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働き方改革は、「自分らしく働く権利」のために vol.2

3/25(水) 8:02配信

Meiji.net

働き方改革は、「自分らしく働く権利」のために vol.2

清野 幾久子(明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授)

この4月から、「働き方改革関連法」が順次施行されています。この関連法に批判や懸念もありますが、一方で長時間労働が是正されたり、多様な働き方が認められることに期待が寄せられていることも事実です。少子高齢化により日本社会が変革期を迎えているいま、この「働き方改革」は、憲法27条の労働権の再構成、再解釈に関わってくるといいます。

◇長時間労働の是正は最も必要なこと

今回の「働き方改革」には、「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という3つの柱があります。

まず、長時間労働の是正は、最も必要なことだと思います。今回初めて100時間越えの場合の罰則が法定されました。今回の働き方改革の重点項目です。実は今まで、労働基準法では残業時間の上限が定められていませんでした。それは、労使の合意(労使協定)で取り決めることになっていたのです。

労使の合意で決められていた、ということからすると、企業側からのみならず、働く側も、長時間労働を希望していたのでその合意がなされていた、ということになります。それは、残業手当の問題もあったと思います。ここに、長時間労働がなぜ今まで是正されなかったのか、ということの理由の一つがあります。

このことの意味は重要です。働き方についての「考え方」にかかわることだからです。「良い労働環境で働き続ける権利」の観点からすると、長時間労働良し、の考え方は変える必要にせまられているといえるでしょう。一方で残業代がなくなる収入減も心配ですが、そこには工夫も必要でしょう。「日本は過労死大国」という汚名を返上するためにも、AIやITなどを積極的に活用して生産効率を上げて労働時間を減らし、手当よりも基本給を上げていくことを労使ともに協議して考えるべき時期です。そうしていきながら、長時間働くことを良しとする風土を変えることが必要です。

高度経済成長期は、「夫は外で働き、妻は家で家事」という片働き社会でした。男女ともに働いて生きていく、ということを前提とすれば、現在ではこの原則は幻影であり、もはや通用しなってきています。例えば、いま、独身で、若くて体力もあり、仕事が充実していて、何時間でもいくらでも働きたいという人がいたとしても、その人は、結婚して家庭をもっても、そのスタイルで働き続けることができるでしょうか。子どもが生まれたら、自分が年をとったら、自分が病気になったら、あるいは、配偶者や子どもが病気になったら、それでも、長時間労働ができるでしょうか。

長時間労働は、「だれか家に人がいる」、家に自分を支えてくれる人がいる働き方です。現実にはそのような家庭はわずかでしょう。そして、そのだれかの働く権利や働くことによる自己実現はどこにいってしまうのでしょうか。長時間労働の是正は、この「だれか」のことも考え、すべての人にとって働き続けられる環境をつくる、という観点で捉えることが重要なのです。

また、国会でも問題になった高度プロフェッショナル制度は、やはり、人間らしく持続的に働くという観点からすると、制度として厳しいのではないかと考えます。「選ぶ自由」があるとしても、会社から高プロ契約を打診されて拒否することは、雇われている身としては難しいでしょう。

そして、会社から高プロと認められたとなれば、仕事の質を上げ、成果を上げるために、長時間労働に歯止めがかからなくなる恐れがあります。1075万円以上の年収が条件ですが、それとひきかえの歯止めなき労働。健康を守るためにも、ある程度、一定の時間内で働くことが必要です。

また、現在は適用される業種が5つに限定されていますが、所轄大臣の出す省令で業種が拡大されていく可能性があることも懸念されます。

※取材日:2019年1月

次回:みんなにとって働き続けられる職場環境づくりが勤労の権利の充実に繋がる(3月26日8時公開予定)

清野 幾久子(明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授)

最終更新:3/25(水) 8:02
Meiji.net

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