東京で五六年ぶりの夏季五輪が開催されるオリンピックイヤーの2020年、政界では、衆院選の時期をにらんで神経戦が展開されそうだ。
「ゆずは九年の花盛り。このゆずまでは責任を持って、皆さんとともに大きな花を日本に咲かせたい」
安倍首相(自民党総裁)は1月7日、自民党本部の仕事始めで「桃栗三年柿八年」のことわざを引き合いにあいさつし、21年9月までの党総裁任期を全うする考えを示した。
首相は今年12月、政権復帰から九年目に入る。昨年11月20日には、通算の首相在職日数が憲政史上最長となった。首相はこの日、今後の政策課題として、デフレ脱却、少子高齢化対策、戦後日本外交の総決算、憲法改正を列挙し、「チャレンジャーの気持ちで、令和の新しい時代をつくるための挑戦を続けていきたい」と語った。
一方、衆院議員任期は21年10月21日までで、すでに折り返し地点を過ぎている。自民党内では、首相がもう一度自らの手で衆院解散に踏み切るだろうという見方が強い。自民党幹部の一人は「争点は憲法改正だろう。政策課題は数多いが、首相の優先順位がもっとも高いのは憲法改正だ」と語る。自民党が衆院選で勝利することを前提に、任期延長論や四選論もくすぶっている。
自民党内では昨秋、首相が大型の19年度補正予算や20年度予算をqq編成し、年末年始の解散に打って出るとの見方が出ていた。しかし、臨時国会で「桜を見る会」問題が浮上し、統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件もあって、内閣支持率は低下し、解散論はしぼんでいった。
次の有力な解散時期として、夏の東京五輪・パラリンピック後の今秋という見方が浮上している。来年秋の任期満了が近づけば、「追い込まれ解散」となる懸念がある。首相が自らの求心力を保ったまま衆院を解散できるのは、「今年中がタイムリミット」(自民党閣僚経験者)というわけだ。
連立を組む公明党には、年内の解散を期待する声がある。公明党は、来年7月に任期満了を迎える東京都議選を重要視しており、支持団体の創価学会は全国的な応援態勢を組む。衆院解散が来年までずれ込んで都議選に近づけば、「組織が都議選のためにフル稼働できない」(幹部)という懸念があるためだ。
野党側でも、立憲民主、国民民主両党を中心とした合流の動きが表面化したのは、衆院選対策のためだ。昨夏の参院選は、全国に32ある改選定数一の「一人区」で野党は10勝にとどまったが、その後の埼玉、岩手両県知事選では野党系候補が勝利した。野党側は「野党が候補者を一本化して総力戦で挑めば、衆院選でも互角の戦いに持ち込める」(立民幹部)ともくろんでいる。解散論が沈静化したことで通常国会前の合流は実現しなかったが、衆院選が近づけば再び動き出しそうだ。
昨秋の臨時国会では、自民党が目指した国民投票法改正案の採決は見送られ、憲法に関連する審議は停滞ばかりが目立った。首相は閉会にあたっての記者会見で「決してたやすい道ではないが、必ずや私自身の手で成し遂げていきたい」と述べ、憲法改正を目指す決意を強調した。その上で、「国民の信を問うべき時が来たと考えれば、解散・総選挙を断行することに躊躇はない」として、タイミングをみて衆院解散に打って出る可能性を示唆した。通常国会でも野党の抵抗が予想される。自民党中堅は「首相が事態打開を狙って、国民の信を問うことは当然あるだろう」とみる。
政界では、「ポスト安倍」候補の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らの言動に注目が集まる。だがまず、首相が解散をめぐって、どのような政治日程を描くのかが焦点となる。首相の一挙手一投足から目が離せない一年になりそうだ。(洋)
(『中央公論』2020年3月号より)
最終更新:2/25(火) 17:08
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