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平坦ではなかった10年「2人とも頑張ったね」 シングルマザーの私から娘へ/誰かの物語を花束に

2/15(土) 6:04配信

朝日新聞デジタル&[アンド]

【連載】花のない花屋

この連載では、読者から募ったエピソードを元に、フラワーアーティスト東信さんが世界にひとつだけの花を作ります。その花を通して紡ぎだされる、贈り主と大切な人の物語をお届けします。

〈依頼人プロフィール〉
林 淳子さん 35歳 女性
東京都在住
大学職員

     ◇

昨年娘が10歳を迎えました。思えば、これまでの10年は私たち母娘にとって平坦(へいたん)な道ではありませんでした。私は大学院生のときに結婚して娘を授かりましたが、1歳のときに離婚。以来ずっと娘と2人暮らしです。離婚するときに一度、研究の道をあきらめることも考えましたが、両親の支援のおかげで無事に博士論文を提出、3年前に大学教員の職に就くことができました。

娘にとってこの10年は決して最善のものではなかったように思います。研究の道で身を立て、娘を養っていくと決めてからは、私は幼い娘を抱えながらも研究優先の日々を過ごしてきました。

日中は保育園に預け、ときには遠方に住む両親の助けを借り、お迎えに行った後も娘と研究室に戻って論文を書くこともしばしばありました。土日に研究会や学会があれば、シッターさんや両親に娘を預けて出席しました。

研究に集中する時間を作るため、遠方の実家に娘を数週間預けることもありました。一人で育てると覚悟を決めた割に、家庭らしい時間を作ることができていない自分に嫌悪感を抱くこともありましたが、「厳しい研究職の争奪戦を勝ち抜き、娘を養うため」と自らを奮い立たせ、歯を食いしばる毎日でした。

しかし、大学に就職してからはさらに忙しくなり、1限目の授業があるときは娘より早く家を出ていき、夜は娘が寝る直前に帰ってくるということも。保育園の送りも迎えも、入浴も食事もシッターさん任せで、娘と会う時間は1日30分程度という時期もありました。娘から「もっとラクな仕事に変えられないの?」と言われたこともあり、父親に「ママと一緒に暮らしていても、一緒に暮らしていない感じ」と愚痴っていたこともあったそうです。

それでも、そんな環境の中で娘はシッターさんとうまくやり、私に付き合って研究室へ行けば、ほかの先生や大学院生と仲良くなり……。いつも人を尊重し、人の気持ちを慮(おもんぱか)れる優しい子に育ってくれたことに感謝です。

この10年、シングルマザーとして生きることは容易ではありませんでしたが、「ママ大好き」「ママお勉強頑張ってね」と言ってくれる娘が大きな支えでした。そこで、私たち2人とも10年間頑張ったね、またこれからもともに歩んでいこうね、という気持ちを込めて娘に感謝の花束を贈りたいです。

娘はやわらかい雰囲気の女の子で、今はバレエが大好き。できたらやさしい色使いで、バレエをテーマにアレンジしていただけるとうれしいです。これから自分の道を模索していく娘に、「明るい未来が待っているよ」「好きな道を歩んでいってね」と励ますお花になりますように。

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最終更新:2/15(土) 6:04
朝日新聞デジタル&[アンド]

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