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「桜」疑惑で下関市議が証言「ホテルと契約していない」

2/25(火) 12:31配信

週刊金曜日

昨年の「桜を見る会」前夜祭をめぐる安倍首相の「契約主体は参加者個人」との答弁について、前夜祭に参加した地元・下関市の複数の市議が、本誌の取材に対し、これを否定する証言をした。全国の弁護士による「追及する法律家の会」も結成され、首相の法的責任追及の声がさらに高まる。

 誰もが耳を疑った「主催は後援会だが、ホテルとの契約主体は参加者個人」との安倍晋三首相の答弁(1月31日・衆院予算委員会)。2019年4月12日夜に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれた「桜を見る会」前夜祭のことだ。

 この前夜祭は安倍晋三後援会の主催だが、会費5000円のやりとりをめぐって、その収支が政治資金収支報告書に記載がないため、「法違反ではないか」と野党議員から追及を受けた。これに対し安倍首相は「後援会主催」であることは認めたものの、ホテル側と前夜祭の契約をした「主体」は「参加者個人になる」と答弁したのだ。「契約主体」が安倍後援会であった場合、政治資金収支報告書への記載がなければ法違反に問われる可能性があるためだ。

 しかし、実際そんなことがありうるのか。

【「首相の人間性を疑う」】
「下関の人たちはみんな、あの首相答弁にびっくり仰天です。自分たちは(桜を見る会に)招待され、お呼ばれした側。後援会の案内を見て参加を申し込み、費用を支払って出かけて行っただけ。招待された人たちが個人個人でホテルと契約するはずがないじゃありませんか。『私たち、ホテルと契約なんかしていませんよ』と参加者の人は話しています」

 そう語るのは、下関市議会議員を20年以上務める現職の田辺よし子市議だ。昨年12月19日に衆院本館内で行なわれた「桜を見る会」追及本部第17回ヒアリングに参加し、「下関の人たちは首相の説明に、まったく納得していない」などと地元の状況を報告した。

 その田辺市議をして、今回の安倍首相の答弁については「追い詰められたらここまで言うのかと、人間性を疑う」と言わしめる。

 田辺市議は下関市議会(定員34人)の中の少数会派「市民連合」(3人)に所属。いわゆる「安倍派」でもなければ山口県第4選挙区にある自民党下関支部に所属しているわけでもないので、当然ながら、自身は「桜を見る会」にも「前夜祭」にも参加していない。

 では、実際に前夜祭に参加した地元の市議は今回の安倍首相の答弁についてどう思っているのか。首相の言うように「ホテルとの契約主体は参加者個人」というのは事実であったのかどうか。当事者への取材を試みた。

【契約や交渉「してません」】
 地元ではすでに「桜を見る会」については「箝口令」が敷かれているらしく、関係者の口は一様に重い。まして「桜を見る会」に参加した後援会員や自民党員であればなおさらガードは固い。

 その中で、「匿名」を条件に昨年の「桜を見る会」と「前夜祭」に参加したという2人の下関市議が電話取材に答えてくれた。

――安倍首相が「ホテルとの契約主体は参加者個人」と答弁しましたが、前夜祭に参加された際、あなたはホテル側と何らかの契約をしましたか?

 筆者の質問に対し、A市議はこう答えた。

「ホテル側とはなんの契約もしていない」

――会場の予約とか、出される飲食物の内容や会費の金額、欠席となった場合の負担割合などをめぐってホテル側からなにか説明を受けたり、交渉したりした事実はありますか?

「交渉もなにもしていませんよ。すべて後援会任せですから」

 同じ質問に対して、B市議はこう答えた。

「ホテルとは契約も交渉もしていません。みんなそうでしょ。安倍事務所に申し込んだんだから。申込書には『ホテルとの契約は各自で』などと書かれていませんし、そんなのは常識でしょう」

 その「常識」では考えられない安倍首相の答弁についてどう思うかと聞くと、B市議は「それはノーコメント」と答え、「ただ」としてこう続けた。

「事実を書いてもらうことが大事。だから、あなたの質問にお答えしたまで」

 A市議やB市議が特定されてしまうと差し障りがあるので匿名としたが、証言の信用性を担保するためにこれだけは明記しておく。自民党下関支部には安倍晋三衆議院議員と林芳正参議院議員、古田圭一衆議院議員の3人の国会議員が所属しているが、前述の市議のうち1人は安倍派、もう1人は林派である。

【全国の弁護士が決起】
「法の支配のもとで日々業務を行なっている法律家として、為政者の違法行為疑惑を前に座視するわけにはいかない。立憲主義と法の支配が回復するよう安倍首相の法的責任を追及していく」

 2月13日に東京・永田町の参議院議員会館内で開かれた「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成集会で、呼びかけ人を代表し泉澤章弁護士は結成の趣旨をそう述べた。1月半ばすぎから会結成が準備され、同日までに全国各地の弁護士70人が呼びかけ人に名を連ねた。当初の26人を合わせ呼びかけ人総数は100人近くに。

 結成集会では、先行して「『桜を見る会』を追及する弁護士の会・宮城」を発足させた小野寺義象弁護士、1月14日に安倍首相を「背任罪」の疑いで刑事告発した学者・弁護士グループの澤藤統一郎弁護士、長野県諏訪地域を中心にした「『桜』私物化!怒り満開 市民の会」の毛利正道弁護士がそれぞれ報告に立ったが、このうち問題の首相答弁について、小野寺弁護士はこう指摘した。

「収支報告をめぐりホテルニューオータニを引っ張り込み、あげく〈契約主体は参加者〉などと政治家が後援会員に責任転嫁するなど大問題だ。この論が破綻していることは明らかだが、そのように主張し続けるなら政治資金規正法の犯罪構成要件該当性の認定にとって、〈契約主体〉の確定が重要な争点になる」

 宮城や長野では稲田伸夫検事総長と松本光弘警察庁長官宛てに「徹底的捜査と刑事責任追及を求める署名」活動を展開している。

 集会には黒岩宇洋衆議院議員、山井和則衆議院議員、田村智子参議院議員ら「桜」追及本部メンバーも出席。「首相の法違反が問われている。法律家の方々と手を携え、徹底的に責任を追及し、法の支配を取り戻したい」などと述べた。「法律家の会」は今後、全国で賛同人を千人単位に増やし、3月をめどに刑事告発をめざす。

 今年の桜は例年より早く開花する見込みというが、列島各地の弁護士たちの「桜」疑惑への怒りは早くも“満開”になりつつある。  

(片岡伸行・記者、2020年2月21日号)

最終更新:2/25(火) 12:31
週刊金曜日

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