の文学。『振り向くと白い服の女が立っていた』くらいで終わるからこそ、読者の中ではその人ごとに思い描く白い服の女性が立ちあがるわけです。

 応募当時、中学生の息子にパソコンを買ったんです。その際にパソコン講習会の無料券がついてきたので、試しに私が通うことに。そこでブラインドタッチで文章を打つ練習をするのですが、他人が書いた文章を写すくらいなら、自分で何か書いてみたいと思ったのが、実は小説を書き始めたきっかけです。それまでは松山で普通に働く主婦で、老親を介護し、孫も7人います。

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最終更新:2/14(金) 16:39
NEWS ポストセブン

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