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新型コロナウイルスを止めるべく、米国が「抗体」の開発を急いでいる

2/17(月) 8:11配信

WIRED.jp

カナダのヴァンクーヴァーに本社があるバイオテクノロジー企業AbCelleraのオフィスに、医療宅配業者によって一両日中に発泡スチロールのクーラーボックスが届けられる。その箱には、米国立衛生研究所(NIH)の研究者が新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の患者から採取した血液サンプルが、ドライアイスとともに詰められているはずだ。

中国では新型コロナウイルスに対抗すべく、臨床試験が次々に始まった

この血液サンプルは、AbCelleraの研究室に運ばれることになる。そして、クレジットカードの大きさのマイクロ流体チップにセットされ、数百万個の白血球が1個ずつマイクロチャンバーに分離される。その後、それぞれの白血球は1時間ごとに撮影され、白血球が新型コロナウイルスを撃退するために生成する抗体を探し出すのだ。

「患者の血液サンプルの全細胞を数時間でチェックできます」と、AbCelleraの最高経営責任者(CEO)であるカール・ハンセンは言う。「患者1人のサンプルから、1日のスクリーニングで400の抗体をつくれるようになりました」

抗体とは、ウイルスやその他の異物を生体内から除去するために、免疫系がつくり出すたんぱく質のことだ。ワクチンは体内の免疫系を刺激して、侵入してくるウイルスに対する抗体の産生を促す。同じウイルスにまた攻撃されることがあった場合にも、この免疫力は有効になる。

ワクチンの効果は何年も続くが、その開発には長い時間がかかる。現在、COVID-19の原因ウイルスに対して使用できるワクチンはないが、ジョンソン・エンド・ジョンソンやマサチューセッツ州ケンブリッジのModernaといった製薬会社は、COVID-19のワクチンの開発に取り組んでいる。

これに対して研究者は、医師や病院職員、そして感染患者の家族など緊急に対策が必要な人がすぐに使える一時的な対策として、抗体自体の注入が役立つかどうかを研究している。

まだ症状の出ていない人に抗体を

米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は、致死率が高い新型ウイルスに対する抗体を60日以内に特定・生成することを目標に、2年前に「パンデミック防止プラットフォーム(P3)」プログラムを立ち上げている。デューク大学とヴァンダービルト大学のメディカルスクールから研究者を募り、AbCelleraと製薬大手のアストラゼネカにも協力を求めた。

いま中国で猛威を振るっている新型コロナウイルスのようなアウトブレイクに備えて、P3プログラムの科学者は、SARS(重症急性呼吸器症候群)およびMERS(中東呼吸器症候群)の原因となるウイルスを使用して試験を実施した。どちらもコロナウイルス科のウイルスで、COVID-19と密接に関連している。

研究者はこの2種類のコロナウイルスの抗体を分離したあと、遺伝子コードを特定し、それを基に抗体を大量生産する。患者に直接注射することで、感染したコロナウイルスに対して即座に抵抗力を与える抗体薬を開発することが目標だ。

「わたしたちは患者の血液を採取し、抗体を特定します。これを素早く実施するのです」と、DARPAのバイオロジカルテクノロジー研究室プログラムマネージャーのエイミー・ジェンキンスは説明する。同研究室はAbCelleraの研究に4年間で3,500万ドル(約38億4,000万円)の資金を支援している。

「抗体を分離できたら、まだ症状の出ていない人にその抗体を与えることができます。抗体はワクチンと同じように感染を防ぎます。違いは、ワクチンの効果は長く持続する点です。わたしたちはワクチンほど効果が長く続かなくても、いますぐ免疫力をつけられる治療法を目指しています」

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最終更新:2/17(月) 8:11
WIRED.jp

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