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東野幸治、吉本興業への思いを吐露「変わろうと頑張ってるけど、変わりきれない部分も…そこがまた愛おしかったりするんです」<インタビュー後編>

3/26(木) 10:00配信

ザテレビジョン

アクの強い吉本芸人たちを容赦なくイジり倒した著書「この素晴らしき世界」(新潮社)で、ベストセラー作家の仲間入りを果たした東野幸治のロングインタビュー。後編では、引き続き吉本芸人の面白エピソードを披露してもらいつつ、昨年の騒動によって変革の時を迎えている吉本興業について、また、今年2月にスタートしたYouTubeチャンネル「東野幸治の幻ラジオ」についても話を聞いた。

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■ 「70代の師匠から10代の若者までいる、その層の厚さが、吉本芸人の一番面白いところかなと」

――先日、「この素晴らしき世界」出版記念のトークショーで、東野さんは「(プロダクション)人力舎の芸人でこういう本を作ったら、全然違うものになる」というようなことをおっしゃっていましたが、改めて、吉本芸人の魅力とは?

東野幸治:60、70代の師匠から10代の若者までが、同じ会社に所属しているわけですから、文化も違えば、育ってきた環境も違う。ジェネレーションギャップがあるんですよね。というか、ジェネレーションギャップっていう言葉すら、わからん人もおったりして(笑)。やっぱり、その層の厚さが一番面白いところなのかなと思います。

僕は今52歳なんですけど、30代から50歳前後の芸人からすると、60、70代の芸人さんって、なんかおもろいんですよね。日常生活から何から、すべてが面白い。で、その面白さを、僕みたいな人間が、ライブやテレビで披露することで、ファンの層が広がったり、その芸人さん自身、新しい面白さが出てきたり。それはやっぱり、吉本だからこその幅の広さなのかなと。

――「日常生活が面白い」というのは、例えば…?

東野:いや~、壮絶ですよ。借金があって、質屋に金のネックレス入れてお金に換える人もおれば、パイプカットしてる人もおるし。フロンガスはあかんって散々言うてるのに、人がうどん食うてる横で、髪をセットするためにスプレーを延々頭に吹き付ける人がおったりね(笑)。

――若くして吉本興業に入られて、面白い人にたくさん出会ってきた東野さんですが、そんな中で、どんなことを学びましたか?

東野:最初はダウンタウンさんと一緒に、若いお客さんに向けた、その時代の最先端のバラエティー番組に出させてもらえて、それも経験できてよかったと思うし、それとは逆に、昔ながらの、そして未来永劫続くであろう(笑)、劇場の文化も経験することができて。この2つを経験できたことが、やっぱり僕にとっては大きなプラスやったなと思いますね。

■ 「何やかんや言いながら、吉本興業に対しては、みんな感謝の気持ちは持ってるんじゃないですかね」

――では、吉本興業という芸能プロダクションには、どんな面白さがあるのでしょうか。

東野幸治:駆け出しの頃、伝説の林正之助会長とお会いしたことが何度かあるんですね。ある年のお正月の特番で、吉本芸人がNGK(なんばグランド花月)に集まったとき、生放送が終わって舞台袖を見たら、正之助会長が立ってるんですよ。で、舞台上に芸人がずらっと並んでる中、正之助会長が上がってきて、お客さんにあいさつをされたんです。「どうも、私がキ〇ガイ病院の院長です」って(笑)。そのあいさつが、どの芸人のネタより一番ウケるわけですよ。ほんまに面白い会社やなって思いましたよね。

――昨年の、いわゆる“闇営業”問題を機に、吉本興業は今、変革の時を迎えていると思うのですが、東野さんは今、吉本興業に対してどんな思いを抱いていらっしゃいますか?

