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生きる力を育む教育で校則・宿題・定期テストを廃止

3/6(金) 12:00配信

日経DUAL

AIなどの技術革新や人口減少時代の到来、グローバル化の進展によって、「会社勤めをする」「結婚して子どもを持つ」といった従来のライフスタイルや価値観は、急激に変わりつつあります。わが子に最も身に付けてほしいのは「不確実な未来を生き抜く力」ではないでしょうか。

千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長は、まさに子どもたちの生きる力を培うため、教育改革を推し進めています。前編に続いて、2019年11に工藤校長が登壇したパネルディスカッションの内容と、著書『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』から、頭髪・服装指導の廃止、宿題や定期テスト廃止などに込められた思いをご紹介します。

●「自律と尊重」突き詰めたら宿題廃止にいきついた

 麹町中の教育目標は「自律、尊重、創造」です。工藤校長は、これらを掲げる理由を以下のように説明します。

 「親は子どもより先にいなくなりますが、わが子には世の中を悲観することなく、自分の判断で行動し、幸せになってほしい。つまり自律です。そして社会で生きる以上、価値観の違う人がたくさんいることを受け止め、彼らを尊重することを学んでほしい。この2つは親の普遍的な願いでしょう。そして、自律と尊重が成り立った上に初めて、創造する力が生まれるのです」

 「教育目標」は単なるお飾りではありません。工藤校長は、目標を学校生活に落とし込んだ結果、宿題が「やらされる教育」であり、自律的に学ぶ意欲を奪っていると考えました。

 「1日は24時間しかないのに、学校と塾で勉強して宿題までしなければいけないのでは、多様性も生まれづらい。私たちは生徒一人ひとりの個性や能力を伸ばすのに最も適した学びを提供し、多様な人材を生み出す社会をつくらなければいけません」

失敗する場が必要 経営権を生徒に委ねる

 校則や頭髪・服装指導も、多くは大人による価値観の押し付けにすぎないと、工藤校長は指摘します。服装や髪形の違いを騒ぎ立て、より本質的で重要な事柄、例えば人権に関することなどを教えられないのは「本末転倒」だとの考えが根底にはあります。

 「麹町中では学校の『経営権』をこどもたちに委ね、保護者にも一部を担ってもらっています。人のせいにせず自分たちで、時には対立も乗り越えて、答えを出してもらうのです」

 当事者意識を持つよう訓練を重ねた生徒たちは「最も重要な目標は何か」を常に意識できるようになると、工藤校長は話します。このため「『今の自分たちは手段にこだわっている。目標に立ち戻ろう』と議論を修正し、合意形成ができるようになります」。

 もちろん、議論がいつもうまくいくとは限りません。工藤校長は「子どもたちが失敗できる場所もなければいけない」と強調します。

 「例えば文化祭でも、子どもたちだけではうまくいかないことがたくさんある。それを経験させて『失敗は悪いことではない』と教え続けることが大事なのです。教員があれこれ指導して素晴らしい合唱を聞かせても、子どもたちには何も積み上がりません」

●従順でテスト100点の子が優秀?

 麹町中は東京の中心地にあり、私立の中学受験経験者も多いといいます。「もともとある程度『優秀な』生徒たちだから、自主性に任せていられるのだ」と考える人もいるでしょう。そして、ここでいう「優秀」とは、恐らく「先生の言うことをよく聞く」「勉強ができる」生徒を指しています。

 しかし工藤校長は、大人の言いつけに従う「一見おとなしい子」は、「うまくいかないことがあったとき、自分で解決しない子」に育ってしまう恐れがあると、著書で指摘しています。学力の判断がペーパーテストに偏っていることにも、疑問を呈します。

 「自律した子どもを育てるはずなのに、なぜか学力が重視され、さらに学力のごく一部にすぎないペーパーテストで評価する。生徒たちは暗記さえできれば、ある程度上位の大学に入学できてしまう。これでは、生きる力を高めるという目標は失われてしまいます」

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最終更新:3/6(金) 12:00
日経DUAL

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