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巨大で「映える」ユッケ寿司 マグロで格安の居酒屋も

3/28(土) 17:12配信

NIKKEI STYLE

超ロングな見た目が驚きの「ユッケ寿司(ずし)」という肉の押し寿司が話題になっている。長さ30~60センチメートル、中には1メートルもある。視界の端から端を横切る見た目はインパクト十分。写真や動画で「SNS映え」すると、20代の若者を中心に人気だ。韓国料理店での流行をみて、居酒屋などが新メニューとして相次いで取り入れている。ただ衛生面への配慮から、生の牛肉の代わりにローストビーフを使った「ユッケ仕立て」だったり、馬肉やマグロに替えたりと、工夫を凝らしている。
ユッケは、牛の生肉を細かく刻み、タレや卵をかけて食べる韓国料理。日本の飲食店でも提供する店が多かったが、2011年、焼き肉チェーン店でユッケを食べた人複数が死亡する集団食中毒が発生。法的拘束力のある規格基準が設定され、生食用牛肉を飲食店が提供する際、肉の塊の表面から1センチメートルの深さまで60度以上、2分間以上の加熱が義務付けられるようになった。その後ユッケを出す店は激減したが、代わって登場したのが「ユッケ寿司」だ。
「ユッケという名前だが、使う牛肉は全て加熱調理済み」と話すのは、東京都渋谷区にある肉料理店「肉匠とろにく恵比寿店」の長谷川亮太店長。同店で提供する長さ50センチメートルのユッケ寿司は、黒毛和牛を150度のオーブンで30分以上じっくり加熱した後、細かく切って甘辛いタレと絡めることでユッケ風に仕立てた。
メニュー開発で狙ったのは、SNS映え。「最初は正方形にする案もあったが、長い方が見た目のインパクトがあった。卓上に置いた後、客の目の前でガスバーナーであぶることで臨場感も演出している」(同店長)
特に20代の若者に受けているという。実際、取材当日にユッケ寿司を注文していたのは東京都内の学生が多かった。男子学生と2人で来ていた女子学生(22)は「インスタグラムのストーリーで見て、何コレ!?って気になって食べに来ました」と話す。ストーリーは24時間で投稿が消える機能。それだけに最新の話題や流行に敏感な若者たちが利用している。連れだって来ていた男子学生(21)は「卵黄のタレと一緒に食べると味が濃厚でおいしかった。昔のユッケを知る身としては、もう少しナマ感が欲しかったけど」と笑顔をみせた。
牛肉の代わりに馬肉を使ったユッケ寿司もある。大阪市にある創作料理店「ハッシュタグ梅田本店」は長さ30~60センチサイズを出している。30センチなら1人分、60センチだと2人分といったイメージだ。皿には到底のせきれない。板だ。板の上にびっしりのった状態で運ばれてくる。
初めて食べたという市内勤務の男性(25)は「鮮度が良いのか獣臭さもなくておいしい。お酒のお供に合う」と好評。取材中、隣のテーブルに座るカップルから「これ、ヤバい!」という大きな声が聞こえてきた。横目で見ると、そのテーブルの上にもユッケ寿司。「ヤバい!」とは「すごい」といった肯定的な意味で使う若者言葉だ。大学3年生の2人組みは「SNSで見つけて、その長さに衝撃を受けて食べに来た。味も期待通り」と満足げだ。
同店が馬肉のユッケ寿司を出し始めたのは、18年12月の開店当初から。「韓国料理店で牛肉のユッケ寿司が流行し始めていたが、馬肉を出すところは少なかった」と、小田隆児店長は振り返る。今年1月には黒毛和牛などのユッケ寿司もメニューに追加した。和牛の塊肉の表面をオーブンで加熱して、中のレア肉を細かく切って出している。ユッケ寿司は「来店客の8割が注文する一番の売れ筋料理」(同店長)。
驚異の長さ1メートルのユッケ寿司を出している店もある。東京都板橋区にある居酒屋「酒蔵ゴエモン板橋店」だ。牛肉の代わりにマグロを使っている。あまりの長さに材料の調達や準備に手間もかかる。このため1メートルを食べたい場合は、前日までに予約しておく必要がある。
店を訪ねると、井上雄史店長がつくる様子を見せてくれた。長さ20センチのシャリを5本並べ計1メートルのシャリを作り始めた。次に甘口しょうゆとごま油に卵黄を混ぜたタレで漬けた本マグロをのせ、イクラを置きウニを配置。最後にはトビッコ(トビウオの卵)を散らして完成だ。きらびやかで豪華な見た目に、思わず生唾を飲み込んだ。
味付け済みなので、しょうゆを付ける必要もない。端から箸で崩して一口サイズに切って食べる。本マグロにイクラにウニだ。マズいはずがない。ごま油の効いたマグロは舌に残る濃厚な味わい。トビッコのプチッとした食感も楽しい。酢飯には細かく刻んだ大葉が薬味として混ぜられ、味がくどくなりすぎない工夫も光る。
「これで税込み3278円は破格」と思い、店長に尋ねると「正直、原価割れしてるので注文が多いとキツい」と苦笑した。現状、1メートルの注文は月に1本ペースとあって、問題ないものの、注文が増えすぎたら価格を見直す可能性もあるという。
1メートルサイズのユッケ寿司誕生には、苦節もあった。都内の韓国料理店から着想を得て、18年9月に前身となる25センチの提供を始めたが、「注文が少なく頓挫。インパクトが弱かったと反省して、生まれたのが1メートルのロングユッケ寿司」と、同店を運営するGlobridge(グロブリッジ、東京・港)の倉田伊吹さんは話す。
SNS映えだけでなく、送別会のサプライズ料理として出されたケースもあった。20~40代の女性客7人ほどが集まった女子会で注文があったという。
かつてのユッケを知る身としては、ユッケ寿司の味は思い出の味と異なるが、ブームの予感はある。ロングヒットとなるだろうか。
(江口 剛)

最終更新:3/28(土) 19:15
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