東野:う~ん、昔はもっとムチャクチャでしたからね…。例えば、芸人が不倫なんかしたら、今やったら大問題ですけど、一昔前は、大阪ローカルの番組で「こいつ、結婚してるのに浮気してますねん」とか、「おまえ、女おるんやろ?」とか、平気でしゃべってましたから。朝の情報番組で言うてましたからね、(小指を立てて)「おまえのコレ、元気か?」って(笑)。で、そんな話を、みんなニコニコしながら聞いてるっていう。ほんまに、芸人さんも昔は、女でヘタ打つ人もいれば、博打でヘタ打つ人もいて。それでも許される社会やったんですよね。

でも今はもう、そんなことはもちろん許されない。時代が変わったんやから、芸人も意識を変えてかなきゃいけない。…っていうことは、吉本興業という会社も、所属してる芸人もわかってるんです。ただ、頭ではわかっていても、変わりきれない部分もあったりして。僕からすると、そういうところがまた愛おしかったりするんですよ(笑)。

ただ、吉本興業という大きい器があるから、どんな芸人でも、なんとか生きていくことはできる、というのは間違いないと思います。中には会社に文句言うてる芸人もおるのかもわからんけど、何やかんや言いながら、吉本興業に対しては、みんな感謝の気持ちは持ってるんじゃないですかね。

――では、これから吉本興業は、どのように変わっていけばいいのでしょうか?

東野幸治:いや、吉本も頑張ってると思うんですよ。大きい会社ですし、いろんなビッグビジネスも手掛けてますし。その上で、反社チェックとか働き方改革とか、社会が求めることにもちゃんと対応してますから。まぁ、結果的に社会に貢献できているか・できていないかは置いといて、の話ですけども(笑)。

で、なおかつ、ちゃんと芸人のことを考えて、テレビだけやなく、ネットとか劇場とか、新しい仕事をいろいろ作ろうとしてくれてますからね。劇場に出られへんやつには、「住みます芸人」みたいな仕事もありますし。…いや、だからその新しい仕事が成功する・しないは、また別の話なんですけどね(笑)。

ですから、吉本は吉本なりに、吉本興業というブランドの力が落ちていかないためにも、変わり続けようとはしてると思うんです。でも、ちょっと抜けてるところがあって、たまにミスっちゃう。それで結果、世間に笑われてしまうっていう(笑)。でも僕としては、「そういうのもご愛嬌、吉本やからしゃあないか」と、許容してもらえる社会であってほしいなと思います。

あと、僕が吉本興業っていい会社やなって思うのは、芸人の個人的なミスに対して、すごく寛大なんですよ。このご時世、一度ミスした人間が戻ってくるのはなかなか難しいと思うんですけど、吉本という会社は、ミスした人間に対して、少なくとも戻って来られる居場所は作ってくれますから。それはもしかしたら、お笑いの会社だからできることなのかもしれませんけど。

■ 「さんまさんは『YouTubeはテレビの敵や!』って言うてるんで、バレないようにしないと(笑)」

――ところで東野さんは最近、YouTubeチャンネル「東野幸治の幻ラジオ」を立ち上げられました。どのような経緯で、「ネットでラジオ番組をやろう」という試みに至ったのでしょうか。

東野:僕はいつも、流れるままに…というか、どんな仕事も、誘ってくれる人がいたらその人のために頑張ろう、というのを信条にしてるんですけども、この春、そうやって決まったラジオ番組のレギュラーの仕事が、なんとスポンサーがつかないっていう理由で立ち消えになってしまったんです。それでしょうがないから、自分でラジオ番組を作ろうと。流れに逆らってみよう、と(笑)。まぁでも、新鮮で面白い仕事ですよ。ほんまに手作りな感じで。

――でも、常日頃YouTubeを敵視している明石家さんまさんに知られたら、大変なことになるのでは…?(笑)

東野:そうなんですよ、さんまさんはいつも「YouTubeはテレビの敵や!」って言うてるんでね、なんとかバレないようにしないと(笑)。さんまさんって、何でも物事を“敵と味方”に分けるくせがあるんですよ、(横山)やすしイズムを受け継ぐ最後の芸人さんなんで(笑)。

■ 「世の中が『面白い』と認める人は、全部ひっくるめて“芸人”って呼んでいいんじゃないですかね」

――東野さんご自身は、YouTubeと地上波のテレビとの関係は、どのようにお考えですか?

