ここから本文です

新型コロナ流行の時代だから、ヒットし炎上した「100日で死ぬワニ」

3/26(木) 14:30配信

webマガジン mi-mollet

その後のメディアミックス展開が炎上したワケ

その後の「電通仕込み炎上騒動」は、それがどれだけ深く刺さったかの証左でもあります。いやまあわかるけど。100日で死を迎えたその余韻もさめやらぬうちに、矢継ぎ早にグッズとかコラボ曲とかが出てくる「メディアミックスで金儲け!」みたいな展開は、そりゃあ確かに興ざめ。でも「純粋な感動を台無しにしやがって!」と怒る人には、え?という違和感を覚えずにいられません。

そもそも作り物だし、主人公ワニだし。「感動の実話!」みたいな映画も、最初から最後までプロモーション仕込んだ作り物で、でもみんなそこに乗っかって楽しんでるわけだし。騒動を受けて配信された作者きくちゆうき氏&「いきものがかり」水野良樹氏の状況説明動画によれば、仕込みは一切なかったようですが、もしあったとしても、仮にもプロのイラストレーターが描いた作品を仕事(つまりお金)にしたとして、怒られる筋合いはなにもない気がします。だって芸術家は自身の悲しみや苦悩を作品にし、観客に感動を演出することで食っているものだったりするわけで。

にもかかわらず、なぜこんなことになったのか。
ひとつには、ネット上の「嫌儲」の人たちが、自身の「消費」(つまり、笑って泣いて心温まった末に「ああ面白かった」と忘れ去り、さっさと次へいくこと)に対してまったくの無自覚であること。特にネットの場合はお金を払っていないから、消費する側が「商品」としての意識を持ちにくく、ゆえにそれにかかった労力(つまり金)を想像しません。いずれにしろ「金のために描いたんじゃない」という情緒が、感動に一役買っていたのかもしれません。

そしてもうひとつは「100ワニ」が、「いい話」であったこと。ヘンな話ですが、私は東出昌大の不倫騒動を思い出しました。不倫はもちろんよくはないけれど、男社会の日本で、不倫でこれほど完膚なきまでに社会的に抹殺されたのは、おそらく彼がはじめてだと思います。桂◯枝だって渡◯謙だって、不倫騒動の後に普通に大河ドラマ出てたし。それはおそらく東出くんがあまりに「理想の夫」「理解あるイクメン」イメージだったからじゃないか。「100ワニ」への怒りは、「いい話だと思ったら結局金儲けかよ!感動した気持ちが踏みにじられた!」というものだったんじゃないかということです。

私個人としては、世の中の善意や美談は決して嫌いじゃありませんが、半分は信じていません。世の中は善意と美談では回るはずがないし、善意と美談に頼る状態は長くは続かないからです。そして善意や美談を好み、まるのまま信じ感動し美化する人は、全く信用しません。そういう人たちが無邪気に善意と美談を消費し、しばらくすればさっさと忘れ去ること、そして、時として善意と美談をなかば強要するのを知っているからです。辛い日々をどうにか支える善意、それを美化し称賛していい気持ちになってるだけでは何も解決しない。コロナ流行の時代に、心に留めておきたいところです。

渥美 志保

2/2ページ

最終更新:3/26(木) 14:30
webマガジン mi-mollet

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事