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鈴木直道・北海道知事 破綻した夕張から叩き上げた“38歳の男”は、次に何を見据えるのか? /広野真嗣――文藝春秋特選記事【全文公開】

3/4(水) 6:00配信 有料

文春オンライン

鈴木直道氏

 札幌の空に初雪が舞った11月7日の北海道本庁舎3階の会議室は、外とは対照的に熱気でムッとした。

 50人もの報道陣が詰めかける中、東京五輪のマラソンと競歩の開催地変更の決定を伝えるため入ってきたのは、82歳の森喜朗大会組織委員会会長。全国最年少38歳の知事鈴木直道がこれを迎える。終始、神経質な表情を崩さなかった。

「成功にむけた気運に水を差すような状況にしてはならない。森会長はじめ組織委員会には、汗をかいていただきたい」

 きっかけはドーハ世界陸上の競歩や女子マラソンで棄権が続出したことだ。ただ、唐突な変更を“外された”と受け取った東京都知事小池百合子が「涼しい所なら北方領土でやったら」と言い放ったことで、状況はささくれだった。

 元凶は、ドイツ人の国際オリンピック委員会(IOC)会長トーマス・バッハが唐突に打ち出した“愛のない決定プロセス”にある。

 確かに、移転決定は選手の安全を高めるには合理的な判断ではあった。だが10月16日の方針発表時点で、すでに開会式まで282日。決定権限で押し切る説明は、人生をかけてきた選手やファン、あるいは暑さ対策に心血を注いできた東京都や納税者たちの心に寄り添うものではなく、振り回された分だけ、報道内容も荒れた。

 抗議が道庁や札幌市に相次ぐ一方、下敷きとなる北海道マラソンのコースの一部についてテレビのワイドショーが「景色も応援する人もいない。実況泣かせ」と伝えると、「#札幌dis」とハッシュタグをつけて反論するネット投稿も殺到した。

 コース設計や警備体制の確立など実務上の課題もあるが、対立イメージによる気運の減退は、大会全体に影響するより大きなリスクとなる。気を抜けない局面での会談だった。

「汗をかいて」という言葉を用いて不協和音の芽を取り除くこと、経費負担を札幌市や北海道につけ回さないことを求めた鈴木は、森から「迷惑をかけないようにしたい」との答えを引き出した。「大御所に生意気」と批判も出たが、すぐに消えた。 本文:9,230文字 写真:5枚 猪瀬直樹氏 (c)文藝春秋 夕張市長時代 (c)AFLO 「汗をかく」ことを評価してきた菅義偉官房長官 (c)文藝春秋 小泉進次郎氏 (c)文藝春秋

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広野 真嗣/文藝春秋 2020年1月号

最終更新:3/9(月) 11:13
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