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アマゾンで「最もやってはならないこと」は何?元本部長が語る

2/14(金) 12:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

あなたは、アマゾンという企業をどのくらいご存じだろうか? 日本でのサービス開始当初「世界最大のオンライン書店」と称されていたアマゾンは、わずか20年弱で「GAFA」と呼ばれる4大IT企業の一角にまで発展した。その驚くべきビジネス戦略や如何に。アマゾンジャパン元経営会議メンバーで現在は、kenhoshi & Companyの代表としてコンサルティングを手掛ける星健一氏の著書『amazonの絶対思考』(扶桑社)より一部を抜粋し、「内側から見たアマゾン」を解説する。

アマゾンの教え「Disruptive(破壊的)に考えろ」

過去の連載では、アマゾンのビジネスモデル、アマゾンプライムプログラムや楽天市場と比較した場合の強みなどの分析を通し、アマゾンの「絶対思考」はどのようなものなのかを解説してきた。ぜひ、詳しいことは拙書『 amazonの絶対思考 』(扶桑社)を読んでいただければありがたい。

そして第6回より、アマゾンの行動規範でもあり企業文化の骨幹でもある「14のリーダーシップ・プリンシプル」の概念を紹介している。今回は、後編として8~14項目のそれぞれについて、私自身が経験した事例などを交えて解説していきたい(前編:『 外資系Amazon、意外にも「それは私の仕事じゃない」は禁句 』)。

読者の方々の会社でも、色々な行動指針、規範があると思うが、それを社員、メンバーに伝え、コーポレートカルチャーのレベルまで持っていくには、継続した地道な教育が必要だ。その際には、社内での実例をベースに伝えるのが最適だと考える。

8 Think Big――大きな視野で物事を考えろ

この言葉は、訳すまでもないだろう。大きな視野で物事を考えろということだ。たとえば、何か新しいサービスを提案する際、チーム内ではさまざまな議論が交わされる。日々の改善も重要ではあるが、高く大きな視野から見たときに、ある顧客セグメントを対象にしたサービスの提案に対して、「なぜ、このセグメントの顧客だけなのか」「他のセグメントの顧客に拡大した場合のデメリットはあるのか」「デメリットがないのであれば、この顧客層まで拡大しよう」「だとすれば、さらにこんなサービスも考えられる」などなど……。

チームメンバーが「基準」を引き上げて、枠に固執しない発想でブレーンストーミングでわいわいと議論する中から、今まで誰も思いつかなかったサービスが誕生することもある。

読者の皆さんの会社でも行われているとは思うが、ブレーンストーミングは、脳を活性化させ新しいアイデアを出し、基本原則は自由で、批判はしない。質よりは量、連想しながらアイデアを重ねていく。新しいアイデアを募るには非常に有効な方法である。

固定観念に縛られず「Disruptive(破壊的)に考えろ」というのも、アマゾン社内でことあるごとに繰り返されている教えだ。イノベーションには破壊的思考が必要であり、有意義なイノベーションを生み出すために「Think Big」が不可欠なのだ。ただし、「Invent & Simplify」と同様に、急に「Thing Big」で考えろといっても、そう簡単なことではない。常日頃から習慣づけるメカニズムが必要だ。

詳細は書籍『 amazonの絶対思考 』の第6章で述べているが、たとえば、毎年の予算作成時期に行われるLong Range Plan(中長期計画)もしくは3-year plan(3カ年プラン)では、予算テンプレートにその破壊的アイデアを記載する項目がある。そのテンプレートがあるために、各チームは必然的、強制的に「Disruptive」なアイデアを考えなければならない。

また、年に一回のイノベーションサミットと呼ばれるワークショップは参加者全員がいくつもの破壊的なプランを持ち寄り、それを参加者で絞り込んでいき、選ばれたプランは実現へ向けてプロジェクト化する仕組みもある。

こうしたメカニズムにより、社員は「Innovative」で「Thing Big」な思考を持ち続けることが習慣づけられるのである。

9 Bias for Action――ビジネスにはスピードが重要

日本では「偏見」や「先入観」という意味で「バイアス」という言葉が浸透しているために理解しづらいが、「Bias」には「方向性」や「志向」といった意味もある。つまり、この項目は行動あるのみという「行動志向」を指し示しており、「Speed matters in business」、ビジネスではスピードが重要であると説明文で明言されている。

