ここから本文です

子が親の「老人ホームの入居金」を負担…贈与税は課税される?

2/24(月) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

老人ホームの入居金で争った、2つの事例

では、「通常の日常生活に必要な費用」とは、どのような範囲のことをいうのでしょうか。これについては有名な裁判が2つあります。まずひとつめが、国税不服審判所で争い、平成22年11月19日に裁決となった事例です。

平22.11.19裁決

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人G(以下「請求人G」という。)及び同J(以下「請求人J」といい、請求人Gと併せて「請求人ら」という。)が、被相続人の配偶者が介護付有料老人ホームへ入居する際に被相続人が支払った入居金は、被相続人からの配偶者に対する相続開始前3年以内の贈与であるとして相続税の課税価格に加算して申告した後、当該入居金の支払は、被相続人の配偶者に対する生活保持義務の履行であるから、贈与に当たらないとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該入居金の支払は贈与には当たらないが、本件入居金の一部が被相続人の配偶者に対する金銭債権であるとして相続税の更正処分をしたのに対し、請求人らが、同処分の取消しを求めた事案である。

[裁決]
被相続人が配偶者のために負担した介護付有料老人ホームの入居金は、相続税法第21条の3第1項第2号に規定する「扶養義務者相互間において生活費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」に該当するから、当該入居金は相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算する必要はないこちらの裁決は、ひと言でいうと、老人ホームの入居一時金は、通常の日常生活に必要な費用に該当する、つまり贈与税は課税しませんと判断されました。どのようなポイントがあったか、筆者なりに下記の通りまとめてみました。

[POINT]
・入居一時金945万円
・部屋の広さ15㎡
・入居時の妻は要介護4の認定を受けていた
・入居時、妻は自宅と80万円の預金しか持っていなかった
・施設は、通常の老人ホームの機能しかない施設であったこの5つのポイントを総合的に判断すると、入居一時金945万円は、扶養義務者間、つまり夫婦間で通常の日常生活に必要な費用の範囲だったというわけです。

もうひとつが、国税不服審判所で争い、平成23年6月10日に裁決となった事例です。

平成23年6月10日裁決

(1) 事案の概要

本件は、被相続人の妻である審査請求人(以下「請求人」という。)が申告した相続税について、原処分庁が、請求人及び被相続人が有料老人ホームに入居するに当たり、入居契約上請求人が支払うべき入居金の一部を被相続人が負担したことは、被相続人からの請求人に対するみなし贈与に該当するとして、当該負担額を相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、入居金は終身利用権の対価であり、終身利用権は一身専属権であるから相続税の課税対象にはならない等として、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

[裁決]
被相続人が配偶者のために負担した有料老人ホームの入居金は、贈与税の非課税財産に該当しないから、当該入居金は相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算する必要があるとした。こちらの事案では、社会通念上、適正な範囲と認められませんでした。こちらもどのようなポイントがあったか、筆者なりに下記の通りまとめてみました。

[POINT]
・入居一時金1億3370万円
・入居時から問題が発覚するまで、妻に介護は必要ない状態だった
・施設にはフィットネスクラブ、プール、エステなどの豪華な設備があったこのように、社会通念上、適正な範囲と認められたケースと、認められなかったケースの2つがあります。筆者が注目するのは、適正範囲と認められたケースです。税務調査で一度は「贈与税、追加で課税しますよ」とされています。その判断に不服のある納税者が訴えるという流れではありましたが、介護が必要で預金がないとしても贈与税の課税対象になると現場は判断した、ということです。

インターネットを見ていると、老人ホームの入居費用の相場は、350万~500万円くらいだそうです。これくらいであれば問題にはならないでしょう。しかし平成22年の事例では945万円で問題になっているので、これくらいの金額だと、夫が妻のために払うときはもちろん、子どもが親のために払ってあげるときは、注意が必要でしょう。

【動画/筆者が「親の老人ホーム入居金を負担する場合の贈与税」について詳しく解説】



橘慶太

円満相続税理士法人

橘 慶太

2/2ページ

最終更新:2/24(月) 9:00
幻冬舎ゴールドオンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事