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小島健輔リポート D2C神話から“個客”実利のC2Mへ

2/17(月) 13:02配信

WWD JAPAN.com

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新しいビジネスモデルとして世界で脚光を集める「D2C」。次々に新しいD2Cのスタートアップ企業が登場しているが、その本質は何なのか。

 アパレルの需給ギャップが拡大して売れ残り品の廃棄がサスティナブルでないと批判を浴びる中、D2C(Direct to Consumer)ビジネスが注目されているが、D2Cなら需給ギャップや廃棄が発生しないわけでもない。需給ギャップも廃棄も発生しない本当にサステナブルなビジネスを目指せばC2M(Customer to Manufactory)※1に行き着くことになる。

※1.C2M…ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法。F2C(Factory to Consumer)ともいうが、個客から生産へという方向に意味があるゆえC2Mと捉えたい

直営店流通が壁に当たって

 ブランドの流通体制には卸流通と直販流通があり、それぞれに一長一短がある。D2Cは直販流通の抱える2つの課題を解決すべく、ECのメジャー化とともに注目されるようになった直販手法だ。

 卸流通は不特定多数の問屋や小売店に広く流す「開放型」、特定の代理店や直営販社を通して選別した小売店に流す「排他型」、代理店も直営販社も通さずブランドメーカーが選別した小売店やFC店に直接流す「直卸型」があり、販路を絞り直接に卸すほど価格やブランドイメージをコントロールしやすくなるが在庫負担も高まる。開放型や排他型では問屋や小売店の流通在庫が需給のクッションになるが、直接型ではブランドメーカーに需給調整機能が集中するからだ。

 ライセンシングは排他型卸流通の一種で、各国のマーケットにローカル適応して大きなマーケットを形成できるメリットがある。それはカネボウの「ディオール(DIOR)」が500億円、デサントの「アディダス(ADIDAS)」が400億円、三陽商会の「バーバリー(BURBERRY)」が600億円近く(小売規模1000億円)に達していたことからもうなずける。1990年代にはライセンシングを解消したりライセンシーを買収して直卸や直販に切り替えるのがビッグブランドのトレンドとなったが、マーケットが縮小したり経費倒れになることもあり、メジャーマーケットは直販流通、マイナーあるいは発展途上マーケットは代理店流通かライセンシングと使い分けるブランドが多い。

 さらにダイレクトなのがSPA(製造小売り)型の直販流通で、ブランドメーカー自ら多数の直営店を運営して顧客に直販する。価格もブランドイメージも自在にコントロールできるが在庫リスクも集中し、大規模になると需給調整に追われてラルフ ローレン(RALPH LAUREN)のようにプロパー店よりアウトレット店の方が多くなるケース(プロパー店の2.6倍)が米国では多々見られる。

 店舗の運営コスト負担も重く、近年の米国では直販流通で販管費が肥大したラルフ ローレン(販管費率52.7%/営業利益率8.9%)やPVH(販管費率45.7%/営業利益率9.2%)より、ギルダン・アクティブエア(販管費率12.7%/営業利益率15.0%)やヘインズブランズ(販管費率26.3%/営業利益率12.8%)のような軽コストの卸流通アパレルの方が高収益になるほどで、SPA型の直営店展開は壁に当たっている。

 そんなリスクを回避すべく80年代までは買取型のFC展開(直卸型)がブランド流通の主流だったが、販売の主戦場が駅ビルやSC(ショッピングセンター)など商業施設に移るとともにコストに見合わなくなり、SPA型の直販流通に移行していったのは記憶に新しい。規制が厳しい欧州では商業施設の開発が進まずいまだ路面店が主流で、買取型のFC展開から直営店展開へ移行しきれないままD2Cへ転じつつある。

 SPA型の直販流通が在庫とコストの負担で壁に当たる中、台頭していったのがD2Cといわれるネット(ECやSNS)販売のブランドビジネスで、在庫が多店舗に分散せず、販管費率が低く、とりわけ販売人件費の負担から解放されるメリットは絶大だった。

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最終更新:2/17(月) 13:02
WWD JAPAN.com

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