「企業が抱える課題」を図表1で整理しました。大きなテーマは健康経営と働き方改革の二つです。企業は様々なデータを保有しており、それぞれの課題解決にデータを活用して取り組んでいます。そのデータとEQ(感情)データを組み合わせることで、さらに有効な解決方法が生まれます。
健康経営には健康診断の代謝データとEQデータを組み合わせることで生活習慣病を予防することが考えられます。EQ開発で自己管理の意識が高まり、食管理や運動を促し、健康改善に好影響を及ぼします。それは、メンタルヘルス不調の予防にもつながります。
政府が推進する働き方改革の背景には、少子高齢化による生産労働人口の減少があります。これまでの日本社会の仕組みは、人口増を前提にしていました。人口増は経済の拡大をもたらします。しかし若者が減って高齢化が進む人口減少社会では、経済は衰退していきます。これまでの仕組みややり方を変え、衰退しないための新しい働き方が必要です。働き方改革においては人事データベースとEQを組み合わせることで、人事マネジメント分野で様々な課題を解決することが可能となります。
ある企業の営業部門で調査した結果、EQを発揮すると、会議時間、社内調整時間が25%短縮され、商談時間も同じく25%減り、それが営業訪問者数の増加につながり、受注率も向上しました。なぜ、EQ発揮によってこのようなプラス効果が生まれたのでしょうか?
部門長の分析によれば「EQを発揮すると相手の本音に近づく」でした。EQを学び、EQを開発し、EQを発揮すると、交渉の場で相手の気持ちを聞く行動が増えたそうです。
実務レベルの交渉でよくあるのが「部門に持ち返って、上司と相談して、回答します。では来週……」ですが、これでは相手が見えておらず、来週に再訪しても無意味に終わる可能性が高いのです。しかしEQを発揮すると相手の気持ちが見えてきます。
たとえば「相手の実務担当者はこの交渉に関して、どう感じているのか、どう思っているのか」、「この交渉を受けるのか、受けないのか」、「受けたいのか、受けたくないのか」。実務担当の本音がよくわからなければ、「上司を説得できるのか、できないのか」、「上司の予想される反応は、好意的? 否定的? それはなぜ?」、「無理な理由は、物理的な問題? それとも気持ちの問題?」と、聞いてみればよいのです。
EQを使っていると相手のこと(主に気持ち)が気になるので、よく質問するそうです。「受ける見通しが立たない、受ける気がない」と感じれば、次の交渉先を見つける行動に入ることまで予測を立てて交渉をしていたそうです。
これらの行動にはEQ能力4ブランチすべてが使われています。「なぜEQを発揮すると、相手の本音に近づくのか」を整理してみましょう。
EQを学び、EQを発揮すると、まず自分の気持ちに意識が向きます。自分の気持ちが分かると、相手の気持ちが気になります。自分が楽しくなると、楽しくなさそうな人に自然に「どうしたの?」と声をかけるようになります。自分が楽しくないと「たのしい?」と相手の気持ちを聞くようになります。相手の気持ちが分かると、自分の気持ちを分かろうとしている人の気持ちに応えようとします。
これらはわたしたちの自然なこころの動きです。わたしたちは自分の気持ちを分かろうとする人の気持ちを分かろうとします。自分の気持ちを分かろうとしない人の気持ちには応えようとしません。
共感はお互いの気持ちを分かろうとして生まれる感情です。共感すると、自分から自分のことを話し始め、それを受けて相手もこころを開きます。そして本音を話し始めます。このループの繰り返しで、お互いの気持ちが近づき、本音に迫っていくのです(次ページの図表2)。
ところが商談場面でもEQを使わず、相手の気持ちを無視して進むことも少なくありません。たとえば以前に当社に来られた営業さんのプレゼンを聞く機会がありました。プレゼン開始後間もなく、わたしは見積もりページを見ました。それを見た営業さん、「それでは1ページからご説明します」と、わたしのほうを軽くにらみました。金額が気になるわたしの気持ちは無視されました。これでは商談時間の短縮は期待できません。
わたしはこころの中で叫びました。「ここは金額から入るっしょ! 商談なんだから」
最終更新:3/2(月) 13:36
日経BizGate
































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