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英国で学んだ異色の“育成”研究者。データが示す昇格選手の条件とは?

3/25(水) 19:49配信

footballista

異色の研究者・後藤平太氏インタビュー

現在プレミアリーグのすべてのクラブがスポーツ科学部門を置いているように、サッカー界で重用されつつある科学者だが、日本にも「育成の定量分析」を試みる研究者がいることをご存じだろうか。イングランドでプロクラブのアカデミーを指導しながら名門ラフバラー大学で博士号を取得し、現在は九州共立大学で教鞭を執る後藤平太氏に育成の研究事情について話を聞いた。

現場で感じたプロと育成の違い

――まずはイングランドの大学へ入られた経緯からうかがってもよろしいでしょうか?

 「父の仕事の関係で、高校2年生の時に家族全員でイングランドに移りまして。その流れで向こうの大学に行きました。どうせ行くならスポーツ科学で一番上を目指そうと思い、当時は英国のスポーツ科学部でダントツだったラフバラー大学に行くことにしたんです」


――それは当時からスポーツ科学者を目指されていたからでしょうか?

 「いや、もともとはサッカー選手になりたかったんです。大学の修士課程で指導者のライセンスを取って、イングランドのアカデミーでアルバイトをしていたんですけど、そこでU-9から英才教育を受けている子供たちであっても15~20人のうち1人くらいしかプロになれないことを知ってようやく諦めました(笑)。そういう理由で指導者の道に進みました」


――その時点ではスポーツ科学者ではなく、サッカー指導者を目指されていたんですね。

  「その当時、2000年代はマンチェスター・ユナイテッドが強く、オールドトラッフォードから車で30分くらいのところに住んでいたこともあって、ユナイテッドのファンだったんですね。それでアレックス・ファーガソンみたいになりたいと思っていたんですけど、主にアカデミーを指導しながらプロでも仕事をしてみると、プロの世界と育成の世界って指導者の仕事内容が違うことに気づいて」


――違いというと?

  「具体的に言うと、要はプロって勝てばいい。お金といい選手を集めて強いチームを作って勝てばいい。でも私の家系は教員が多く教えることに喜びを感じる血筋みたいで、私も教えることが多い育成に向いていると思いました。だから、『アカデミーダイレクターのようなポストに就きつつ、自分でもチームを見るのが一番理想的かな』と考えたりしながら活動を続けていたんですけど、なかなかそれも狭き門でした。当時はまだサッカー界にスポーツ科学が広まり出したばかりで、やっとスポーツ科学者として活動しながらプロのアシスタントコーチや監督になる人が多少出てきていたくらい。それでも、そういう道もあることを知ったので、スポーツ科学者の道へ進みながら指導力を磨くという選択をしました。それで現在まで至ります」


――そうしてスポーツ科学者としての道を歩まれる中で、大学ではどのような研究をされていたのでしょうか?

 「修士課程では、食べ物の消化速度と運動の関係性について研究を行いました。イングランドのU-21の女子選手を対象に、消化が遅いものを食べるグループと消化が速いものを食べるグループに分けて、その食事の3時間後にサッカーの試合を想定した運動をしてもらいました。15mのスプリントを数分おきに行ってもらいましたが、スピードを持続できたのは消化が遅い食事を摂ったグループでしたね。その後は1、2年ほどプロクラブで働いていたんですけど『もっと勉強しないとダメだな』と思い博士課程に進みました。博士課程では、プロクラブのアカデミーに所属している9~18歳の選手を対象に、体力測定やGPSでの試合中の移動距離の測定を行い、それらの個々の成長パターン、体力と移動距離の関係性、発育の速さと体力の関係、発育の速さと移動距離の関係性などについて研究していました」


――プロクラブで働かれていたというお話がありましたが、どのようなクラブで働かれていたのでしょう?

 「博士課程を始める前までダービー・カウンティでユースチームのコーチを担当しながらクラブ全体のフィジカルトレーナーをしていました。そこで博士課程の研究で使うデータを収集したかったんですけど、その話がうまく進まなくて。新しくトップチームにやってきた監督がアカデミーにスポーツ科学者を連れてきたんですけど、彼は自分で全部やる人だったので交渉が決裂してしまった(苦笑)。そういう経緯があってノッティンガム・フォレストに行くことにしました。フォレストもアカデミーにかなり力を入れていて、年代別のイングランド代表に選ばれるレベルの子たちが毎学年にいる優秀なクラブだったので、結果的には良かったです」


――ノッティンガム・フォレストは当時から2部にいるクラブですが、育成環境は1部のクラブと比べてどうでしたか?

 「トップチームの実績とアカデミーの実績は必ずしもリンクしているわけではありません。マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーみたいに大きなチームは施設も凄いですけど、2部のクラブとプレミアリーグ中位以下のクラブを比べてみるとそんなに遜色はない。けっこう、入れ替わりも激しいですしね」

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最終更新:3/27(金) 14:40
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