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檀ふみ×藤原正彦×阿川佐和子 座談会〈後編〉/文士の子ども被害者の会 Season3

2/20(木) 8:00配信

Book Bang

父が望んだもの、伝えたもの。自慢話の末に思わぬ感動(本当です)が待つ大放談会。

 ***

藤原正彦(以下:藤原) 母からの被害は父のよりもっと大きいですね。母は手が出ますからね。

阿川佐和子(以下:阿川) お父さまは殴らない? 

藤原 ええ。母には何度かつねられました。つねりながら、同時に自分の口もグーッて曲がってくるんです。

阿川 本気で力入れるんだ! 

藤原 もちろん。痛かったですよ。しかも母からの被害は、母は小説より随筆が多かったから……。

檀ふみ(以下:檀) ああ、ネタにされるという意味では随筆の方が小説より具体的な現実に基づくから、家族の被害は大きくなりますよね。でも、うちの父は私小説も書くので、『火宅の人』ではフミ子という女の子がニワトリの餌なんか食べて、ワーワー泣いています。

阿川 うちも父の私小説に私が出てくるの。あることないこといろいろ書かれましたよ。てい先生の随筆に、正彦少年もずいぶん登場した? 

藤原 小学校の時に、友達の手の指を折ったとかね。私が悪いというより、高いところから飛び降りたら、そいつが私の着地点に手を置いていたというだけなんです。

檀 さあ、折ったのは誰の責任でしょう? (会場笑)

藤原 私は中学校の時、サッカーと一緒に砲丸投げの選手もしていたんですが、廊下で砲丸を投げて床へ穴をあけたとか、羽目板を叩き壊したとか、それで母が小学校、中学校、高校と学校へ何度も謝りに行かされたとか。実にオーバーに書かれている。

檀 でも、事実ではあるんでしょう? 

藤原 砲丸は誤って肩から落としただけ、通路の羽目板を殴って壊したのは、なんかムラムラムラッとして発作的に。今から考えると、あれは性的欲求不満だったのではと。

阿川 そんな、ゴリラじゃないんだから(会場笑)。

藤原 確かにその件で母が謝りに行ったりはしていました。高二の時、実力テストはクラスで一番だったのに、漢文の授業をこっそり抜け出したため、漢文の先生が意趣返しで成績を出してくれなかった。学年末、担任に落第と言われたのを、母が謝りに行って、どうにか進級できた。でも、そんなに何度も謝りに行ったわけではない。小中高それぞれで二回ずつくらいと思います。

阿川 充分多いって感じもしますけど。お母さまはお兄さんや妹さんについても書かれているんですか? 

藤原 私のことがほとんどです。

檀 愛されてたんですね。

藤原 違う違う。兄は真面目一方だし、妹は引っ込み思案で、私だけが生まれた時から猪突猛進で、変わったことばかりしたり考えていたから書くネタにしやすかったんです。いま思うと、私は数学者以外なれなかったですね。

檀 数学者というのはそういう方が多い? 

藤原 ええ。まず団体行動が苦手。協調性があったら、数学なんてやっていけません。だって、一人でじーっと一年でも二年でも考え続けなければいけない。数学でなくてもいいけど、阿川さん、何年も朝昼晩考え続けるってできます? 

檀 阿川さんには絶対無理。絶対じっとしてない(会場笑)。

藤原 机にへばりついて一時間もすると、もうフーフーでしょ? 

檀 一時間もできない。阿川さんはせいぜい三分です。

阿川 あなたが答えなくていいのよ(会場笑)。

藤原 問題は、わが家は妻も随筆を書くんです。この被害もあります。先年、家族で八ヶ岳へ登った時、十メートルくらい向うに百キロ級のクマが出た。そしたら妻が随筆に「夫はいつも武士道精神とか偉そうなことを言っているくせに、家族を置いて一目散に逃げた」云々と書いた。真っ赤な嘘です。私はその巨大なクマを見た瞬間、後ろには行ったけど逃げはしなかった。激しく後ずさりしただけです(会場笑)。

檀 激しかったのがいけなかったんですね。でも、ご自分も奥さまのことお書きになるから、痛み分けじゃないですか? 

藤原 私は「妻の性格が悪い」と本当のことを書いているだけですが、向こうは嘘を書きますから悪質です(会場笑)。家に遊びに来た友人のオーストラリア人弁護士に女房が「妻は悪口を書く夫を名誉毀損で訴えられるか」と聞いたら「もちろん」でした。

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最終更新:2/20(木) 8:00
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