ここから本文です

角銅真実、寺尾紗穂、菅野みち子......聴き手のイマジネーションを膨らませる、女性シンガーたちの“親密な歌”

3/26(木) 13:16配信

リアルサウンド

角銅真実:孤独と内省に浸る歌

 角銅真実の『oar』、寺尾紗穂の『北へ向かう』、菅野みち子の『銀杏並木』。この3枚をまとめて紹介したいという編集部の企画意図はよく分かる。音楽性はそれぞれ異なる三者だが、皆自分だけの確固たる世界を持っており、“孤高の”ソロミュージシャンという形容がしっくりくる。そして、特定のムーブメントやシーンに流されたり埋没したりせず、個が個のままに我が道を着実に歩いてきた、という印象もある。本稿では近いタイミングでリリースされた3作について触れ、共通点や相違点を炙り出していこうと思う。

 角銅真実は東京藝術大学の器楽科 打楽器専攻出身で、同学科の後輩にあたるドラマー、石若駿のSONGBOOKプロジェクトにボーカリストとして参加している。メジャーデビュー作となる『oar』には、その石若がピアノで参加している他、西田修大、光永渉、マーティ・ホロベック、中村大史など、これまでになく多くのミュージシャンが関わった。結果、ラフスケッチ風だった過去2作に比べ、丁寧に作りこんだ様子が端々から窺える。田島貴男、原田知世、原田郁子とのコラボレーションはもちろん、ceroのサポートを務めたことも歌ものと真正面から向き合う契機になったのだろう。筆者が角銅にインタビューした際に、「初めて積極的に人に聴いてほしいっていう気持ちになっていたんです」と述べていたのが印象的だった。

 とは言え、彼女はこのアルバムの収録曲について「ポップスではない」とも断言していた。曰く、「私の思うポップスの勝手なイメージは、共感の音楽なんです。でも、私の音楽は聴いていてひとりになるもの」だと。また、1st アルバム『時間の上に夢が飛んでいる』の曖昧模糊なジャケットが象徴しているように、虚空を漂流しているような浮遊感も角銅の音楽の特徴。奇しくも本作でカバーしているフィッシュマンズがそうであるように、孤独や内省に浸ることを許容する、そんな音楽だと思う。重力から自由であり、調性に縛られないしなやかさを持ち合わせている、とでも言えばいいか。

 ちなみに角銅は今年1月にロバート・フリップの愛弟子であるアルゼンチンのギタリスト、フェルナンド・カブサッキらと共演。ライブでは絶妙なタイミングでオノマトペを発したり、ワイングラスの淵を撫でて音を出すなど、即興にも慣れているところを見せていた。前衛的で尖った音楽にも触れ、インスタレーションも作ってきた彼女が、灰野敬二を敬愛しているのは腑に落ちる話ではないだろうか。

1/2ページ

最終更新:3/26(木) 13:16
リアルサウンド

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事