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ドラえもん『週刊少年サンデー』ジャックに見る、漫画雑誌の生き残り戦略

3/12(木) 14:11配信

リアルサウンド

■小学館あげてのドラえもん50周年企画

 現在、藤子・F・不二雄の『ドラえもん』の連載開始50周年を記念して、小学館の雑誌50誌の表紙にドラえもんが登場する「ドラえもん50周年 表紙ジャック」という企画が展開中だ。当然、3月11日に発売された同社を代表する漫画雑誌である『週刊少年サンデー15号』の表紙にも、ドラえもんが登場した。また、同じ号では表紙だけでなく、連載中の18作品のどこかにドラえもんが隠れている「シークレットドラえもんをさがせ!」というコラボ企画や、大長編シリーズの第1作目、『ドラえもん のび太の恐竜』の元になった26ページの短編が45年ぶりに再掲載(注・初出誌は本誌ではなく増刊号だった)されるなど、雑誌全体が『ドラえもん』の50周年を祝う楽しい作りになっている。

 ちなみに『のび太の恐竜』とは、(国民的作品ゆえご存じの方も多いとは思うが)主人公のひとりであるのび太が、現代に甦らせたフタバスズキリュウの赤ちゃん「ピー助」を育てる心あたたまる物語である。映画も大ヒットした「大長編」では、未来の恐竜ハンターたちとの戦いを交えた派手な展開を見せていくが、その原型である短編では、大きな体に育ったピー助をのび太とドラえもんが、一億年前の世界に還すまでのエピソードが丁寧に描かれていく。その別れの場面では、事実上の『ドラえもん』の最終回ともいわれる「さようなら、ドラえもん」(てんとう虫コミックス版第6巻収録)同様、のび太のある種の「成長」が描かれるが、そのまま泣ける話では終わらせずに、短編漫画らしい“お約束”のギャグでオチをつけているあたりは、さすが名匠、藤子・F・不二雄といったところだろうか。

 さて、この短編『のび太の恐竜』を再掲載した『少年サンデー』がどれくらい売れるのかは、これを書いている現時点ではまだ予想もつかないが(少なくとも発売日においてそれなりに注目を集めてはいる)、最近似たような、つまり、何か話題性のある短編作品を掲載した漫画雑誌が売れたというケースは少なくない気がする。記憶に新しいところでは、プロジェクト「TEZUKA2020」(「手塚治虫AI」といったほうがわかりやすいだろうか)による『ぱいどん』の「前編」が掲載された『モーニングNo.13』や、『DEATH NOTE』(原作・大場つぐみ/作画・小畑健)の12年ぶりの「新作」が掲載された『ジャンプスクエア3月号』がかなり話題になった。また、およそ1年前の話になるが、矢作俊彦と大友克洋による『気分はもう戦争3(だったかも知れない)』が掲載予定の『漫画アクションNO.9』が売り切れるのを恐れて発売前に予約した、という漫画ファンも少なくなかったと聞く。


■“漫画作品そのもの”で勝負

 これは「漫画雑誌が売れなくなった」といわれて久しい昨今、かなり明るい話題の数々だといえるし、一時期マニア系の雑誌で流行った「フィギュアの付録をつけて本誌の売り上げを伸ばす」というような戦略とも違って、あくまでも“漫画作品そのもの”で勝負しているところが潔いと思う。もちろん、こうした1回限りの短編目当てで雑誌を購入した読者が「次号」も手に取るかどうかは疑問が残るところだし、現在の漫画シーンの主流が単行本の売れる長編の連載作だということは重々承知している。だが、それでも手を替え品を替え、長編の連載作の強化と併行して、単発でもいいからいろんな話題性のある企画を立て続けることでしか、これから先の漫画雑誌が生き残る道はないといってもいいのではないだろうか。

島田一志

最終更新:3/12(木) 14:11
リアルサウンド

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