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落合陽一×伊藤智彦(アニメ映画監督)「アニメ映画監督にも『椅子取りゲーム』がある?」【後編】

2/27(木) 6:10配信

週プレNEWS

『ソードアート・オンライン(以下、SAO)』、『僕だけがいない街』といった人気テレビアニメの監督を務め、劇場作品の監督デビュー作『劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(2017年)を大成功させ、そして昨秋には初のオリジナル長編映画『HELLO WORLD』でアニメファン層以外にも広く話題を呼んだ伊藤智彦(いとう・ともひこ)は、現代日本を代表する文化産業のひとつであるアニメーション業界で、いま最も注目される演出家のひとりだ。

【画像】『HELLO WORLD』に登場する「量子記憶装置アルタラ」

SFを得意ジャンルとする伊藤監督が、自身の作品における「大きな嘘」の表現の仕方を語った前編記事に続いて、後編では日本が誇るアニメ映画監督たちについて落合陽一(おちあい・よういち)と語り合う。

* * *

落合 先ほど話に出た『エヴァンゲリオン』って、フィクションの「壮大な嘘」がいっぱいありますけど、あれはあれで臨場感が出てますよね。伊藤監督の作品は嘘っぽいものを少なくしている印象がありますが、どこまでの嘘ならSFとしてグッとくるんでしょう?

伊藤 大きな嘘は一作品にひとつにしておいて、あとはなるべく確からしいことを重ねていったほうがいいと俺は思っています。あくまで肌感覚ですが、あまり嘘を重ねると白けてしまうのではないかと。

落合 ただ、逆に考証を詰めすぎるとフィクション性が失われることもありますよね。

伊藤 そうですね。アニメということもあるし、ぶっちゃけていえば、設定などはイメージがぶっ飛んでいればいるほどフィクションとしては健全だと思いますよ。

『SAO』の原作者である川原 礫(かわはら・れき)さんだって、単純に自分がこういうのが欲しいと思って描いたら、後にVRを開発している人から「あれ読んでました」と言われるような存在になっていたりするわけで。既存の技術はもちろん知識としては知っておきたいけれど、そこに囚われすぎると技術紹介になってしまいますから。

落合 ちなみに僕の研究室に入りたがる学生の中には、よく「テレビアニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズを観てました」みたいな人がいます。SFで描かれているようなことを実現したいというのが研究のモチベーションになるのでしょう。

ただ、特にテクノロジー関係の話題になると、このSNSの時代には、よくわからない専門家風の人が出てきてフィクション作品をディスり始めるじゃないですか。「おいおい、これ量子コンピュータを理解してないんじゃないかあ?」みたいな。

伊藤 そういう反応に対しては、「まあ映画なんで」「フィクションなんで」と。それだけですよ。



落合 なるほど。『HELLO WORLD』はポリゴンで描かれた3Dキャラクターが、量子記憶装置の作り出す世界観と合っていていいですね。あれ、モーションキャプチャーは使ったんですか?

伊藤 モーキャプはゼロです。アニメーターが自分で手で動きをつけています。たまに自分で動きを録画したものを参考にしながらやっていたようでしたが。なので、モーションキャプチャーではありがちな余分なキーフレームがなく、手書き感が出てると思います。

落合 そのままシナリオアドベンチャーゲームで出したら売れそうだなと思いながら観ていました。

伊藤 で、最後だけ作画になっているんです、実は。

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最終更新:2/27(木) 6:10
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