ここから本文です

濃厚接触が好きでたまらない金正恩の恐怖

3/26(木) 6:01配信

JBpress

■ 「自分の命」が惜しい金正恩

 フランス国王ルイ14世が宣言した「朕は国家なり」という言葉は、絶対主義王制を象徴するものとして知られる。

 ルイ14世は最高国務会議、顧問会議を主宰し、国内のいかなる独立的権力も容認せず、行政、統帥、外交の全権、さらには高等法院を自己の権威のもとに屈服させた。

 北朝鮮の金王朝もブルボン王朝と同じで、金正恩氏自身が北朝鮮の体制そのものなのである。

 北朝鮮の体制そのものである金正恩氏は

 (1)クーデターや暴動などによって「王位」を奪われること(それは「死」を意味する)

 (2)暗殺や新型コロナウイルスなどの疾病など「命」を奪われること

 を恐れているに違いない。彼が最も恐れるのは「王位」よりも「命」の方であろう。金正恩氏の「命」は「公的な命」でもあり彼個人の「プライベートな命」でもある。

 金正恩氏は中国やロシアとつながる航空便や鉄道の運行を停止し、韓国との交流窓口である開城(ケソン)の連絡事務所まで一時閉鎖し、新型コロナウイルスの流入に厳戒態勢を敷いた。

 北朝鮮当局が過剰とも思われる対策を取って「一人の犠牲者も出すな」などと呼びかけるのは2つの目的があるのではないか。

 第1は、飢餓状態で免疫力の落ちた「人民の命」の犠牲を最小限にすること。

 第2には、金正恩氏の「プライベートな命」そのものを守ることである。

 その優先順位は当然のことながら「人民の命」よりも金正恩氏の「プライベートな命」の方がはるかに重要なのである。

 それは、父の金正日が祖父・金日成の死亡直後の混乱期に、自らの王位継承を優先し、300万人とも言われる人民を餓死させた事実が何よりの証拠ではないか。

 2月1日付の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は社説で「人民の生命安全をしっかり守るのは朝鮮労働党と国家の最優先の重大事である。(中略)我が国ではたった一人の被害者も出ないようにして、人民の生命の安全が最優先される体制が整っている」などと強調しているが、これは完全な欺瞞だと筆者は思う。

 人間にとって最も大事なのは命である。歴史を見れば分かる通り、独裁者が最後に願うのは「不老長寿」だ。

 金日成も例外ではなく、この悲願達成のため1976年に『基礎医学研究所』(金日成長寿研究所)を設立し、全国から優秀な人材を集め、金に糸目をつけない奇妙な健康法に明け暮れた。

 金正恩氏はまだ若いが、長寿(命)についてのこだわりは祖父と変わるところはないだろう。

■ 究極のセキュリティは粛清

 金正恩氏のみならず、金王朝3代にわたって、「王様」の命を守ることには病的・偏執狂的なほどの執念を見せた。

 金王朝を支えるのは軍であるが、特別に「王様」の身辺警護や首都である平壌直轄市の防衛を主管するために護衛司令部(兵力は9万5000~12万人)と呼ばれる親衛隊組織を設けている。

 また、軍内にはクーデターの陰謀を監視するために総政治局を置いているほか、国家保衛省(秘密警察・情報機関)が津々浦々に配備した監視網で、全人民を対象に目を光らせている。

 それに加え、金王朝3代は、影武者までも使っていると言われる。

 金王朝3代は、自分に弓を引く可能性がある者は容赦なく粛清してきた。それゆえ「粛清の王朝」とまで言われている。

 金正恩氏の場合は、叔母・金敬姫の夫で権力の後見人でもあった張成沢氏を国家転覆陰謀のかどで粛正した(2013年12月)のに続き、腹違いの兄・金正男氏をマレーシアのクアラルンプール国際空港で顔面に神経剤「VX」を塗布して殺害させた(2017年2月)。

1/3ページ

最終更新:3/26(木) 10:50
JBpress

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事