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リバプールはデータで「質」を問う。 南野らを評価する新指標「EPV」

2/15(土) 21:24配信

footballista

 束の間のウインターブレイクを終えプレミアリーグ第26節に臨むリバプール。首位を独走し続ける世界王者に今冬加わった南野拓実だが、新天地ではいまだ0ゴール0アシストと目に見える結果を残せていない。前節のサウサンプトン戦では85分にゴール前でモハメド・サラーのお膳立てをシュートミス。「なぜか8ヤード(約7.3m)の距離から誤射し目前のゴールを外す」と評した米『ESPN』を筆頭に各メディアから厳しい評価を受けた。

 だが、本当にそれだけ大きなチャンスだったのだろうか? 例として挙げた『ESPN』はゴールからの距離を基にその大きさを強調したが、実際のシュートには受けたパスの種類、シュートを撃つ角度や体の部位など、他にも様々な要素が影響を及ぼす。

 そうしたシュートの背景にある各データを加味してゴールが生まれる確率を導き出すのが「ゴール期待値」だ。大手スポーツ分析会社『Opta』が提供するゴール期待値によると、あの場面で南野のシュートがゴールネットを揺らす確率は50.77%。つまり、2回に1回決まる程度のシュートチャンスだったわけだ。こうした客観的な数字を踏まえると、あそこまでの批評はいささか大げさだったのではないだろうか。

「ゴールの確率」でプレーを評価

 クラブ内部に「研究部門」を置くリバプールは、こうしてチャンスの質を測るゴール期待値と同様に、一つひとつのプレーの質を見定めている。そのディレクターを務めるイアン・グラハムは、ドルトムント時代に一切データ分析を行わなかった指揮官ユルゲン・クロップを説き伏せたという物理学者だ。幼少時から“レッズ”(リバプールの愛称)のファンである彼は、昨年10月にラジオ番組『FREAKONOMICS』で愛するクラブに導入した新指標の存在を明らかにしている。

 「フットボールはゴールによって測定されます。それが勝利に直結するわけですからね。私たちは選手がピッチ上で行うあらゆるプレー――パスやシュート、DFならタックルを捉えようとしているんです。そして、『このプレーが起こる前、このチームからゴールが生まれるチャンスはいくつだろう?』と疑問を投げかける。その後に『このプレーが起こった後、このチームからゴールが生まれるチャンスはいくつだろう?』と問いかけます。私たちはそれをかなり親しみやすい名前で『ゴール貢献度』と呼んでいますよ」

 言い換えれば、リバプールはポゼッションの中でゴールが生まれる確率の推移を見守り、その増減から一つひとつのプレーを評価しているということ。それを数値化・可視化するのは昨年3月にバルセロナの分析部門責任者ハビエル・フェルナンデスが発表した、データ分析界で「Expected Possession Value」(EPV)と呼ばれる指標だ。

 「チームの得点チャンスに結びつかない保守的なパスを出していれば、とても容易にスタッツを操作して高いパス成功率を叩き出せますが、私が心から愛しているパスは相手の守備の背後を突いて4、5人のDFをプレーから無効化するパスなんです」

 グラハムが指摘するように、サッカー界ですでに浸透しているパス本数やパス成功率だけでは相手の守備組織を乱すようなパス、すなわちパスの質を評価することができなかった。だが、有効なプレーエリアと守備の構造、各選手の移動速度・方向転換・位置関係、パスコースやシュートコースなど、多岐にわたり状況的・空間的な情報を考慮するEPVでは、フェルナンデスいわく「例えばパスで(守備が作る)ラインを突破した時、ごくわずかな時間で状況が変わる様子やそのポゼッションがゴールに終わる確率の上昇を観測できる」。

 このEPVを算出するために1試合でおよそ2000のイベントデータと、ミサイルの追跡にも使われる光学技術を応用して1秒間に25コマを記録し、約150万に上るトラッキングデータを収集していることを明かしたのは、グラハムと同じくリバプールの研究部門で働くティム・ワスケットだ。この統計学者は昨年12月に英『BBC』が放送したテレビ番組内で、プレミアリーグ第15節エバートン戦での得点シーンを例に、図を用いながらEPVの活用方法を明かしている。

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最終更新:4/4(土) 6:43
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