東野幸治:今までの話で察していただけると思いますけど、僕は、YouTubeは意外と許容してるんです。

芸人さんが劇場で漫才や落語をしていた時代、ラジオというものが始まって。そこで活動の場をラジオに移した芸人は、周りから「それでも芸人か」なんて言われたと思うんです。で、その次にテレビの時代になったら、テレビで仕事をし始めた芸人は、「テレビタレントなんか、劇場でネタをやらせたら、5分ももたないぞ」なんて悪口を言われて。

結局、今もそれと同じような状況やと思うんですよ。テレビの次にYouTubeが来て、今テレビで仕事している人の中には、YouTubeに否定的な人がいるっていう、ただそれだけの話で。そんなに大した変革でもないような気がするんですよね。時代が流れてるだけっていうか。

で、そういうときの芸人の生き方として、カメレオンじゃないけど、その時代その時代に合わせて、自分の色を変えていくっていうのもありやと思うんです。もちろん逆に、色を絶対変えない芸人っていうのも、かっこええなと思いますけど。

要は、今の時代、純粋に笑えることだけを突き詰めていく人だけが芸人ではない、というか。お笑いのスキルを活かして、例えば面白いビジネスを始めたりする人も、新しいタイプの芸人やと思うんですよ。何にもせえへんけど変な毎日を送ってるヤツがいて、「こいつ、おもろいな」ってなったら、そいつもやっぱり芸人やろうし(笑)。だから、いわゆるネタをやらなくても、世の中の人が「面白い」と認める人は、全部ひっくるめて“芸人”って呼んでいいんじゃないですかね。

■ 「やっぱりどこかで、自分発信で何かやりたいなっていうのは常にあって」

――エッセイを発表されたり、YouTubeでラジオを始めたりと、東野さんは今、自分の考えを世の中に向けてダイレクトに伝えたい、というモードなんでしょうか。

東野幸治:いや、たまたま重なっただけですね。ラジオなんかは、3年くらい前からやりたいって言うてましたから。

僕が今テレビで求められてることって、番組に来てくださったゲストの方から、思っていることや考えてることを引き出す、という仕事じゃないですか。言うたら、「世の中の人たちはきっと、こういう話が聞きたいんだろうな」っていうことを聞き出すのが仕事なんですね。それはそれで楽しい作業なんですけど、やっぱりどこかで、自分発信で何かやりたいなっていうのも常にあって。そう考えたときに、「あっ、YouTubeっていう便利なものがあるな」って思ったんですよね。で、実際やってみると、何でも自由にできるし、これはなかなか楽しいぞと。

――「幻ラジオ」では、今後どんな企画を考えてらっしゃいますか?

東野:企画的なところは、実は全部、娘に任せてるんです。僕が音源を送って、それを娘が配信するっていうシステムでやってますんで、僕が「こんなん、どう?」と言うたところでね、娘から「いや、それは違うわ」ってダメ出しされるかもわかりませんし(笑)。

――例えば、「この素晴らしき世界」の音声版とか…?

東野:あっ、確かに、自分の好きな芸人さんについてしゃべるっていうのは面白いかも…って今、思いました(笑)。芸人さんの話は、(「この素晴らしき世界」を手に取りながら)こうして一冊の本になって、今はもうやりきった気持ちですけど、今後、またやりたいなと思うかもしれませんもんね。そのアイディアは、頭の片隅に残しておきます。ありがとうございます(笑)。(ザテレビジョン)

最終更新:3/26(木) 10:00
ザテレビジョン

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