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登山者が警戒すべき「二つ玉低気圧」のリスク 2009年4月の鳴沢岳遭難事故の教訓

3/28(土) 17:11配信

YAMAKEI ONLINE(ヤマケイオンライン)

冬の名残の北からの冷たい空気と、季節を春から夏に進めようとする南からの暖かい空気とが日本付近でぶつかり合う春は、「急速に発達する低気圧」――いわゆる「爆弾低気圧」が発生しやすい時期です。

その中でも日本海と南岸の低気圧が発達しながら日本付近を通過する「二つ玉低気圧」は、過去に何度も山岳遭難事故を引き起こしており、登山者にとって最も警戒すべき気象リスクの一つです。そこで、このコラム記事で数回にわたって二つ玉低気圧について解説していきたいと思います。

まず、今回はこの「二つ玉低気圧」による遭難事例として、2009年4月に発生し、3名が亡くなった北アルプス鳴沢岳遭難事故について取り上げて、その時の気象状況について解説いたします。

全員が低体温症により遭難死――、鳴沢岳遭難事故の概要

この鳴沢岳遭難事故とはどのようなものだったのでしょうか。2010年3月末に京都府立大学山岳会から発刊された「平成21年4月 北アルプス鳴沢岳遭難事故調査報告書」の内容が掲載された、同山岳会ホームページからから引用します。

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2009年4月26日、京都府立大学山岳部(以下府大山岳部)の三名のパーティーが北アルプス鳴沢岳で二つ玉低気圧による荒天のなか、全員が低体温症(疲労凍死)により遭難死するという事故が発生しました。リーダーのA氏(府大助教)は積雪期・無雪期を通してこの山域を熟知しており、二人の学生についても山岳部員として積雪期登山の経験もあり、事前に低気圧接近による悪天を予想していたにもかかわらず三名は鳴沢岳頂上への登行を続行し、風雪の鳴沢岳頂稜部でそれぞれが疲労凍死いたしました。
(以下、割愛)
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私はこの報告書を京都府立大学山岳会から購入して何度も読みました。厳冬期の黒部・丸山東壁にルート開拓で活躍したベテラン登山家と、まだこれからの将来がある学生2人が亡くなるという本当に痛ましい遭難事故だと思います。現在では京都府立大学山岳会ホームページで事故報告書が公開されていますので、興味のある方はご覧ください。2つ目の資料に事故の詳細が書かれています。

この事故報告書では、ベテラン登山家であるAさんのリーダーとしての資質を問題視していますが、確かにリーダーとしての判断を誤ったことは間違いないと思います。しかし、当時の気象状況を詳細に解析しますと、山越え気流の影響によって北アルプス付近の風が台風並みに強まっており、かなり特殊な気象状況であったことが分かってきました。

詳細については次回以降で解説しますが、気象遭難の中には山越え気流の影響による強風が寄与しているケースがあり、同じ2009年の7月16日に発生したトムラウシ遭難事故も山越え気流が影響している可能性があることを発見しました。気象遭難事故防止のために、どのような条件でこのような強風が発生するのかが私の最大の研究課題となっています。

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