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IOCが恐れる「東京中止」と「北京閑散」の悪夢

3/26(木) 11:30配信

JBpress

 ひとまず大会に携わる側にとっては「最悪」のケースを回避できたようだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今夏の開催予定だった東京五輪は1年程度の延期が決まった。大会中止の可能性もあっただけに、それだけは是が非でも避けたい安倍晋三首相、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会・森喜朗会長、東京都・小池百合子知事ら日本側のトップたちは大同団結。3者は「あくまでも東京五輪は予定通りの通常開催」とうそぶきつつ周囲を煙に巻きながら水面下で延期へと舵を切って調整を図り、怒とうのスピード決着で「ベストではないがベター」(小池都知事)な結果を辛うじて得た。

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 IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は具体的な日程の明言を現段階では避けているが、会場の確保など多くの難問を抱える日本側が早急に準備を進めなければならないことから一刻も早いスケジュール決定を迫られている。

■ 東京五輪、来春開催の可能性も

 IOCと大会組織委員会は4月中旬に準備状況等を確認する会議を開催する予定を組んでいるものの円滑に進めていくためには、それ以前に新たな日程発表を行わなければならない。

 IOCと日本側は新たな開催スケジュールについて「2020年以降だが、遅くとも2021年夏」で合意している。

 最も有力視されているのはちょうど1年延期となる2021年の夏だ。来夏開催予定でバッティングする可能性のある水泳(同年7月16日~8月1日・福岡)、陸上(同年8月6~15日・米オレゴン州ユージーン)の世界選手権はそれぞれの主催団体が必要とあれば日程を変更する姿勢をみせていることも大きい。何と言っても夏ならば欧米の人気スポーツの開催時期と重ならないことはプラス要素だろう。五輪の放映権を持つ米放送局NBCの賛同も二つ返事で得られる。

 だがバッハ会長は「夏に限定していない」ことも明言している。酷暑になる日本の真夏開催を避け、前出の水泳、陸上の両世界選手権を動かさないようにしたいならば、2021年春という選択肢もあるかもしれない。

■ イメージ悪化で2022年北京冬季五輪にも暗雲

 しかしながら、この来年春開催案は“最大の難敵”が実現の可能性を限りなく小さなものにしている。新型コロナウイルスだ。専門家の間からは「来春では延期の期間が短過ぎて感染リスクは下げられない」と指摘する声も出ている。それどころか、IOCと日本側が合意した延期の範囲でギリギリとなる来夏の開催に関しても「怪しい」と訝しがる見方は少なくない。

 実際、スポーツ団体の新型コロナウイルス対策会議に出席した有識者の1人はこのように述べて警鐘を鳴らしている。

 「新型コロナウイルスの予想はとても難しい。非常に感染力が強く、とにかくしぶとい。総合的な判断から言えば、ウイルスの中で“最凶クラス”と言えます。日本の感染が沈静化し、国内だけで終息宣言が出されても海外のどこかでエピデミックが起こったままというケースは十分考えられるでしょう。そうなれば東京五輪の開催によって海外からの入国者が激増し、日本で再蔓延してしまう悪夢のシナリオも想定して警戒しなければいけない。

 ワクチンが完成し、臨床試験を経て誰もが手に入れられるように世界中で普及する流れになるにはまだかなりの時間を要する。『今夏にもワクチン完成』などといった希望的観測もありますが、それよりもこのウイルスの感染スピードの勢いのほうが断然速い。

 このように考えてみると東京五輪は1年延期が十分であるとは、絶対に言い切れないのが非常に歯がゆいところです」

 バッハ会長は「仮に来夏でもウイルスの脅威が治まっていなければ一体どうするつもりなのか」との問いには明確な答えを口にしていない。それでも「参加する全ての人たちの安全を守るという原則は今後も変わることはない」と述べ、解釈の仕方によっては来夏も改善していなければ同様の措置を下す用意があるとも受け取れる。その場合は「再延期」ではなく「中止」となることが、ほぼ確実だ。

 さすがに五輪開催のホスト国だからといって二転三転させられるほど日本に余力はもう残っているはずがない。とてつもなく致命的なダメージを国として受けてしまうことは残念ながら必至だろう。

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最終更新:3/26(木) 11:30
JBpress

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