実際にアマゾンでの仕事、そして決断では何よりもスピードが最重要視されている。

たとえば新しいプロジェクトの実現の可能性を検証する際、70%程度確信できているのに、ただ「まだ30%検証できていない」ことを理由にスタートを躊躇(ちゅうちょ)することは叱責の対象となる。30%の未検証エリアに潜むリスクを予測した上で、何よりもスピーディに実際のプロジェクトを立ち上げることが求められるのだ。

経験に基づいてリスクを検証し、たとえ失敗したとしても、その原因究明や次のステップに移行するための方策を示す、もしくは元に戻れるように2ウェイ、すなわち一方通行ではなく、戻り方も考えておけば、トライ&エラーは許容される。

しかし、リスクを恐れて仕事を止めてしまうのが、アマゾンでは最もやってはならないことなのである。

「Insist on the highest standard」、「Dive Deep」を追求しながらも、「Bias for Action」スピードを求めるのは相反するように感じられるが、ORではなく、AND両方を突き詰めなければならないのがアマゾンの常識なのだ。

10 Frugality――「経費節減」ではない倹約の精神

これはもうワンワード。「倹約」である。顧客の利便性のためのイノベーションへの投資は惜しまないアマゾンだが、倹約の精神は全社員に徹底されている。

たとえば、小さなことからいえば、日本法人の役員として私もアメリカ出張は多かったが、役員であっても出張の飛行機代はエノコミークラス、それも最安値のディスカウントチケットしか許されない。なぜなら、社員がビジネスクラスで出張することは「1 Customer Obsession――顧客中心の判断基準は妥協するな」には関係ないからだ(前編:『 外資系Amazon、意外にも「それは私の仕事じゃない」は禁句 』)。

アマゾンでは新しいプロジェクトをスタートする際、もしくはミーティングで議論する際には、まずは「Two Pizza Team」で取り組むという緩やかなルールがある。つまり、2枚のピザを分け合える程度の少人数でとにかくスピーディにスタートを切り、その可能性を検証するということだ。とはいえ、アメリカでデリバリーされるピザのサイズは直径が50cmはあるような大きさなので、小食な日本人であればより多くの人数で取り組める、などという冗談は通用しない。

新しいプロジェクトにより大きな予算を付けるための折衝に時間を費やすよりも、小さな予算、チームでチャレンジする慣習もまた、アマゾン流の倹約なのである。

追加ヘッドカウント(新たに採用できる人数)の承認の是非についても同様だ。アマゾンでは予算作成時に一般的な経費についてはあまり精査しない。一方、米国本社が厳しく管理しているのが、「ヘッドカウント」と呼ばれる人数だ。

それぞれの部門に現状何人いて、来年の予算では何人追加のヘッドカウントがリクエストされているのか、その内、何人を承認するのかを細かく見ている。一人の追加ヘッドカウントの承認を取るのも非常に大変なのである。

部署を担当する管理職は、現状、無駄な作業はないか、それを削減して人員を転用できないのかなどを考えなければならない。つまり、文房具を削る、昼休みに電気を消すなどのありがちな「経費節減」とはややニュアンスが違う。

新しいプロジェクトにふんだんな予算があれば、自分たち自身が知恵を絞り手を動かすよりも、外部のデベロッパーなどに外注するという方法を選びがちになる。でも、それでは外注先に結果を求めるだけで、プロセスにある課題や別の可能性についてメンバー自身が考えなくて済んでしまうことになる。経験を自らの糧(かて)とするための倹約なのだ。

たとえば、マーケットプレイスでは、新たな販売事業者を獲得することが品揃えを拡大するための重要な施策だ。そのために、営業メンバーが電話をかけたり、訪問したりしている。ただ、オンラインマーケティングと呼ばれるオンライン上(ウェブサイトに出品者候補を誘導)でアプローチして、アマゾンでの販売の魅力をオンラインで説明し、出品者候補自らが出品登録をしてもらう方法もある。

私は少ない人数で多くの候補者にアプローチが可能なオンラインマーケティングをさらに改善させるほうが、営業の人数を増やすよりも「Frugality」の観点から、また効率性の観点からも有効だと考え、投資配分の比重を厚めにする決断をしたことがある。倹約して自らの手と頭を動かすことで、新しい発見、イノベーションを生み出すことを求められているのである。

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最終更新:2/14(金) 12:00
幻冬舎ゴールドオンライン

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