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出口治明が総覧! 新書大賞12年間のベスト・オブ・ベストは?

2/25(火) 17:08配信

中央公論

アフリカを知らずに未来は語れない(2008~11年)

 2008年に始まった「新書大賞」(https://www.chuko.co.jp/special/shinsho_award/)は、今回で13回目を迎えました。前回までに1(大賞)から20位までにランキングされた累計冊数は、254冊にのぼるそうです(複数冊が同票で20冊を超える年もあるため)。

「その中からベスト3を選んでほしい」というのが編集部からの要請でしたが、さすがに良書が揃っているので、絞り込むのはなかなか骨が折れます。そこで、まず各年のランキングからそれぞれ印象に残っている一冊を選び、その上で全体のベスト3を選んでみたいと思います。

 では2008年から。優れた作品が多くて選びにくいのですが、8位に入った『満州事変から日中戦争へ』(加藤陽子、岩波新書)が出色だと思います。

 いわゆる「戦後世界」の起点は、第二次世界大戦にあります。では日本にとって第二次世界大戦とは何かというと、1941年末の真珠湾攻撃を端緒とする太平洋戦争を指すというイメージが強いかもしれません。

 しかしすべての発端は、それより前の1931年に起きた満州事変にありました。そこから日中戦争が始まり、日本は引き返すことのできない道を歩み始めてしまったのです。そういう歴史認識を持つことの大切さを、同書は教えてくれます。

 2009年は、11位の『アフリカ・レポート』(松本仁一、岩波新書)が異彩を放っています。国連の推計によると、アフリカ大陸の人口は、30年後の2050年には25億人に倍増するそうです。これはアジア全体の人口の約半数、全世界の人口の4分の1に相当します。また2100年には40億人を超え、アジアとほぼ肩を並べて全人口の4割を占めると予測されています。つまり、アフリカが世界をリードする時代になるわけです。

 ところが、日本ではアフリカに関する知識・情報があまりにも希薄です。そのギャップを埋めるには、同書が最適でしょう。刊行から10年以上が経過していますが、今日でも読む価値は十分あると思います。

 2010年は、2位の『差別と日本人』(野中広務、辛淑玉、角川oneテーマ21)もとてもいい本ですが、4位の『戦後世界経済史』(猪木武徳、中公新書)が秀逸です。戦後世界の動向を経済の観点から幅広く理解しようと思うなら、これは必読書です。僕もこの本を読んで、何度も目から鱗が落ちました。ずば抜けて優れた本だと思います。
2011年は、大賞の『宇宙は何でできているのか』が文句なく面白い。最近では、地球上の生命の起源は宇宙から降り注いだ隕石にあるという説も有力になってきました。ではその宇宙はどうなっているのか、誰しも関心のあるテーマでしょう。

 同書は、難解なはずの最先端の宇宙論を、一般の読者にもわかるように解説しています。それも面白おかしく、宇宙や科学への興味を掻き立ててくれる。当時は大ベストセラーになりましたが、それも当然という気がします。

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最終更新:2/25(火) 17:08
中央公論

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