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最高裁が親告罪だったころの「強制わいせつ」も“告訴なし”で起訴できると判断した意味

3/16(月) 6:01配信

デイリー新潮

 かつて強姦などの性犯罪は「親告罪」として被害者の女性や身内が刑事告訴しなければ起訴されず、女性も世間体などから告訴せずに示談など金を払って済まされることも多かった。しかし、2017年7月から施行された改正刑法で、客観的に事実関係が固まれば告訴がなくとも殺人などと同じように起訴されるようになった。

 一般的には、改正後の法律を、改正前の事件に遡及して処断することはできない。憲法で明確に禁じられている。ところがこの改正刑法は「附則」の2条2項として「改正前の事件でも告訴なしに起訴できる」となっている。

 この「附則」について「憲法違反ではないか?」と問題提起された性犯罪事案で、このたび最高裁で初めて判断が出されると聞き、傍聴に行ってみた。

「筆記具とノート以外は一切持ち込めません」。3月10日、雨模様の昼下がり、筆者は厳重な荷物チェックを経て最高裁第三小法廷の傍聴席に座った。傍聴者は少なかったが若者が多く驚いた。後で聞けば事件関係者ではなく司法研修生だったようだ。

 午後1時半、宮崎裕子裁判長が4人の男性裁判官を従えて入廷した。傍聴席の人たちも起立・礼をする。(事前に職員に求められている)。着座した同裁判長は被告人のいない法廷で「主文。本件上告を棄却する」と言い渡し、1分ほど理由(後述)を述べた後、くるりと背を向けて法廷を去った。

 通常の裁判取材では、閉廷すればフリーランスの筆者も新聞記者たちと当事者や弁護人などの関係者を追うのだが、最高裁では法廷の出入りが自由な司法記者会の記者と違い、筆者は一般傍聴人として番号札を持たされて職員の指示があるまで勝手に退廷もできない。被告弁護人の奥村徹弁護士(大阪弁護士会)は出て行ってしまい、焦ったが雨の中を走り何とか掴まえ、説明していただいた。

 実は今回、審理された事件の被害者は女性ではない。奈良市在住の三十代の男性H被告が2016年にやらかした、少年に対しての文字にするのも憚られる行為を自ら撮影し仲間に配信したという犯罪で被害者は少年だ。「強制わいせつ罪」「児童買春」などで起訴され、2018年に広島地裁で懲役3年、執行猶予(保護観察付)5年の判決となり控訴も棄却され上告していた。

「よく猶予がついたな」と思うほどのおぞましさだが、奥村氏によれば事実関係は争いようもなく、弁護側は上告に際し敢えて「違憲論」にもって行った。H被告の犯罪行為は改正される前年だった。

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最終更新:3/16(月) 17:45
デイリー新潮

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