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デジタル化推進するマガジンハウスの行方

3/25(水) 15:53配信

創

デジタル化は第2フェーズに入った

「『創』のこの特集も相当長いですよね」
 12月11日の人事で上席執行役員に就任した熊井昌広さんにお会いした時にそういう話になった。熊井さんはかつて『ポパイ』や『アンアン』の編集長を歴任した人で、本誌のこの特集では2011年に『アンアン』編集長として登場していた。今回の登場はそれ以来である。
 熊井さんは現在、クロスメディア事業局、広告局、デジタル戦略局の3つを統括しており、デジタル戦略局については局長を兼務している。
 マガジンハウスはこの1~2年、社をあげてデジタル化を推進しているのだが、その要として熊井さんが責任者に就いたというのが今回の人事だ。
「デジタル化が叫ばれる中で、マガジンハウスの場合は“ウェブ広告をどのくらいとれるか”が主な課題です。メディア自体のデジタル化についてはこれまでも各雑誌の編集部でいろいろ取り組んできたのですが、これから第2フェーズに入ったということでしょうか。
 2019年9月までの決算でマガジンハウスは広告の総売り上げが前年を上回ったのですが、その要因はウェブ広告の売り上げが前年のほぼ倍に増えたことが大きいです。主流はまだ紙広告ですが、ウェブ広告の成長を鑑みると、伸びしろはまだ非常に大きいと感じています」
 石渡健文編集担当取締役のもとにマガジンハウスに「デジタル戦略室」が新設されたのは2017年4月だった。当時『カーサブルータス』編集長だった松原亨さんが室長を兼務。そのもとに宮腰菜苗「anan web」キャップと、木熊太郎「casabrutus.com」ディレクター(当時)が所属していたが、全員が雑誌編集部などとの兼務という体制だった。ちなみに会議には、広告局長だった熊井さんも参加していた。
 その後、2018年4月に松原さんは『ポパイ』編集長に異動し、デジタル戦略室長も兼任した。マガジンハウスのデジタル化とウェブ広告ビジネスにおいては「anan web」と「casabrutus.com」が先行していたのだが、2018年には10月に『ターザン』のweb、11月には『brutus.jp』がスタート。『GINZA』『クロワッサン』『ハナコ』などは以前からwebサイトを持っていたのだが、その年に全ての定期誌がSNS発信をはじめとするデジタル化に取り組むことになったのだった。そうした各部の取り組みをサポートするのがデジタル戦略室の役割だった。
 ちなみに松原さんは、現在は『ポパイ』編集長を離れ、クロスメディア事業局の部長に就いている。
 熊井上席執行役員の話を続けよう。
「定期誌ブランドの中で『anan web』と『casabrutus.com』の2つがビジネス的に先行したのは社にとって幸運だったかもしれません。
『anan web』は、コンテンツを大量投入してPVをどんどん伸ばし、ネットワーク広告で売り上げのベースを作るというビジネスモデルです。PVは順調に伸びており、2年前は2000万PVだった規模が、4000万に迫っています。
 一方の『casabrutus.com』は、PVはある程度の規模を維持しつつ、本誌ブランドと親和性の高いクライアントから広告をいただいていくというビジネスモデルです。
 マガジンハウスでは、この2つのビジネスモデルが成功パターンのひな型として確立できました。残りの8ブランドはこの2つを参考にしつつ、どうやってウェブを成長させ、マネタイズしていくのか考えてきたのがこの間の経緯です。
 マガジンハウスのウェブ広告の売り上げ比率は現在20%弱。紙広告との比率は5対1で、金額が倍に伸びたと言ってもウェブ広告自体はまだ少ないわけです。しかし1年前はその比率が13対1でしたから、かなり伸びているのは確かです。
 定期誌ブランド別に見てみると、『アンアン』のウェブ広告比率が27%と突出していますね」
 ウェブ広告はそれ自体伸びが大きいのだが、影響はそれにとどまらないという。
「ウェブ広告が伸びることで、紙の広告も逆に増えるというブランドも出てきました。例えば『ターザン』はウェブローンチと同時に動画広告メニューを始めたのですが、オファーの多さにサイトのPV規模が追いつかないくらいの人気になりました。本誌のみだった頃の『ターザン』は広告売り上げが一時苦戦していたのですが、ウェブ版の登場で、クライアントが戻ってきてくれたり、最近ではこれまで出広の無かったファッション・クライアントまで獲得できつつあります。
 ウェブ版があることで紙の広告が取りやすくなったという点では、『カーサブルータス』もそうだし、『GINZA』もうまくいっています。『ハナコ』も2016年、『ブルータス』の副編集長だった田島が編集長についてからウェブの『Hanako.tokyo』を絡めたイベントなどにとても積極的に取り組んでいます。『ハナコ』は2018年に隔週刊から月刊にリニューアルして、広告だけにとどまらない新しいブランドビジネス企画を伸ばす戦略に変わってきています」
 マガジンハウスのブランドで現在唯一、SNSを中心にビジネス展開を図っているのが『ポパイ』だ。
「『ポパイ』はSNSのフォロワー数がダントツに多いですね。特にインスタのフォロワー数は12月現在30万人を超えていて、競合誌を含む男性誌ではトップです。このリーチ力を活かしたストーリー動画を使ったタイアップ広告などは、クライアントにとても好評です。ただ『ポパイ』も2020年内にウェブ版をローンチすることになると思います。
 そのほか『brutus.jp』が最近サイトデザインをリニューアルしました。ここは唯一コンテンツの課金システムを導入していますが、ブランドごとに戦略は少しずつ拡がっています。そうした各誌の独自性を保ちつつも、全社的なデジタル売り上げの拡大を図っていく、そしてスピードアップも同時に、というのが2020年の方針です」(熊井上席執行役員)

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最終更新:3/25(水) 15:53

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