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久保建英が流れを変えた。マジョルカは4試合ぶり勝利も…ベンチ要員であり続ける理由とは

2/16(日) 11:42配信

フットボールチャンネル

 マジョルカは現地15日、ラ・リーガ第24節でアラベスに1-0で勝利を収めた。4試合ぶりに手にしたゴールと勝ち点3は、今後に向けて価値あるものになるだろう。久保建英は後半途中から出場してマジョルカに流れを引き寄せ、勝利に大きく貢献した。しかし、今後もベンチスタートが多くなるのは変わりそうにない。その理由とは…。(文:舩木渉)

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●交代出場で流れを変えたが…

 選手交代で流れが変わった。マジョルカに所属する日本代表MF久保建英は、現地15日に行われたラ・リーガ第24節のアラベス戦に52分から途中出場し、勝利の立役者の1人となった。

 最大の見せ場はピッチに立ってすぐ、54分にやってきた。味方のスローインからFWクチョ・エルナンデスのパスに抜け出した久保は、左サイドをえぐってマイナス方向に折り返す。そして2列目から飛び出してきたMFダニ・ロドリゲスがゴールネットを揺らした。

 マジョルカが先制したかと思われたこのゴールは、VARの介入によってノーゴール判定となってしまった。スローインを受けたクチョ・エルナンデスが、ボールコントロールの際にハンドを犯していたことが見つかってしまったのだ。主審が見逃していた反則は、映像という“神の視点”から暴かれてしまった。

 それでもマジョルカは勝ち切った。63分、前半途中から出場していた左サイドバックのDFレオナルド・クトリスのクロスに、中央でクチョ・エルナンデスがダイビングヘッドで合わせる。一度はGKにセーブされたボールを、再び反応したクチョ・エルナンデスが自ら押し込んで今季初ゴールを奪った。

 アラベスはともに9ゴールずつ奪っているFWホセルとFWルーカス・ペレスを中心に、終盤まで猛攻を仕掛けたが及ばず。3連敗中だったマジョルカは、リーグ戦では4試合ぶりとなるゴールを挙げて勝ち点3をもぎ取った。

 久保はチームに勢いを与えた。前半のマジョルカは硬さが取れず、左サイドバックのDFルマー・アグベニューが早々に負傷交代。さらにMFサルバ・セビージャのPK失敗によって先制の絶好機を逃すなど、決してマジョルカにいい流れはきていなかった。そんな中で背番号26の18歳は、多彩な仕掛けで攻撃のアクセントとなり、スムーズにボールを前に運ぶ原動力となって他との“違い”をはっきりと示して見せたのである。

 マジョルカはどうしても全てのベクトルが「前」に向かってしまう傾向があり、アラベス戦の前半も攻撃には単調さが目立った。時間と手数をかけず、いかにいい形で得点源のFWアンテ・ブディミルにボールを届けるかに集中するあまりアイディアを欠き、シンプルなロングボールやクロスに頼ってしまっていた。

●能力の高さがむしろリスクになる理由

 チームのベースとなる動きは組織化されている。アラベス戦を例にとると、守備時は4-4-2が基本で、攻撃になるとMFイドリス・ババをアンカーに配し、サルバ・セビージャとMFアレイシ・フェバスがインサイドハーフ的に振る舞う4-1-4-1に変化する。

 その中に入った久保のプレーは、明らかに異質なものだった。スタートポジションは右サイドだが、そこにとらわれることなく幅広く動き回り、左サイドにも顔を出す。味方のボールホルダーを近い距離でサポートすることにより、ボールの循環をスムーズにした。

 実際、54分の取り消された幻のゴールの場面では左サイドをドリブルで破ったし、久保が絡んでチャンスになる場面の多くは左サイドでボールに絡むことによって生まれた。一方で、この奔放さを許容できるのはゴールを奪うためにリスクを冒さなければならない時間帯に限られるかもしれない。

 久保が左サイドまで進出すると、当然ながら右サイドにはぽっかりと大きなスペースができる。もし相手にボールを奪われてサイドチェンジされてしまうと、右サイドの守備の人数が足りず、大きなピンチを招きかねないのだ。

 最近は右サイドバックに冬の新戦力アレハンドロ・ポゾが定着しつつあるが、同選手はもともとウィングを本職とするアタッカータイプで守備は不慣れ。サポートが不足して1対1、あるいは数的不利な状況に晒されると簡単に崩されてしまう場面が散見される。

 もちろん久保の守備意識が低いわけではない。猛然とプレスバックして守備を助けられる場面もあるが、攻撃でリスクを負っている以上、どうしても全ての局面に完璧な対応はできない。90分間を通してのチーム全体のバランスを考慮すると、攻撃面にスペシャルな能力を持つがゆえに自らの起用法を難しくしてしまっているという見方もできる。

 マジョルカは激動の最中にある。アラベスに勝利して暫定17位に浮上したものの、終盤戦まで残留争いの中で厳しい戦いを強いられることになるだろう。そんな苦境の中、11日に突如マヘタ・モランゴCEOの退任が発表された。

●久保獲得のキーマンがクラブを去り…

 彼は昨夏の久保獲得に尽力した人物で、マジョルカではビジネス面のみならず強化部門にも権限を持っていた。クラブ中枢にいた幹部がシーズン中、まして降格の危機にある状況で事実上の解任に追い込まれるのは異例のことだ。

 だが、現地ではビジネス面での働きぶりが高く評価されていた一方で、チームの強化における方向性の不一致があったとも報じられている。つまりモランゴCEOの退任によって、1部昇格を果たした今季の補強が“失敗”と見なされることになったのである。

 確かにマジョルカは今季、多くの選手を獲得したが、現状の主力のほとんどは昨季も在籍していた古参組が担っている。はっきりと戦力になっているのはルマーや久保、フェバスくらいで、クチョ・エルナンデスもようやくフィットし始めたところだ。

 2部で戦っていた、1部のレベルではやや技術的に劣る選手たちの中に、ポジションにとらわれない動きをするテクニシャンが1人だけポンと置かれると、それは組織全体のバランスにヒビが入る要因になりかねない。勝つために必要な戦力ではあるものの、突出した存在をある程度方向性が定まったチームの中に組み込む難しさを、ビセンテ・モレノ監督は痛感しているはずだ。1部に残留するためには現実的なサッカーで地道に勝ち点を積み重ねていくことが最優先で、傍らで理想を追い求めたり、若手に成長の機会を確保したりする余裕はない。

 4試合ぶりに勝利したマジョルカは、今後も厳しい戦いを強いられるだろう。冬に加入したポゾとクトリスが主力に割って入りそうなパフォーマンスを発揮しているポジティブな要素はあれど、先制されると逆転まで持っていけるほどの爆発力に欠け、ブディミル以外の得点源も確立できていない。

 移籍市場も閉幕し、大きな変化が望めないとなれば久保は今後もベンチスタートがメインになっていくはずだ。だが、ゴールが欲しい展開で攻撃に違いを生み出せる彼をベンチからフレッシュな状態で送り出せるのは、今のマジョルカにとって最適な形にも思える。

 久保個人の視点から見ればスタメン出場の機会が限られるのは不本意かもしれない。だが、限られた時間の中でゴールに絡み続けてマジョルカの1部残留に貢献することができれば、選手としての引き出しが増え、さらなる成長のきっかけにはなるだろう。決して後ろ向きになって腐ることなく、忍耐強く目の前の戦いに挑み続けることを怠ってはならない。

(文:舩木渉)

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最終更新:2/16(日) 12:25
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