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24時間世界中の医師と繋がれる。医療格差問題に取り組む女性起業家

3/29(日) 12:30配信

Forbes JAPAN

規模は小さいけれども、世界を変える大きな可能性を秘めた企業を讃えるフォーブス ジャパンの「スモール・ジャイアンツ アワード」。

過去最大の規模で実施した第3回目となる今年は、グランプリを含めて19社が受賞企業となった。そのうちの1社が、関西大会でグランプリを受賞したハート・オーガナイゼーション(大阪市淀川区)だ。

同社が手がける「e-casebook」は、医師同士の症例相談プラットフォーム。現在、122カ国で1万1,000人を超える医師が登録している。このサービスが作られたきっかけは、東日本大震災の影響で売り上げが半減したことにあった。つらい時期をどう乗り切ったか、同社の成功は逆境に直面するすべての企業にとってビジネスのヒントとなるはずだ。

3月25日発売のフォーブス ジャパン2020年5月号に掲載するインタビューを、一部抜粋でお届けする。

「薬ではなく医療技術を広めるのを手伝って」

世界中の医師が、時間や距離の制約を超えて一体感を醸し出していた。

2019年末、末梢血管治療の研究会がインターネット上で開かれ、首都圏の病院での実技がライブ配信された。コメンテーターはベルギーや香港、台湾といった居住地にいながらネット経由で“登壇”。世界中で視聴していた参加者からも活発な発信が続き、最終的にコメントは500件ほどに。壇上での議論に終始しがちなこれまでの会場参加型研究会にはなかった、双方向の盛り上がりを見せたのだ。

グローバルな「学びの場」をローコストで実現したのが、医師向け症例検討プラットフォーム「e-casebook LIVE」だ。このサービスを19年春に開始したハート・オーガナイゼーション代表取締役の菅原俊子は、柔らかな話しぶりで「地方も都会も、先進国も発展途上国も、医療格差のない世界を目指しています」とさらりと言う。

菅原が同社を立ち上げたのは00年。外資系製薬企業で医薬品のプロモーションを担っていたが、知り合った医師から「薬ではなく医療技術を広めるのを手伝って」と請われたことがきっかけだ。

当時の医師にとって医療技術は、院内で上司らに教わるか、他の病院に依頼して手術室を見学させてもらうかのクローズドな実地学習が主流だった。それをもっとオープンにしたいという医師の志に打たれた菅原は、退職し、個人事業で学会や研究会の受託を始めた。

4年後に法人化するころ、知人が原因不明の体調不良を起こし、多くの医師に診てもらった末に「脳脊髄液減少症」と判明した。その経験も今につながっていると菅原は語る。

「高額な医薬品や医療機器なら企業がプロモーションをしますが、この病気の治療には特別な薬も機器も使わないため、かえって治療方法が広まらず、限られた医師の元に患者が殺到している状況でした。病院や国境を超えた医師同士のネットワークができれば、こうした問題も解決できるんじゃないか、と考えるようになりました」

東日本大震災で見つけた活路は「IT化」

経営は安定していたが、仕事量に比例して社員を増やさねばならないビジネスモデルに菅原は限界を感じ始める。09年、経営戦略を学ぼうと大学院へ進学。必修だった情報システムの授業で、関心のなかった分野に心揺さぶられたという。

「データマイニングなど時代がウェブ化に進んでいると痛感したんです。これはすごい、インターネットを活用して、もっと効率よく医師の技術や臨床上の経験を共有できるはず、と」

東日本大震災が発生した11年、学会や研究会は中止や延期となり、売り上げが半減。だがこの逆境こそ、菅原が「今のままではだめだ」とIT分野へとかじを切る原動力になった。

菅原にはかねて気になることがあった。病院での医師との打ち合わせの際、CD-ROMが配送されてくることがあったのだ。聞けば、別の病院の医師がCTやMRIなどで撮影した画像をCD-ROMに焼いて送ってきて、後日電話してくるのだという。

モニターを確認する医師と菅原俊子代表取締役

「要は、どう手術したらいいかという相談を外部の先生にしていたのです。ある調査では、9割以上の医師が自分の行う治療に不安を感じているといいます。医療は日々進化していて、毎年のように新しい術式やテクノロジーが生まれるので、医師は忙しいなかでも学び続けなければ対応できなくなる状況にあるのです」

そこで菅原は、医用画像をネット上で共有して話し合えるサービス「e-casebook」を14年にリリース。当初こそ「患者のデータをネット上にアップして問題ないのか」と二の足を踏む医師も少なくなかったが、2年後、日本心血管インターベンション治療学会が専門医を認定するための技能評価や遠隔研修に採用したことで一気に広まった。

一方で菅原は、リアルな場での学会や研究会の仕事も請け続けてはいたが、研究会での実技の様子をe-casebook登録者にライブ配信してみたところ、意外な展開があった。(続きはフォーブス ジャパン2020年5月号でお読みいただけます)

e-casebookの新たな展開とは──。そのほか、グランプリを受賞したフィルム型ソーラーの川口スチール工業(佐賀県鳥栖市)や「COEDO(コエド)ビール」の協同商事(埼玉県川越市)など、危機をバネに進化を遂げたスモール・ジャイアンツたちの逆転のストーリーを一挙公開。

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:3/29(日) 12:30
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