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世界を駆け巡った謎の地震、トルコの“幻の地震“、フランスの奇妙な地震【地震のはなし】

3/28(土) 18:08配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

科学者をまどわせる地震のふしぎ、地中は地球最後のフロンティア

 直接見ることができない地球の内部は、深海同様、地球に残された最後のフロンティアだ。おかげで、地震についても解明されていない謎が多い。最近発生した不思議な地震のうち、とりわけ謎めいたものを紹介しよう。

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 2018年11月11日の9:30(世界時(UT))になる直前、謎の地震が地球を駆け巡った。

 地震が発生したのは、アフリカ大陸の東海岸とマダガスカルの北端とに挟まれる、仏領マヨット島の24キロメートルほど沖だった。地震の波はアフリカ諸国のみならず、1万8000キロメートル近くも離れたハワイにまで到達した。

 加えて、地震は20分以上続いた。それにもかかわらず、あまりに周期が長かったため、揺れを感じた人間は誰もいなかった。

 唯一異変に気づいたのは、米国地質調査所(USGS)のリアルタイム地震観測モニターを見ていたある人物だった。ハンドルネーム「@matarikipax」という地震マニアが、その奇妙なジグザグの波形の画像をツイッターにアップロードすると、世界中の研究者たちの間に原因を探ろうという別の波紋が広がり始める。

 隕石が衝突したのか? 海底火山の噴火なのか? 海の底から古代の怪物が現れたのか?

「明らかに、心配でもあり、かつ魅力的でもある出来事でした」と、調査チームの一員で、パリ地球物理研究所IPGPの海洋地震学者であるウェイン・クロフォード氏は言う。「それまで誰も見たことがないものでした」

 不思議な現象に科学者たちはしばらく困惑していたが、2019年になると、その原因が解明され始めた。マヨット島の東に約50キロ離れた海底で、火山が誕生したというのだ。水深3200メートルの海底に出現した火山の高さは800メートル近くあり、直径は広い所で4.8キロと計測された。これは観測史上最大級の海底火山活動だ。

 火山は明らかに新しいが、どの程度新しいかはわからなかった。2015年につくられた海底地形図にこの火山は存在しない。クロフォード氏によれば、2018年5月より前には、火山は存在していなかったと調査チームはみている。マヨット島が沈みつつ東に移動し始めた、2018年の夏にでき始めた可能性もあるという。

「確かな事実は、2015年には何もなくて、いまはある、ということです」とクロフォード氏。

 では、新しい火山活動は、奇妙な地震とどう結びつくのだろうか。

「それは100万ドル級の問題です」と、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの地震学者スティーブン・ヒックス氏は言う。

 2020年1月に学術誌「Nature Geoscience」に発表された論文によると、2018年11月に記録されたような周期の長い地震の波は、マヨット島の一連の出来事のなかでは唯一の事象ではなく、長く続く群発地震に伴って発生したものだという。おそらく、群発地震はマグマが地下を移動したせいで起こり、周期の長い地震波はマグマ溜りが崩壊したために発生した。だが、どのような状況が周期の長い地震波や群発地震を引き起こしているのか正確にはわかっていないし、水深3000メートルを超える海底で、火山の噴火が今も続いているかも定かではない。

「まだ多くの研究が必要です」。オーストラリア、アデレード大学の地質力学の専門家マーク・ティンゲイ氏は述べる。「しかし科学者たちにとっては、海底火山が誕生または復活するところを研究できるかもしれないチャンスです」

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