米ナイキが米ニューヨークで発表したのは厚底シューズだけではない。ほぼすべての材料を廃棄物、つまり“ゴミ”から再生した原料で作ったシューズも明らかにした。気候変動がスポーツイベントや選手に与える影響に対処する姿勢を明確にしたものだ。
【関連画像】スペース ヒッピーは100%再生した糸でアッパー部を生産する
「私たちはかっこいいだけでなく、常にサステナブル(持続的)でありたい。そうした制約を楽しみながら、問題を解決して開発したのがこのシューズだ」
ナイキ サステナブル イノベーションのシャナ・ハナVPはこう説明を始めた。
●9割が廃材などからの再生素材
ナイキが新たに投入する環境配慮のシューズ「スペース ヒッピー」が目指したのは、「製造過程での炭素排出量が過去最低のシューズ」(ノエル・キンダー チーフ サステナビリティ オフィサー)である。ただし、「既に炭素排出量を相当減らしているので、素材の根本から考え直す必要があった」(同)
工場の床に落ちた繊維などの廃棄物、ナイキのシューズやTシャツのリサイクル素材などを活用する。いわばほとんどゴミになる素材をよみがえらせて作ったシューズだ。全体の約9割が再生素材である。
●工場の床の糸くずやTシャツから再生
厚底シューズは主としてソールに新しいテクノロジーがつぎ込まれたが、スペース ヒッピーは表面のアッパーが主役と言えるだろう。「宇宙ゴミの糸」と呼ぶ100%再生素材のニットで作っている。具体的には25%が回収したTシャツの繊維、25%が工場の床に落ちた糸くずなどの繊維廃棄物、50%がリサイクルのポリエステルである。
ニットの色あいは利用する糸くずやシャツなどによって微妙に変わるという。あえて染料を加えていない。
シューズのクッションとなるフォーム部分は、厚底の高速ランニングシューズ「ヴェイパーフライ 4%」などの生産過程で出たフォームの廃材を再生。製造過程での炭素排出量を従来のほぼ半分に抑えたという。
●1個1個異なるデザインに
靴底のソール部分は遊び心を持たせている。通常の材料に、シューズを砕いた再生ラバー素材を混ぜている。ソールの中にさまざまな色のアクセントが入り、シューズごとに異なる模様となる。
キンダー氏はこうした挑戦のなかからいくつものイノベーションを実現したと言う。「当初はソールに再生ラバーを30%入れて試した。見た目がよかったのだが、壊れやすかった。それから15%が最適であることを突き止めた。また、再生素材から作った糸に伸縮性を持たせるテクノロジーを開発した。こうしたものを他に製品に転用していくことができる」
●再生テックを全社に展開とCDO
スペース ヒッピーは限定品ではななく、通常商品として米国では2020年の春、日本では同夏に販売を始める予定だ。ランニングシューズと同等の強度を持っており、運動にも利用できるという。ローカット2種類、ハイカット2種類を用意する。
量産時には十分な量を供給できる体制を作る。「我々は再生するための素材や繊維ゴミをたくさん持っている。スペース ヒッピーのようなサステナビリティ配慮のシューズを普及させることで、炭素排出量の削減にインパクトを与えていきたい」(キンダー氏)。価格も製品によって120~160ドルと200ドル以内におさめる計画だ。
ナイキのチーフデザインオフィサーは今回新たに開発した素材の再生技術を評価しており、ツールとして全社に展開していく考えだという。今後、ランニングなど他分野の製品に採用する可能性がある。
キンダー氏は「もし宇宙にいったらその場所にある素材や資源を使わないといけないだろ。スペース ヒッピーもそうして廃材を利用している。また、リサイクルについてできるだけナイキの中だけで閉じるエコシステムを作っていきたい」と目を輝かせる。
市嶋 洋平
最終更新:3/26(木) 11:00
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