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理論的には正しい「はず」が落とし穴 新規事業立ち上げの挫折が教えた「アート思考」

2/21(金) 6:11配信

NIKKEI STYLE

《連載》フロンティアの旗手たち アート×ビジネスで世の中をもっと面白く(2) uni’que代表 若宮和男

次代を担う「旗手」は何を感じ、何を考えているのか――。日本経済新聞社が運営する投稿プラットフォーム「COMEMO」から、「キーオピニオンリーダー」が執筆したビジネスパーソンにも役立つ記事を紹介します。IT関連ベンチャー、uni’que(ユニック、東京・渋谷)代表の若宮和男さんによる「アート×ビジネスで世の中をもっと面白く」、第2回は、なぜ今、アート思考が求められているのか、を語ってもらいます。

■新しい思考法として注目される「アート思考」

前回は、私自身が試行錯誤の末、たどり着いた「アート思考」の概略をご紹介しました。

実はここ1年くらいの間にアート思考や「アート×ビジネス」という言葉が急激に聞かれるようになっています。私自身もアート思考について発信し、トークイベントやビジネス界とアート界がよりオープンに対話する機会も増やしているのですが、それは「アート思考をもっと盛り上げたい」からではなく、むしろ逆で、アート思考が安易に「消費」されてしまうことへの危惧があるからです。

アート思考は、いまだ明確な定義はなく、メソッドも確立していません。ビジネス界で「ロジカル思考」や「デザイン思考」の限界が見えてきたなか、新しい思考法として同時多発的にさまざまな言説や手法が「アート思考」という名前で語られています。同時多発的に起こっていることは時代に求められている証左だともいえますが、中身が曖昧なままに「新しい救世主」として急激にもてはやされてしまうと、一過的なものとして消費され飽きられてしまう懸念があります。もしそうなると、それは翻ってアートそのものの価値をすらも毀損(きそん)してしまいかねません。

■「新しい価値」を模索し続けた日々

そもそもなぜ、今アート思考が求められているのでしょうか。

ここで少し、私自身のキャリアについてお話しさせてください。

私自身がアート思考という考えをもつようになったのは、何かで勉強したからとかいうのではなく、自分が長らく新規事業で血を吐くような失敗をしてきた結果でした。

前回書いた通り、私はもともと建築設計からアートの研究を経て、IT業界に移り新規事業の立ち上げを多く手がけてきました。実はもともとは理系でロジカル主義の人間です。

NTTドコモに在籍していた頃、モバイル端末を医療や健康管理に役立てるモバイルヘルスケア事業の立ち上げを担当しました。当時「モバイルヘルスケア」はちょっとしたバズワード(はやり言葉)となっていて、グーグルなど OS(基本ソフト)を供給する企業から携帯電話3キャリア、富士通やパナソニックといったメーカーまでが競ってこの領域を狙っていました。

そこにはもちろん大手がこぞって狙うだけの理由がありました。そもそも医療・ヘルスケア市場は数十兆円の巨大市場であり、医療費増大は社会課題です。つまり、ものすごく多くの課題やニーズがあるはずです。かつ、まだまだモバイルが活用されていませんでした。ドコモは携帯電話向けネット接続サービス「iモード」を立ち上げ、「着メロ」などを含めたデジタルコンテンツで大きな市場を創出した後で、同じことをヘルスケアの領域で起こせば爆発的に伸びるはずだ、と考えたわけです。

このとき事業立ち上げには5人ほどのメンバーが集められました。上司や先輩も優秀な人ばかりで、7割ほどがMBA(経営学修士)取得者で、私たちは日々たくさんのビジネスフレームワークを使い、理詰めで事業を考えました。

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最終更新:2/21(金) 10:28
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