「きちんとして見える」「信頼される」は仕事服で外せないポイントです。でも、その上で自分の個性も上手に取り入れることができたら、もっと前向きに仕事に臨めると思いませんか? 好感度が大切なアナウンサーでありながら、自分らしいスタイルで「おしゃれ番長」の異名も取る古谷有美さんに、そのコーディネートのコツを聞きました。
【関連画像】「両親ともに服飾関係の仕事をしていたので、幼少期から『着たいものは自分で選ぶ』ことが当たり前になっていました」(古谷さん)
●ピンク色のブラウスが「よろい」だった
小さなリボンが付いたベビーピンクのシフォンブラウスに、主張しない黒のスカート。新人のアナウンサーとして初めてテレビ出演する仕事を担当した日、用意された衣装のことを古谷さんは今でも鮮明に覚えています。
「ある種のカルチャーショックでした。子どもの頃って、『女の子はピンク、男の子はブルー』みたいなステレオタイプが強かったじゃないですか。私は『好きな色を着ればいいじゃない』って思っていた変わり者タイプだったので、大人になってからもピンクにはどこか苦手意識があって。これまでの人生では無縁だった服に仕事でほぼ初めて袖を通すことになり、『あ、女子アナに求められるのってこういう感じなのかなあ?』って当時は感じました」
近年は多様になってきた印象もありますが、女性アナウンサーの「仕事服」といえば、淡い色味のアンサンブルや、控えめでエレガントな内巻きワンカールの髪形など、「ザ・コンサバ」のスタイルが思い浮かびます。古谷さんが入社直後に配属されたニュース番組では当時、視聴者の好感度を意識した装いのコンセプトが明確に設けられていたといいます。
「彼氏のお母様に挨拶に行ったときに、好感を持たれるようなスタイルで――。番組側から担当スタイリストに、そう伝えられていると聞いたことがあります。それが嫌だということはありませんでしたが、私自身はそういう視点で服を選んだり買い物をしたりしたことが全くなかったので、戸惑ったのは事実です」
アナウンサーの仕事は一般的には華やかな面が注目されがちですが、情報を分かりやすく視聴者へ伝えることはもちろん、その時々の状況に合わせて臨機応変に対応しながら現場全体の進行をしていく、高度なスキルが求められます。20代の頃は経験も足りず、目の前のタスクを着実にこなすことで精いっぱい。キャリアを積む中で「迷子」のような気持ちになった時期もあったといいます。
「自信がなかったからこそ、ザ・コンサバな洋服をまとうことで『これで少しはアナウンサーらしく見えるよね?』と自分自身を守っていた部分がありました。自分らしくない洋服が『よろい』のような役割を果たしていた感じ。プライベートでもその感覚を引きずってしまい、どんな洋服が着たかったのか分からなくなり、大好きだった買い物が楽しくなくなってしまったこともありました」
●服装もコミュニケーション
そんな心境が、少しずつ変化していったのが20代後半に差し掛かる頃。担当番組が変わり、外へ取材に出掛ける頻度が少なくなったのをきっかけに、「自分らしい」と思える装いに少しずつトライするようになったといいます。
「カジュアルな素材や、個性的なデザインのアイテムをポイントで身に着けてみたんです。初めは『怒られるかな……』と心配したのですが、意外にも同僚や先輩の反応はポジティブで。もちろん『OKなラインはどこか』を見極めるバランス感覚は持っていないといけませんが、空気を読み過ぎていた部分もあったのだな、と。『私はこういうスタイルが好きです』と表明してみて、周囲はどうリアクションするのか。NGならば注意されるはずだし、服装を通してコミュニケーションを取ればいいと思うようになりました」
●よろいがベールに変わるとき
テレビの世界では、出演者への信頼や好感度が番組の成功を左右することもあります。でも、「仕事は人に付く」というのは、他の業界や職種においてもよく言われること。確かなスキルや経験はビジネスシーンで当然ながら重要視される一方で、立ち居振る舞いや声、表情、そして装いも、「その人らしさ」を構成する要素の1つになるのです。
「そのすべてを無理やりに頑張ろうとしたら息切れしてしまいますが、私はおしゃれが好きだから。ポジティブに強みとしてとらえてもいいんじゃないかと思えるようになったんです。そうしたら仕事服は、『自信のない自分を守るよろい』から『私らしさを解放するベール』に変わりました。20代の数年間でキャリアを積んで、スキルの部分でも少しずつ成長を実感できるようになっていたことも、心境の変化を後押ししたと思います」
最終更新:3/23(月) 11:07
日経doors































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