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原田勝広の視点焦点:ロボットは家庭から介護へ

3/27(金) 0:09配信

オルタナ

神奈川県藤沢市にある特別養護老人ホームをAIロボットが訪ね、実証実験をするのを取材しました。AIベンチャーの(株)ハタプロが開発したフクロウ型家庭用見守りロボットZUKKU(ズック)という身長10センチの手のひらサイズ。昨年、発売されましたが、自律的に人の動きを感じて見守りを行うので、ダイニングテーブルなどに置いてお話相手をしてくれます。一人暮らしの高齢者のよきパーとナーとして40歳位の人が親のために買うケースが多いそうで、親孝行家電とも呼ばれているのだとか。

例えば、おばあちゃんとの会話はこんな具合です。

「おはよう、ズックちゃん」

「おばあちゃん、寒いですね」

「でも働いている人は仕事はちゃんとやらなくちゃね」

「はい。電車が混んでなければ、通勤はもっと楽なんですけどね」

「わたし、ちょっと熱があるみたいなの」

このように会話の中でネガティブ情報が出てきた時には、その情報がズックから息子さんのスマホに「おばあちゃん、熱があるようです。連絡してみたほうがいいですよ」とメッセージが届くシステムです。

プライバシー保護の観点から基本的には会話内容は外部に漏れないようロックがかかっていますが、「ケガをした」とか「のどが痛い」など安全・健康確保の観点から必要な情報は事前に了承を得たうえで、親族等には開示される。もちろん、ポジティブな情報も知らされる仕組みで、「久しぶりに友達に会ってたのしかった」などは、「おばあちゃん、友達と昔話に花が咲いたようで楽しかったようでしたよ」と報告されます。

この「家庭向け版」は59,800円。NTTドコモ、オートバックスと連携し売れ行きは好調です。ハタプロでは今、次世代に向け、「医療・介護施設、法人向け版」の新バージョンに挑戦中で、実は、この日、老人ホームで行われた実験はそのためのもので、神奈川県の地域活性化特区の指定を受けているプロジェクトで、「さがみロボット産業特区」として行われたものです。

この日のテーマは脳トレーニング。□んぶん□、し□か□せ□とディスプレーにあり、□に同じ文字を入れてもらうという作業でした。普段スマホを使っておらず大丈夫か、耳の遠い人に声が届くかと心配しましたが、職員の協力もあり、うまくいったようです。特養側でも認知症などに対する未病対策として使いたいと前向きでした。

ハタプロの伊澤諒太社長(32)は「ロボットに話しかけるのは不慣れな高齢者もいたが、楽しそうに接してくれた。ロボットの返事のタイミングがずれたり、個別対話を前提にしているので集団の中での対話にやや問題があった」と話しています。

伊澤社長は、AIロボットに大きな可能性を感じており、今後は会話の中で問診し「よく眠れたか「疲れてないか」をするほか、体温、体重、傷、ふらつきなどの健康を記録した後、それを分析し、報告する。それを通して病気を発見すること、改善指導など診療を行うことが目標だということです。

具体的にはロボットにカメラを付け、次世代通信5Gを活用して、クラウドの情報の活用を活発化。さらにIoTサイネージディスプレイと連携して、発話を促すカウンセリングなど会話機能をデイサービス利用者向けに配信する考えです。将来的には、未病の早期発見、認知機能の維持、改善と健康寿命の延伸など治療につながる脳トレ、体操、オシャベリなどのコンテンツを充実させたいと意欲的です。

介護施設などでは、ズックが司会役をしてグループで一緒に会話を楽しんだり、社会参加を楽しめるような手法も考えています。また、ロボットの活動で、他の従業員の負担を減らすことができるかもしれません。

伊澤さんはITを学んだあと、技術を生かして社会に役立つことをしたいと23歳で起業、AIと通信をつなげることを目標にロボットの開発に取り組んできました。

2019年10月には湘南ヘルスイノベーションパークに入居し、次世代医療機器の開発やデジタルヘルス事業の共創を行う予定です。人型ロボットの、かつてのホンダのアシモ、ソフトバンクのペッパー、ソニーの犬型ロボットaiboなどこの世界のライバルは多いですが、ズックは中間の小型で軽量なAIです。それだけに汎用性は高く、期待できそうです。(完)

原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

最終更新:3/27(金) 0:09
オルタナ

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