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ミイラ「アイスマン」 最後の旅路はアルプス壮絶登山

3/21(土) 10:22配信

NIKKEI STYLE

 アルプスの氷河で見つかり、「エッツィ」の愛称で知られる有名な男性のミイラ「アイスマン」。負傷し、おそらく追われていたアイスマンは、アルプスの高山で、背中を矢で射られて死亡した。

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 それから約5300年、考古学者たちは今も、彼の死の謎を解明しようと取り組んでいる。このほどアイスマンの発見現場から採取されたコケの分析が行われ、最後の登山の詳細が明らかになった。論文は2019年10月30日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された。

■これまでにわかっていること
 エッツィは1991年、エッツタール・アルプスを歩いていたハイカーが、イタリアとオーストリアの国境付近で発見した。遺体は凍結し、自然にミイラ化していた。エッツィは、皮膚に60個以上の入れ墨があり、ヒツジやヤギの皮を縫い合わせて作られた革のコートを着ていた。


 研究者らは近年、位置がわからなくなっていたエッツィの胃も発見。内容物の分析によって、エッツィの最後の食事が、乾燥させたアイベックス(アルプス産のヤギ)やシカの肉とヒトツブコムギであったこと、そして、食事からわずか1時間後に殺害されたことが判明した。また、エッツィが40代の男性で、胃痛に苦しみ、右手の親指と人差し指の間に骨まで達するほど深い傷を負って手当をしていたこともわかっている。

 科学者たちはこれまでに、エッツィのミイラ化した遺体の内部と周囲から、75種類以上のコケ植物を同定している。今回、この小さな植物から、アイスマンの壮絶な最後の足取りが詳しく明らかになった。

 アイスマンの殺害現場は標高3210メートルのティーゼン峠にある。今回の論文によると、遺体から見つかったコケ植物の約70%はこの場所に自生せず、標高の低いエッツタール・アルプスの南部に自生するものが多いという。また、コケの分布から、エッツィが最後に2日間にわたって2000メートル以上の標高差を登り下りしていたこともわかった。

■コケの謎
 論文の著者で英グラスゴー大学名誉教授である植物考古学者のジェームズ・ディクソン氏は、エッツィの発見場所から見つかった有機物のサンプルを1994年に受け取って以来、エッツィの研究を続けている。氏は、その中にヒラゴケの一種Neckera complanataを見つけて、すぐに強い興味を持ったと言う。この種は、歴史的にボートや丸太小屋の隙間を埋めるのに利用されてきたコケだ。

 現場では、ヒラゴケは比較的大量に発見されていて、その多くはエッツィの服に付着していた。エッツィはこのコケを何かの道具として持ち歩いていたのかもしれないが、その目的はまだ明らかになっていない。防寒用だろうか、それともトイレットペーパーとして? どちらにしてもヒラゴケは標高が低いところにしか自生していないため、エッツィの最後の足取りを解き明かす手がかりとして役立った。

「アルプスのこれほど標高が高いところで殺害されたとわかったときは、きわめて異例なことだと思いました」とイタリア、ユーラック・リサーチのミイラ研究所でエッツィの研究チームを率いる人類学者のアルバート・ジンク氏は言う。氏は今回の研究には関わっていない。「彼がなぜそんな場所にいたのか、誰も説明できませんでした」

 エッツィの消化管には、彼が最後に口にした食物だけでなく、食事をした環境にあった微量の花粉も残っていた。オーストリア、インスブルック大学の植物考古学者で、今回の論文の共著者であるクラウス・エッグル氏は、2007年に発表した研究で、エッツィの最後の旅路を大まかに示した。

 エッツィの直腸付近から得られたサンプルには、マツとトウヒの花粉がわずかに含まれていた。これは、エッツィが死の約33時間前には、森林限界である標高2500メートル近くの森にいたことを意味する。

 一方で、エッツィの結腸の真ん中のあたりには、標高の低いところの森にしか生えないアサダ属(カバノキ科の高木)などの樹木の花粉が含まれていた。つまり、死の9~12時間前には、標高1200メートル以下まで下りていたということだ。もしかすると谷底まで下りていたのかもしれない。

 花粉が示唆するところによると、エッツィはその後再び山を登りはじめ、亜高山帯の針葉樹林で最後の食事をし、そこからさらに山を登ってティーゼン峠で殺害されたことになる。

 しかし、エッツィが最後に斜面を下りたときに、南(現在のイタリア方面)に向かったのか、北(オーストリア方面)に向かったのかは不明だった。岩だらけの地形であり、エッツィの死亡現場に到達できるルートは少ない。

「彼がどこに行ったのか、本当にわからなかったのです」とエッグル氏は言う。

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最終更新:3/21(土) 10:22
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