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日本経済新聞社が進めるデジタル化とグローバル化

3/21(土) 16:15配信

創

スマホへの対応強化増加続くデジタル購読数

 国内初の本格的な有料電子新聞としてスタートした「日本経済新聞 電子版」。女性や若者層を取り込みながら、順調に購読数を伸ばしてきた。創刊10周年を迎える2020年を「第二の創刊」と位置づけ、コンテンツ強化のほか、人工知能(AI)や仮想現実(VR)といった新しいテクノロジーを活用した「次世代型」への移行を進める。目標とする有料購読数100万突破に向け、準備万端だ。
 まずは日経電子版のこの1年間の動静を確認しておきたい。話を聞いたのは、デジタル事業デジタル編成ユニットの飯田展久ユニット長だ。
「毎年、1月1日時点のデジタル購読数を発表していますが、ここには日経電子版のほかに専門紙の日経産業新聞、日経MJ、それに日経ヴェリタスの紙面ビューアー数を含みます。今年の1月1日時点では74万3669で、昨年同時期の65万1702から約9万増えました。昨年様々な施策をした効果が出ました」
 購読数増につながった施策とは何か。飯田ユニット長が挙げるのが「スマホ経由で直接購読申し込みを可能にしたこと」だという。
「実は紙と電子版のセット『Wプラン』の契約数は20万程度しかありません。電子版のスタート以来、紙の購読料にプラス1000円で電子版が読めると宣伝してきましたが、今では新規入会者のほとんどが電子版のみです。そこで、iPhoneなどを使っている人は、アプリからワンタッチで有料会員になれる手軽な方式にしました。iPhoneのユーザーは日本では非常に多いうえに、日経の読者とうまくマッチングしたのでしょう。サービスのデジタル化で、電子版のみの購読者が増えているのだと思います」
 電子版をスマホで読む人と、パソコン(PC)で読む人との比率が逆転したのは17年のこと。その後もスマホで読む人の数は増え続けている。
「直近の電子版のアクセス数を見ると、スマホ・タブレット経由はおおむね7割で、PCは3割です。当初は、PCの画面をいかに見やすくするかという観点からサービス開発をしていましたが、今はいかにスマホでPCと同じような表現をできるかに、力を入れています。
 もちろんPCの方が画面が大きいし、表現の仕方にも自由度があるのですが、それと同程度のことをスマホでも表現できるようにしたい。スマホでしか見ないユーザーが増えているので、できるだけスマホの中でグラフィックやデータを動かせるよう開発を進めています」
 日経電子版の新規読者の開拓で重点を置くのが、女性と地方都市の在住者だ。ここ数年、女性、地方をターゲットにしたプロモーションを増やしてきた。
「男女比では、女性の比率が上昇しています。昨年は17%近くまで上昇し、無料会員を含めると21%に達します。背景には働く女性が増えていることなどがあると思います」
 一方、地方についてはどうか。
「経済新聞という性格上、紙も同じですが、相変わらず大都市圏に集中しています。有料・無料会員合計で73%が関東と近畿圏で、有料会員に限ると81%に達します。地方開拓は課題ですが、実際にはなかなか難しい。デジタルの浸透度を考えれば、どうしても大都市と地方とで差があります。
 ただ、開拓の余地はあります。その時に地方紙とどう組めるかといったことを考えたりもします。印刷拠点と販売店網を持っていることが今まで日本の新聞社のメリットでしたが、今では逆にデジタルに踏み込めない理由になっています。その点、日経は両者とのしがらみが相対的に少ないことがデジタルにウイングを広げられる最大の要因かもしれません」
 岡田直敏社長が標榜してきた「テクノロジーメディアへの脱皮」は急ピッチで進みつつある。紙の新聞が主要な収益源であることに変わりはないが、徐々に構造変化が進み始めている。世界に目を向けると、紙からデジタルへと経営の軸足を移す動きが加速している。米新聞大手のニューヨーク・タイムズの電子版の有料会員数は300万を突破し、デジタルシフトが進む。
「紙とデジタルの数字の差がこれだけ開くと経営の考え方、編集の仕方がデジタル中心になります。編集ではデジタルで表現したものを紙に置き換えて載せるということが徹底されることになります」
 日経は重要なニュースや解説記事を、紙の新聞の配達を待たずに電子版で配信するデジタルファーストの体制をいち早く構築した。昨年から編集局にニュース・エディターという役職を導入。電子版と紙面の両方においてニュースの出し方をコントロールする体制を整えた。ニューヨークの米州総局にもニュース・エディターを配置したことで24時間編集体制を構築し、海外で発生した出来事は24時間途切れることなく、電子版に掲載する仕組みが完成した。紙面は最終版の14版まで起版することなく、12版で止めることが増えたという。
「電子版が最も読まれるのは通勤の時間帯です。お昼休み、マーケットが閉まった後、夕方から夜にかけても読まれます。読者が多いタイミングに効果的に記事を出していきますので、特ダネは翌日の朝刊まで待たない。平日夕方にイブニングスクープとして電子版に掲載します。夜遅くまで紙面を作ることが減り、午後11時には仕事が終わることから、編集局の働き方改革にもつながりました」

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最終更新:3/21(土) 16:15

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